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#4127 決算分析 : タマリビング株式会社 第56期決算 当期純利益 238百万円

夢のマイホームを手に入れた時、建物が完成しても、そこはまだ「家」という箱に過ぎません。カーテン、照明、エアコン、そして暮らしを彩る家具。これらが揃って初めて、暖かい「住まい」となります。しかし、数多ある選択肢の中から、理想のインテリアを一つひとつ選び、手配するのは大変な労力です。もし、その全てを専門家がワンストップで提案し、入居と同時に完璧な空間を創り上げてくれるとしたら。

今回は、大手ハウスメーカー「タマホーム」の顧客を中心に、新築住宅のインテリアをトータルでコーディネートする「タマリビング株式会社」の決算を分析します。タマホームグループの”暮らし”領域を担う同社の、極めて効率的なビジネスモデルと、その結果として築き上げられた鉄壁の財務基盤に迫ります。

タマリビング決算

【決算ハイライト(第56期)】
資産合計: 3,523百万円 (約35.2億円)
負債合計: 1,174百万円 (約11.7億円)
純資産合計: 2,349百万円 (約23.5億円)

当期純利益: 238百万円 (約2.4億円)

自己資本比率: 約66.7%
利益剰余金: 2,335百万円 (約23.4億円)

【ひとこと】
まず驚くべきは、自己資本比率が約66.7%という、極めて高い財務健全性です。実質的に無借金経営に近い、鉄壁の財務基盤を誇ります。売上高68億円に対して、当期純利益2.4億円という高い収益性も実現しており、そのビジネスモデルがいかに効率的で優れているかを物語っています。

【企業概要】
社名: タマリビング株式会社
設立: 1969年4月22日
株主: タマホームグループ
事業内容: タマホーム顧客向けのインテリアオプション販売・コーディネート事業を主軸に、家具・インテリア商品の企画・卸・販売を手掛ける。

www.tamahome-living.jp


【事業構造の徹底解剖】
タマリビングの事業は、新築住宅の価値を最大化する、ユニークで強力なビジネスモデルで構成されています。

✔インテリアオプション販売事業
同社の事業の根幹をなす、まさに”キラーコンテンツ”です。顧客がタマホームで住宅の契約を結ぶと、同社の専門インテリアアドバイザーが紹介され、新しい家を「住まい」にするためのあらゆる商材を提案します。
カーテンや照明、エアコンといった必需品から、フロアコーティング、TVアンテナ、家具に至るまで、新生活に必要なものをワンストップで提供。顧客にとっては、複数の専門店を巡る手間が省け、住宅ローンに組み込むことも検討できるなど、利便性が非常に高いサービスです。同社にとっては、住宅購入という最も購買意欲が高いタイミングで、確度の高い顧客にアプローチできる、極めて効率的な販売チャネルとなっています。

✔家具の企画&卸販売事業
タマホームとの連携で培ったノウハウと規模を活かし、自社で企画した家具などを、他の販路へも展開しています。ホームセンター大手のナフコや、楽天AmazonといったECプラットフォームでも商品を販売。これにより、タマホームの新築着工数という単一の指標に依存しない、多角的な収益構造を構築し、経営の安定性を高めています。

✔モデルハウスコーディネート事業
タマホームのモデルハウスのインテリアコーディネートも手掛けています。これは、タマホームの住宅の魅力を高める上で重要な役割を果たすと同時に、同社にとっては自社が取り扱うインテリア商材の魅力を伝える、最高の「生きたショールーム」として機能しています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
同社の事業は、主軸であるタマホームの業績、ひいては国内の新築住宅市場の動向に大きく影響を受けます。金利の動向や住宅ローン減税などの政策、ウッドショックのような資材価格の変動などが、間接的に同社の事業環境を左右します。一方で、インテリアや家具の市場は、ニトリIKEAといった大手専門店のほか、無数のECサイトがひしめく競争の激しい市場です。

✔内部環境
同社のビジネスモデルの最大の強みは、タマホームという強力な送客エンジンを持つ「キャプティブ(専属的)」な関係性にあります。一般的な家具・インテリア店が多額の広告宣伝費をかけて集客するのに対し、同社は最小限のコストで、購買意欲が最高潮に達している見込み客と商談することが可能です。この圧倒的な効率性が、高い収益性の源泉となっています。

✔安全性分析
自己資本比率が約66.7%という数値は、企業の財務安全性を語る上で、これ以上ないほどの強みです。総資産約35億円のうち、負債は約12億円に過ぎず、事業活動の3分の2を返済不要の自己資本で賄っています。これは、景気の変動に対する極めて高い抵抗力を持っていることを示します。
短期的な支払い能力を示す流動比率流動資産÷流動負債)も約2.9倍(3,356百万円 ÷ 1,174百万円)と非常に高く、資金繰りにも全く不安はありません。そして何よりも、資本金1,500万円に対し、その150倍以上にもなる約23.4億円の利益剰余金が蓄積されている事実は、同社が長年にわたり、いかに高い利益を上げ、それを堅実に内部に留保してきたかを物語っています。まさに優良企業の鑑とも言える財務内容です。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・タマホームとの強力な連携による、安定的かつ効率的な顧客獲得チャネル
自己資本比率66.7%を誇る、鉄壁とも言える財務基盤
・インテリアをワンストップで提供することによる、高い顧客利便性
・卸売やECなど、タマホーム以外にも販路を持つ多角的な事業構造

弱み (Weaknesses)
・事業の根幹がタマホームの新築住宅販売数に大きく依存している点
・タマホームのブランドイメージや価格帯と、提供するインテリアがある程度連動する制約

機会 (Opportunities)
・インテリアコーディネートのノウハウを活かした、リフォーム市場への本格進出
・EC事業のさらなる拡大と、プライベートブランド(PB)商品の強化
・タマホーム以外のハウスメーカー工務店との、新たな提携の可能性

脅威 (Threats)
・国内の新築住宅着工数の長期的な減少トレンド
ニトリIKEA、オンライン専業ブランドなど、インテリア業界の競争激化
・消費者の節約志向の高まりによる、インテリアオプションへの支出減少


【今後の戦略として想像すること】
この盤石な事業・財務基盤を持つタマリビングの今後の戦略は、既存事業の深化と、新たな市場への挑戦が考えられます。

✔短期的戦略
引き続き、タマホームの顧客に対する提案力を強化し、一人当たりの単価(クロスセル率)を高めていくことが基本戦略となります。タマホームの新築住宅のコンセプトに合わせた、オリジナルの家具やインテリア商品を開発・提案することで、顧客満足度と収益性の両方を高めていくでしょう。また、好調な卸・EC事業をさらに伸ばしていくことも重要です。

✔中長期的戦略
その圧倒的な財務力を活かし、「タマホームのインテリア部門」という枠を超えた事業展開が期待されます。例えば、これまでに蓄積した膨大なコーディネート実績と顧客データを活用し、リフォーム市場へ本格的に参入することです。あるいは、M&Aを通じて、独自の強みを持つ家具ブランドやインテリア雑貨ブランドを傘下に収め、メーカーとしての機能を強化していく可能性も秘めています。


【まとめ】
タマリビング株式会社は、ハウスメーカーとの強力な連携という、極めてユニークで強固なビジネスモデルを確立した優良企業です。新築住宅の購入という、顧客の「夢」が膨らむ最高のタイミングで、その夢を形にするインテリアを提案する。この理想的な事業サイクルが、66.7%という驚異的な自己資本比率と、高い収益性となって結実しています。

もとは北九州の一家具卸問屋であった同社が、タマホームとの出会いを機に、全国規模のインテリアソリューション企業へと飛躍を遂げた物語は、まさにアライアンス戦略の成功事例と言えるでしょう。これからも、「ハッピーライフ」のサポーターとして、多くの家族の暮らしを豊かに彩っていくことが期待されます。


【企業情報】
企業名: タマリビング株式会社
所在地: 東京都港区三田3丁目3-8 TAMA WOODY GATE MITA 3階
代表者: 杉本 真人
設立: 1969年4月22日
資本金: 1,500万円
事業内容: 家具・インテリア商品・資材などの企画・卸・販売。大手ハウスメーカー「タマホーム株式会社」の顧客向けに、インテリアオプションの提案・販売・施工をワンストップで提供する事業を主軸とする。
株主: タマホームグループ

www.tamahome-living.jp

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