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#4054 決算分析 : 株式会社小柳建設工業 第45期決算 当期純利益 18百万円

私たちが毎日を過ごす大切な「家」。その安全で快適な暮らしは、目には見えない地面の下の「基礎」に支えられ、日々の暮らしを彩る「空間」によって形作られています。特に、厳しい自然環境と共存する北海道・札幌において、確かな技術力と地域への深い理解を持つ建設会社の存在は、住民にとって心強いパートナーと言えるでしょう。40年以上にわたり、一つの地域に根ざし、顧客の夢を形にしてきた企業は、どのような経営を行っているのでしょうか。

今回は、札幌市を拠点とする地域密着型の建設会社、株式会社小柳建設工業の決算を読み解きます。「心安らぐ暮らし」づくりを追求する同社の、堅実な財務内容と、人を育てる経営哲学に迫ります。

小柳建設工業決算

【決算ハイライト(45期)】
資産合計: 301百万円 (約3.0億円)
負債合計: 173百万円 (約1.7億円)
純資産合計: 128百万円 (約1.3億円)

当期純利益: 18百万円 (約0.2億円)

自己資本比率: 約42.6%
利益剰余金: 78百万円 (約0.8億円)

【ひとこと】
自己資本比率が約42.6%と、建設業として健全な財務基盤を維持しています。資本金5,000万円に対して、利益剰余金も7,800万円と着実に利益を積み上げてきたことがうかがえます。40年以上にわたる地域に根ざした堅実な経営が、安定した財務内容に表れています。

【企業概要】
社名: 株式会社小柳建設工業
設立: 1980年
事業内容: 北海道札幌市を拠点とする地域密着型の建設会社。住宅の土台となる「住宅基礎工事」や土木工事を基盤としながら、個人住宅や店舗の新築・リフォームまで、40年以上にわたり「心安らぐ暮らし」の創造を手掛ける。

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【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、社訓に掲げる「和・努力・感謝」の精神のもと、札幌という地域に深く根ざし、人々の暮らしの「土台」と「空間」を創り上げる「地域密着型・総合建設事業」に集約されます。

✔基礎・土木事業
同社の事業の根幹を成す領域です。全ての建物の安全性を左右する最も重要な部分である「住宅基礎工事」や、それに伴う土木工事を主力としています。ウェブサイトの求人情報からも、重機オペレーターが事業の中心的な役割を担っていることがうかがえ、バックホーやダンプを駆使して、安全で強固な住まいの土台を築き上げる、まさに縁の下の力持ちと言える事業です。

✔建築・リフォーム事業
基礎工事で培った高い技術力と、地域社会で長年かけて築き上げた信頼を基盤に、個人住宅や店舗の新築・リフォームも幅広く手掛けています。「心安らぐ暮らし」をテーマに、デザイン性・機能性にこだわった創造的な提案を得意としており、ウェブサイトに掲載されている施工事例からは、顧客一人ひとりの夢やこだわりに寄り添い、丁寧に形にしていく仕事ぶりが伝わってきます。

✔人材育成への強い意志
同社の持続的な成長を支える重要な要素が、人材育成への注力です。建設業界全体が深刻な人手不足に悩む中、同社は求人情報で「未経験でも普通免許があれば『見習い採用』で月給28万円以上」と明記し、門戸を広く開いています。資格取得支援制度も完備しており、これは、自社で責任を持って職人を育て上げ、技術と精神を次世代に継承していこうという、強い意志の表れと言えるでしょう。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
札幌市およびその近郊は、北海道内での人口集中や再開発プロジェクトにより、住宅建設の需要が比較的堅調に推移しています。しかし、建設業界全体としては、木材や鋼材といった資材価格の高騰や、職人の高齢化・人手不足といった深刻な課題に直面しています。このような厳しい環境下で、いかにして技術力のある人材を確保・育成し、適正な利益を確保していくかが、経営の最重要課題となっています。

✔内部環境
40年以上にわたる地域での実績と、そこから生まれる「信頼」が、同社の最大の経営資源です。大規模な広告宣伝に頼るのではなく、過去の顧客からの紹介や、地域のネットワークを通じた口コミが、安定した受注活動の基盤となっていると推測されます。当期1,800万円の純利益は、厳しいコスト環境の中にあっても、質の高い仕事で顧客の信頼に応え、着実に収益を上げている証左です。また、未経験者から職人を育てるという人材戦略は、短期的には教育コストがかかりますが、長期的には技術力の維持と安定した施工体制の構築に繋がり、企業の根幹を強くする不可欠な投資と言えます。

✔安全性分析
自己資本比率約42.6%は、建設業として健全で安定した水準です。外部からの借入に過度に依存することなく、自己資本をベースにした安定経営を行っていることがうかがえます。短期的な支払い能力を示す流動比率も約174%と高く、資金繰りにも十分な余裕があります。資本金5,000万円に対し、利益剰余金が7,800万円と着実に積み上がっていることからも、創業以来、浮き沈みの激しい建設業界で、堅実な黒字経営を続けてきた歴史が見て取れます。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・1980年の創業以来、40年以上にわたって札幌で培ってきた豊富な実績と地域からの高い信頼性
・健全な自己資本比率と着実に積み上げた利益剰余金が示す、安定した財務基盤
・住宅の土台となる基礎工事から、デザイン性の高いリフォーム・新築までを一貫して手掛けられる技術力
・未経験者から職人を育てるという、自社での人材育成体制と未来への投資姿勢

弱み (Weaknesses)
・事業エリアが札幌市およびその近郊に限定されており、地域経済の動向に業績がダイレクトに影響されやすい
・企業の知名度が地域内に限定されており、広域での大規模な受注獲得には課題がある
・会社の規模が限られるため、大型の公共事業や建設プロジェクトへの参入は難しい

機会 (Opportunities)
・札幌市への継続的な人口流入を背景とした、住宅建設およびリフォーム需要の底堅さ
・既存住宅ストック(中古住宅)の増加に伴う、リノベーションや断熱改修といった高付加価値リフォーム市場の拡大
・建設業界のDX化(ドローンによる測量、施工管理アプリの導入など)による、生産性向上の可能性

脅威 (Threats)
・建設業界全体における、職人や現場管理者の人材不足の深刻化と、それに伴う労務費のさらなる高騰
・ウッドショックに代表される、建築資材価格の継続的な上昇と不安定な供給状況
・全国展開する大手ハウスメーカーや、低価格を武器にするリフォーム専門会社との競争激化
・景気後退による、個人の住宅新築・リフォームといった高額消費に対する意欲の減退


【今後の戦略として想像すること】
堅実な経営基盤を活かし、自社の強みをさらに磨き上げていく戦略が予想されます。

✔短期的戦略
引き続き、既存事業の足元を固めることに注力するでしょう。特に、同社の根幹である住宅基礎工事の分野で、丁寧で確実な仕事ぶりをアピールし、地域のハウスメーカー工務店からの安定的な受注を確保します。リフォーム事業では、ウェブサイトやSNSなどを活用してデザイン性の高い施工事例を積極的に発信し、同社の提案力を広く訴求することで、個人顧客からの直接の問い合わせを増やしていくと考えられます。

✔中長期的戦略
「人への投資」を継続し、企業の持続的な成長基盤を強固なものにしていくでしょう。「小柳建設工業で働けば、未経験からでも一人前の職人になれる」という評判を地域で確立することが、深刻化する人手不足時代における最大の競争優位性となります。また、40年以上の歴史で培った技術と信頼を活かし、より高付加価値な領域へ挑戦することも考えられます。例えば、北海道の気候風土に適した高気密・高断熱住宅の新築や、古民家再生といった専門性の高いリノベーション事業などが挙げられます。


【まとめ】
株式会社小柳建設工業は、単に建物を建てる建設会社ではありません。それは、札幌という地域に深く根ざし、社訓である「和・努力・感謝」を胸に、人々の「心安らぐ暮らし」の土台と空間を40年以上にわたって創り続けてきた「暮らしづくりのプロフェッショナル集団」です。決算書が示す健全な財務内容は、その誠実な仕事ぶりの積み重ねに他なりません。建設業界が大きな変革期にある中で、同社は目先の利益だけでなく、次代を担う「人」を育てることに力を注いでいます。これからも、地域に密着した姿勢を貫き、確かな技術を継承していくことで、次の50年、100年へと歴史を刻んでいくことが期待されます。


【企業情報】
企業名: 株式会社 小柳建設工業
所在地: 札幌市東区伏古12条2丁目2番8号
代表者: 代表取締役 渡部 裕文
設立: 1980年4月1日
資本金: 50,000千円
事業内容: 土木建築業、土木工事業建築工事業、大工工事業、とび・土木工事業、電気通信工事業、舗装工事業

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