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#4098 決算分析 : 大和エンジニアリング株式会社 第35期決算 当期純利益 239百万円

食品、飲料、日用品、医薬品など、あらゆる製品が工場から出荷される前に行われる「箱詰め」作業。単純なようでいて、実は工場の生産ライン全体の効率を左右する極めて重要な工程です。特に人手不足が深刻化する現代において、この最終工程の自動化は多くの企業にとって喫緊の課題となっています。

今回は、その自動包装機械、とりわけ段ボールの「組み立て(製函)」「箱詰め(ケーシング)」「封かん(封函)」を行う機械の分野で、全国に名を馳せる高い技術力を誇る愛媛県の優良企業、「大和エンジニアリング株式会社」の決算を分析します。時代の追い風を受ける同社の強みと、驚異的とも言える財務健全性の秘密に迫ります。

大和エンジニアリング決算

【決算ハイライト(第35期)】
資産合計: 3,473百万円 (約34.7億円)
負債合計: 1,006百万円 (約10.1億円)
純資産合計: 2,467百万円 (約24.7億円)

当期純利益: 239百万円 (約2.4億円)

自己資本比率: 約71.0%
利益剰余金: 2,437百万円 (約24.4億円)

【ひとこと】
自己資本比率が約71.0%と極めて高く、財務基盤は盤石そのものです。資本金3,000万円に対し、利益剰余金が24億円超という驚異的な積み上がりは、創業以来の高収益経営の賜物と言えるでしょう。当期純利益も2.4億円と絶好調であり、工場の自動化・省人化という時代の要請に完璧に応える優良メーカーの姿が鮮明に浮かび上がります。

【企業概要】
社名: 大和エンジニアリング株式会社
設立: 1990年12月12日
事業内容: 各種自動包装機械(製函機、封函機、ケーサー等)の製造・製作、産業用ロボットを利用したシステムインテグレーション

www.daiwa-eng.com


【事業構造の徹底解剖】
大和エンジニアリング株式会社の事業は、あらゆる工場の生産ラインにおける「梱包・箱詰め工程」の自動化・省力化を実現する、高度な技術ソリューションの提供にあります。

✔自動包装機械の開発・製造
同社の事業の核であり、技術力の源泉です。主な製品は、平たい段ボールシートを高速で箱の形に組み立てる「製函機(ケースフォーマー)」、製品が詰められた段ボールの天面や底面をテープや接着剤で閉じる「封函機(ケースシーラー)」、そして製品を段ボール箱に自動で詰める「ケーサー」の三本柱です。顧客の製品の種類、形状、生産スピードに合わせて、最適な機械をオーダーメイドで設計・製造する能力が強みです。

✔業界をリードする高い技術開発力
同社は単なる機械メーカーではありません。主力製品である製函機「リトルフォーマー」はシリーズ累計1,000台を超えるヒット商品となり、さらに世界最高速クラス(毎分60ケース)の超高速製函機を開発するなど、常に業界の技術革新をリードしてきました。ウェブサイトには多数の特許取得歴が掲載されており、その独自技術へのこだわりと開発にかける情熱がうかがえます。

✔ロボットシステムインテグレーション事業
近年、同社が特に力を入れているのが、産業用ロボットを自社の包装機械と組み合わせ、より複雑で柔軟な自動化ラインを構築する「ロボットSIer(システムインテグレータ)」としての事業です。これにより、単に機械を販売するだけでなく、顧客の工場全体の生産性向上にトータルで貢献できるソリューションプロバイダーへと進化しています。


【財務状況等から見る経営戦略】
圧倒的な財務健全性の背景にある、同社の経営戦略を分析します。

✔外部環境
少子高齢化に伴う労働力人口の減少は、日本の製造業や物流業にとって避けては通れない最大の課題です。特に「物流の2024年問題」以降、これまで人手に頼ってきた作業の自動化・省人化への投資意欲は、かつてないほど高まっています。これは、まさに同社の事業領域にとって強力な追い風となっています。EC市場の拡大による物流センターでの梱包作業の自動化需要も、同社の成長を後押ししています。

✔内部環境
同社のルーツが包装機械の「設計会社」であることから、創業以来、技術開発を最優先する企業文化が根付いていると考えられます。他社には真似のできない高い技術力が、価格競争に陥らない高付加価値な製品を生み出し、それが高い利益率となって財務基盤を強化する。そして、強化された盤石な財務基盤が、さらなる次世代技術への研究開発投資を可能にする。この理想的な「技術と財務の好循環」が、同社の持続的成長の原動力となっています。

✔安全性分析
自己資本比率71.0%という数値は、実質的な無借金経営に近い状態を示しており、財務リスクは極めて低いと言えます。24億円を超える巨額の利益剰余金は、大規模な研究開発や工場の設備投資、さらには将来的なM&Aなども自己資金で十分に賄えるほどの、圧倒的な経営体力を物語っています。この揺るぎない財務的安定性が、顧客が安心して高価な設備投資のパートナーとして同社を選定する際の、大きな信頼にも繋がっていることでしょう。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・「製函・封函・ケーシング」という包装ラインのコア技術と、それを裏付ける多数の特許
・世界最高速クラスの製函機を開発するなど、業界をリードする高い技術開発力
・ロボットSIerとしての能力を併せ持ち、高度な自動化ソリューションをワンストップで提供できる
自己資本比率71.0%という、極めて強固で安定した財務基盤
・高い収益性と、24億円を超える潤沢な利益剰余金

弱み (Weaknesses)
・特定の機械分野に特化しているため、技術革新の波に乗り遅れた場合のリスク
・高度な技術を持つ設計・製造エンジニアの育成と確保が常に経営の重要課題となる

機会 (Opportunities)
・人手不足の深刻化(特に物流の2024年問題以降)を背景とした、工場の自動化・省人化ニーズの爆発的な増加
・EC市場の拡大に伴う、物流センターでの多品種・小ロットに対応した梱包作業の自動化需要
・AIや高度な画像認識技術とロボットを組み合わせた、より知能的な自動化システムの開発機会

脅威 (Threats)
・国内外の競合メーカーとの熾烈な技術開発競争および価格競争
・顧客企業の設備投資意欲が、マクロ経済の動向に大きく左右される
半導体不足などに起因する、制御部品の供給不安定化や原材料価格の高騰


【今後の戦略として想像すること】
この盤石な経営基盤の上で、同社が描くであろう今後の戦略を考察します。

✔短期的戦略
旺盛な自動化需要に迅速に応えるため、生産能力の増強やリードタイムの短縮が重要なテーマとなるでしょう。特に、引き合いの強いロボットシステムインテグレーション事業において、提案から設計、導入、アフターサポートまでの一連のプロセスを強化し、より多くの企業の課題解決に貢献していくと考えられます。

✔中長期的戦略
AIや高度な画像認識技術を自社の包装機械やロボットシステムに本格的に組み込み、これまで自動化が困難とされてきた、不定形な商品のピッキングや、多種多様なサイズの段ボールへの対応が可能な、より知能化した「スマートファクトリー」ソリューションを開発していくことが期待されます。また、その高い技術力を武器に、国内だけでなく、労働力不足が課題となりつつあるアジア諸国をはじめとした海外市場への展開も本格化させていく可能性があります。


【まとめ】
大和エンジニアリング株式会社は、愛媛県に拠点を置きながら、日本の製造業・物流業が直面する「人手不足」という大きな社会課題を、卓越した技術力で解決する、まさに時代の要請に応える企業です。設計会社をルーツとする技術開発力を源泉として高収益を上げ、それを潤沢な内部留保として蓄積し、盤石な財務基盤を築き、さらに未来の技術へ再投資するという、製造業の理想的な成長サイクルを実践しています。

自動化・省人化の流れが今後ますます加速する中で、同社の社会的役割はさらに重要性を増していくことは間違いありません。地方から世界に通用する技術を発信し続ける、日本の「ものづくり」の誇りとも言える企業です。


【企業情報】
企業名: 大和エンジニアリング株式会社
所在地: 愛媛県伊予郡松前町北川原2034番地
代表者: 代表取締役社長 中矢 真吾
設立: 1990年12月12日
資本金: 3,000万円
事業内容: 各種自動包装機械(段ボール製函機、封函機、ケーサー等)の製造・製作、産業用ロボットを利用したシステムインテグレーション

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