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#3653 決算分析 : MNインターファッション株式会社 第34期決算 当期純利益 3,920百万円

私たちが毎日身に着けている一着の服。その背景には、世界中の綿花畑や工場、デザイナー、そして物流網が複雑に絡み合う、壮大なグローバル・サプライチェーンが存在します。特に、トレンドの移り変わりが激しいファッション業界において、最適な素材を調達し、高品質な製品を、適切なタイミングと価格で市場に送り出すことは、企業の生命線を握る極めて高度な営みです。

この、複雑なファッションのサプライチェーンを、専門商社として、そして時にはブランドの企画開発パートナーとして、川上から川下まで一気通貫で支える「プロフェッショナル集団」がいます。今回は、日本の二大総合商社、三井物産と日鉄物産の繊維事業が統合して誕生した、ファッション業界の巨人「MNインターファッション株式会社」の決算を分析。売上高2,000億円、純資産500億円超という圧倒的なスケールを誇る企業のビジネスモデルと、その強さの秘密に迫ります。

MNインターファッション決算

【決算ハイライト(34期)】
資産合計: 110,553百万円 (約1,105.5億円)
負債合計: 58,650百万円 (約586.5億円)
純資産合計: 51,894百万円 (約518.9億円)
売上高: 200,172百万円 (約2,001.7億円)
当期純利益: 3,920百万円 (約39.2億円)

自己資本比率: 約46.9%

【ひとこと】
売上高2,000億円、純資産518億円という圧倒的な事業規模がまず目を引きます。自己資本比率も約46.9%と、巨大商社でありながら極めて健全な財務基盤を維持。39億円を超える当期純利益は、ファッション業界の厳しい環境下でも、確かな収益力を誇っていることの証左です。

【企業概要】
社名: MNインターファッション株式会社
株主: 三井物産グループ、日鉄物産グループ
事業内容: ファッション・繊維製品のOEM・ODM、機能テキスタイル・資材の企画・販売、ブランド事業、デジタル事業など

mn-interfashion.com


【事業構造の徹底解剖】
MNインターファッションは、その社名(MitsuiのM、Nippon Steel TradingのN)が示す通り、三井物産と日鉄物産という、日本を代表する総合商社の繊維部門が結集して誕生した、繊維・ファッション分野の専門商社です。その事業は、アパレルブランドや小売店といった顧客に対し、製品が店頭に並ぶまでの一切をサポートする「トータルソリューション」を提供しています。

✔事業の柱①:OEM・ODM事業 - ファッション業界の”黒子”
同社の中核を成すのが、顧客ブランドの製品を、企画提案から生産、納品まで一手に引き受けるOEM・ODM事業です。アパレルブランドは、製品のコンセプトを伝えるだけで、MNインターファッションが持つ世界中の素材ネットワークと、アジアを中心とした優良な縫製拠点を駆使し、最適な形で製品を創り上げてくれます。これにより、アパレルブランドは自社の強みである企画・マーケティングに専念でき、競争力を高めることができます。

✔事業の柱②:機能テキスタイル・ブランド事業 - 価値創造の”仕掛け人”
同社は、単なる生産代行に留まりません。国内外のネットワークを駆使し、スポーツ・アウトドアウェアに使われるような高機能な生地(テキスタイル)を開発・販売。また、海外有名ブランドのライセンス事業や、自社オリジナルブランドの展開も行い、自ら市場のトレンドを創り出す「ブランドビジネス」も手掛けています。

✔未来への投資:デジタル事業
アパレル業界の長年の課題であった、サンプル製作にかかるコストと時間、そして環境負荷。これに対し、同社は3D-CG技術を活用した「3Dサンプル」の作製を推進しています。生地やパターンをデジタル化し、コンピューター上で極めてリアルなサンプルを創り出すことで、開発スピードの向上とサステナブルなものづくりを実現しています。


【財務状況等から見る経営戦略】
自己資本比率46.9%という高い財務健全性は、この強力なビジネスモデルが安定した収益を生み出していることを示しています。

✔外部環境
ファッション業界は、消費者のライフスタイルの変化やトレンドの移り変わりが激しく、常に変化への対応が求められます。近年では、「アスレジャー」に代表される機能性衣料市場の拡大や、サステナビリティへの関心の高まりが、同社の「機能テキスタイル事業」や「デジタル事業」にとって大きな追い風となっています。一方で、ファストファッションの台頭による価格競争の激化や、世界的なサプライチェーンの混乱リスクは、常に経営上の脅威となります。

✔内部環境
最大の強みは、三井物産と日鉄物産から受け継いだグローバルな調達・生産ネットワークと、長年にわたる取引で築き上げた高い信用力です。これにより、世界中のあらゆる素材を調達し、最適な拠点で生産することが可能になります。また、OEM・ODM、機能素材、ブランドビジネスと、事業ポートフォリオ多角化されているため、特定分野の市況悪化に対するリスク分散も図られています。

✔安全性分析
財務の安全性は「非常に高い」と評価できます。総資産1,100億円を超える巨大企業でありながら、自己資本比率が46.9%と、健全性の目安である40%を大きく上回っています。これは、外部環境の変化に対する高い抵抗力を持っていることを意味します。単体の利益剰余金が100億円を超えていることからも、設立以来、安定して莫大な利益を蓄積してきたことがわかります。当期も連結で39億円という巨額の純利益を計上しており、収益力は極めて高いレベルにあります。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
三井物産・日鉄物産という二大総合商社のDNAを受け継ぐ、絶大な信用力とグローバルネットワーク
・企画、素材調達、生産、物流までを網羅する、ワンストップのトータルソリューション提供能力
自己資本比率46.9%を誇る、盤石の財務基盤と高い収益力
OEM/ODM、機能素材、ブランドと多角化された、安定的な事業ポートフォリオ

弱み (Weaknesses)
・BtoB事業が中心であるため、最終製品を販売する顧客(アパレルブランド)の業績に影響を受けやすい
・グローバルなサプライチェーンに依存するため、為替変動や地政学リスクの影響を受けやすい

機会 (Opportunities)
・機能性素材やアウトドア、スポーツウェア市場の継続的な成長
サステナビリティへの関心の高まりによる、3Dサンプルなどのデジタルソリューションや、環境配慮型素材への需要増加
・アジアを中心とした、海外ファッション市場の拡大

脅威 (Threats)
・世界的な景気後退による、ファッション・アパレル消費の冷え込み
ファストファッションの台頭などによる、グローバルな価格競争の激化
・人件費や原材料費の高騰、国際物流の混乱といった、サプライチェーン上のリスク


【今後の戦略として想像すること】
盤石な事業基盤と財務力を持つMNインターファッションは、今後、アパレル業界の変革をリードする存在へと、その役割を進化させていくことが期待されます。

✔短期的戦略
まずは、成長領域である「機能テキスタイル事業」をさらに強化していくでしょう。アウトドアやスポーツ分野だけでなく、ワークウェアや介護・医療分野など、新たな市場へ高機能素材を提案していくことが考えられます。また、「デジタル事業」で開発した3D-CG技術の活用を、より多くの取引先に広げることで、業界全体の生産性向上とサステナビリティに貢献し、顧客との関係を一層強固なものにしていくはずです。

✔中長期的戦略
中長期的には、単なるOEM/ODMパートナーから、ブランドの共創やインキュベーションを担う「ファッション・ビジネス・プラットフォーマー」への進化を目指す可能性があります。その潤沢な資金とグローバルネットワークを活かし、ポテンシャルのある国内外の新興ブランドへ出資・提携し、素材開発から生産、販売、海外展開までをトータルで支援する。そんな、ファッション業界の新たな生態系を創り出す存在になることも期待されます。


【まとめ】
MNインターファッション株式会社は、単なる繊維商社ではありません。それは、三井物産と日鉄物産という二つの巨人の力を結集し、グローバルなサプライチェーンを自在に操る、ファッション業界の”総合商社”です。その決算書は、売上高2,000億円、自己資本比率46.9%という、圧倒的なスケールと安定性を証明していました。

変化の激しいファッション業界において、同社は、OEM/ODMという堅実な基盤の上に、機能素材やデジタル技術といった未来への種を蒔き続けています。私たちの生活を彩る一着の服の裏側で、世界の繊維・ファッション産業を動かすこの巨大な”黒子”の、今後の活躍から目が離せません。


【企業情報】
企業名: MNインターファッション株式会社
所在地: 東京都港区元赤坂一丁目2番7号 赤坂Kタワー
代表者: 代表取締役社長 吉本 一心
事業内容: ファッション衣料、機能性素材、ホームファッションなどの企画、製造、販売(OEM/ODM)。ライセンス・インポートブランドの運営。3D-CG技術を活用したデジタルソリューションの提供など。三井物産グループと日鉄物産グループの繊維事業を統合して設立。

mn-interfashion.com

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