決算公告データ倉庫

決算公告を自分用に収集・コメントし保管する倉庫。あくまで自分用であり、引用する決算公告を除き内容の正確性/真実性を保証できない点はご容赦ください。

#4169 決算分析 : 一般財団法人都築国際育英財団 第25期決算 正味財産19億円

国際社会の発展と平和に不可欠な、国境を越えた人材の交流。その未来を担う若者たちを、経済的な側面から支援することは、社会全体にとって極めて価値のある投資です。日本と世界各国の学生に、学びの機会を提供し続けるためには、その活動を支える、揺るぎない財政基盤が求められます。

今回は、1999年の設立以来、四半世紀にわたって国内外の学生への奨学金給付事業を行ってきた「一般財団法人都築国際育英財団」の決算を分析します。営利を目的としない「財団法人」は、どのような財務状況にあるのか。その社会貢献活動を、未来永劫続けるための、驚くほど堅実な経営の実態に迫ります。

一般財団法人都築国際育英財団決算

【決算ハイライト(第25期)】
資産合計: 1,938百万円 (約19.4億円)
負債合計: 0百万円
正味財産合計: 1,938百万円 (約19.4億円)

正味財産比率: 100%

【ひとこと】
まず驚愕すべきは、負債がゼロ、すなわち「完全無借金経営」である点です。約19.4億円に上る資産のすべてが、返済不要の自己資本(正味財産)で構成されており、これ以上ないほど安定した、鉄壁の財務基盤を誇ります。これは、財団の崇高な理念を、永続的に実現していくための、揺るぎない基盤と言えるでしょう。

【財団概要】
社名: 一般財団法人都築国際育英財団
設立: 1999年8月
事業内容: 日本人学生および外国人留学生に対する奨学金の給付を中心とした、国際育英事業

www.tsuzuki.or.jp


【事業内容の徹底解剖】
一般財団法人都築国際育英財団の事業は、「社会に有為な人材を育成し、国際社会の発展に寄与する」という設立目的に集約されています。その中核をなすのが、多様な奨学金給付事業です。

奨学金給付事業
同財団の活動の根幹です。経済的な理由で修学が困難な、優秀な学生を支援しています。その対象は非常に幅広く、国際交流の促進という理念が明確に反映されています。
・在日外国人留学生向け奨学金: 主に関東地区の大学に在籍する私費留学生を対象としています。
・日本人海外留学生向け奨学金: 海外の大学へ留学する日本人学生を支援します。
・国内学生向け奨学金: 日本国内の学校に在籍する学生も対象としています。
特筆すべきは、東京大学の学生を対象とした指定校推薦枠や、スポーツ奨学生、さらには避難民学生を対象とした奨学金制度も設けている点です。社会の多様なニーズに、きめ細かく応えようとする姿勢が伺えます。

✔奨学生との交流事業
単に金銭的な支援を行うだけでなく、奨学生同士や財団関係者との交流会を定期的に開催しています。これにより、国籍や専門分野を超えた人的ネットワークの構築を促し、奨学生の人間的な成長もサポートしています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
グローバル化が進む現代において、国際的な視野を持つ人材の育成は、日本全体の国家的課題です。また、経済的な格差が教育の機会均等を脅かす中で、同財団のような給付型奨学金の役割は、ますます重要になっています。

✔内部環境(財団の運営モデル)
財団法人の運営は、株式会社の利益追求とは目的が異なります。その活動資金は、設立者からの寄付などによって形成された「基本財産」を、株式や不動産などで安全に運用し、そこから得られる運用益(配当金や賃料収入など)によって賄われます。
同財団の貸借対照表を見ると、総資産約19.4億円のうち、約17.1億円が「固定資産」となっています。これは、奨学金事業を永続的に行うための原資となる、基本財産の運用資産(有価証券や不動産など)であると推測されます。この巨大な元本を維持・運用し、その果実をもって社会貢献活動を行うのが、財団のビジネスモデルです。

✔安全性分析
今回の決算における最大のポイントは、「負債ゼロ」、すなわち正味財産比率が100%であるという点です。これは、財団の全資産が、返済義務のない自己資金で賄われていることを意味し、財務的なリスクは皆無に等しいと言えます。
正味財産の内訳を見ると、「指定正味財産」(約4.0億円)と「一般正味財産」(約15.4億円)に分かれています。「指定正味財産」とは、寄付者などから「特定の目的(例:〇〇大学の学生支援のため)」に使途が指定された資金であり、「一般正味財産」は、より柔軟に財団の目的に沿って使用できる資金です。この約19.4億円という潤沢な正味財産がある限り、同財団は外部の経済状況に左右されることなく、その崇高な理念に基づいた活動を、長期にわたって安定的に継続していくことが可能です。


SWOT分析で見る事業環境】
※非営利組織のため、視点を調整して分析します。

強み (Strengths)
・負債ゼロ、正味財産約19.4億円という、圧倒的に強固で安定した財務基盤
・25年以上にわたる奨学金事業の実績と、それによって築かれた社会的な信頼
・国内外の多様な学生を対象とする、幅広い奨学金プログラム

弱み (Weaknesses)
・事業の規模が、基本財産の運用益に依存するため、急激な拡大は難しい
・財団の活動や成果に関する、社会への情報発信が限定的

機会 (Opportunities)
・企業のESG経営や個人の社会貢献意識の高まりによる、新たな寄付獲得の可能性
・オンライン交流会などを活用した、グローバルな奨学生ネットワークの構築
・社会情勢の変化(紛争、災害など)に応じた、新たな緊急支援奨学金の設立

脅威 (Threats)
・金融市場の長期的な低迷による、基本財産の運用益の減少
奨学金事業を行う、他の財団や団体との、優秀な学生の獲得における競合


【今後の戦略として想像すること】
営利を目的としない財団法人にとっての戦略とは、「事業規模の拡大」よりも「社会的インパクトの最大化」を意味します。

✔短期的戦略
引き続き、厳正かつ公正な選考プロセスを通じて、真に支援を必要とする優秀な学生に奨学金を届けていくことが、変わらぬ使命となります。また、奨学生同士の交流を促すイベントを継続し、財団が育んだ人材のネットワークをより強固なものにしていくでしょう。

✔中長期的戦略
約19.4億円という巨大な基本財産を、社会情勢の変化に対応しながら、いかに安全かつ効率的に運用し、安定した運用益を確保し続けるか。それが、財団の永続性を左右する最も重要なテーマとなります。また、活動の成果を社会に広く発信することで、財団の理念に共感する新たな寄付者を募り、基本財産そのものをさらに大きくしていくことで、支援できる学生の数を増やしていくことが、長期的な目標となるでしょう。


【まとめ】
一般財団法人都築国際育英財団は、利益を追い求める代わりに、未来への「人」への投資を続ける、崇高な理念を持つ組織です。その活動は、国境を越えて学ぶ意欲に燃える、多くの若者の夢を支えています。

負債ゼロ、19億円を超える正味財産。その決算書は、株主への配当のためではなく、未来のリーダーを育むという、社会貢献活動を永続させるために築き上げられた、揺るぎない”善意の城壁”です。都築国際育英財団は、これからもその盤石な経営基盤の上で、静かに、しかし力強く、国際社会の未来を照らす人材を育み続けていくことでしょう。


【財団情報】
企業名: 一般財団法人都築国際育英財団
所在地: 東京都渋谷区桜丘町24-5
代表者: 都築 明寿香
設立: 1999年8月
事業内容: 社会に有為な人材の育成、国際交流の促進を目的とした、奨学金給付事業。在日外国人留学生、海外へ留学する日本人学生、国内の日本人学生などを対象に、幅広い奨学金プログラムを提供する。

www.tsuzuki.or.jp

©Copyright 2018- Kyosei Kiban Inc. All rights reserved.