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#3907 決算分析 : カメイ・プロアクト株式会社 第44期決算 当期純利益 ▲25百万円

時代を超えて愛されるフランスのスニーカー「PATRICK」。その洗練されたデザインと履き心地に魅了されている方も多いでしょう。このブランドを日本で育て、多くのファンに届けているのが、カメイ・プロアクト株式会社です。しかし、彼らの顔はそれだけではありません。ゴルフ好きなら誰もが知る有名ブランドのキャディバッグが、実は同社の自社工場で作られているOEM製品であることは、あまり知られていません。

今回は、人気ブランドの輸入販売と、メーカーとしてのOEM生産という二つの顔を持つユニークな専門商社、カメイ・プロアクトの決算を読み解きます。その驚異的な財務基盤と、今期の決算が示す事業戦略に迫ります。

カメイ・プロアクト決算

【決算ハイライト(44期)】
資産合計: 2,175百万円 (約21.8億円)
負債合計: 346百万円 (約3.5億円)
純資産合計: 1,827百万円 (約18.3億円)
当期純損失: 25百万円 (約0.2億円)
自己資本比率: 約84.0%
利益剰余金: 1,737百万円 (約17.4億円)

【ひとこと】
まず注目すべきは、自己資本比率が84.0%という驚異的な高さです。純資産は18億円を超え、利益剰余金も潤沢であり、極めて盤石な財務基盤を誇ります。今期は25百万円の当期純損失を計上していますが、この強固な財務体質を鑑みれば、直営店の積極的な出店など、未来への戦略的な先行投資の結果である可能性が高く、経営の健全性は揺らいでいないと判断できます。

【企業概要】
社名: カメイ・プロアクト株式会社
設立: 1982年
株主: カメイ株式会社
事業内容: フランスのスニーカーブランド「PATRICK」の国内展開を中心としたブランド事業と、ゴルフキャディバッグ等のOEM事業の二本柱で事業を展開する、総合商社カメイグループの企業。

www.kamei-pro.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
カメイ・プロアクトの事業は、消費者に直接ブランドを届ける「ブランド事業」と、メーカーとして製品を供給する「GOLF OEM事業」という、性質の異なる二つのビジネスで構成されています。

✔ブランド事業
同社の顔となる事業です。中核をなすのは、フランス発のスニーカーブランド「PATRICK」。同社は日本国内における商標権を保有しており、単なる輸入販売に留まらず、ブランドの世界観を体現する直営店「PATRICK LABO」を全国の主要都市に展開しています。ブランドの価値を深く理解し、企画から販売まで一貫して手掛けることで、ファンとの強い絆を築いています。その他にも、「thermo mug」や「SUPERGA」といった、ライフスタイルを彩る海外ブランドを多数取り扱っています。

✔GOLF OEM事業
BtoBのメーカーとしての顔です。中国・青島市に100%資本の自社工場を構え、ゴルフのキャディバッグを中心に、高品質なOEMサービスを提供しています。企画・デザインの提案から、経験豊富な駐在員による徹底した品質管理、そして納品までを一貫してサポート。グローブライド(DAIWA)や住友ゴム工業(DUNLOP, SRIXON)、デサントといった国内外のトップゴルフメーカーを主要取引先としており、その製造技術と品質管理能力が高く評価されています。

✔総合商社カメイグループという基盤
同社は、東北を拠点とする総合商社「カメイ株式会社」のグループ企業です。この強力なバックボーンが、事業の安定性と信用力を支え、グローバルな事業展開を可能にしています。


【財務状況等から見る経営戦略】
自己資本比率84%という鉄壁の財務は、どのようにして築かれたのでしょうか。

✔外部環境
ファッション・スニーカー市場はトレンドの移り変わりが激しいものの、「PATRICK」のような歴史と独自性を持つブランドへの需要は根強く存在します。ゴルフ市場も安定した愛好家層に支えられています。一方で、円安による輸入コストや海外工場の運営コストの上昇、景気後退による消費マインドの冷え込みはリスク要因です。

✔内部環境
「PATRICK」の国内商標権保有は、他社にはない強力な無形資産です。これにより、安定したブランドビジネスを展開できます。また、直営店「PATRICK LABO」の積極的な出店は、ブランドの世界観を直接消費者に伝え、収益性を高めるための重要な戦略です。一方、OEM事業は大手メーカーとの長期的な関係に支えられており、安定した収益基盤となっています。このBtoCとB2Bの両輪が、経営の安定に大きく寄与しています。

✔安全性分析
貸借対照表は、同社が40年以上にわたり築き上げてきた堅実経営の結晶です。総資産約21.8億円に対し、負債はわずか約3.5億円。残りの約18.3億円が返済不要の純資産であり、自己資本比率は84.0%に達します。これは実質的な無借金経営であり、財務的なリスクは極めて低いと言えます。利益剰余金が約17.4億円と、資本金(9,000万円)の19倍以上積み上がっていることからも、長年の高い収益力がうかがえます。今期の25百万円の損失は、この潤沢な内部留保から見れば微々たるものであり、成長のための投資と考えるのが自然です。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・ブランド事業とOEM事業という、収益源を分散したビジネスモデル
・「PATRICK」の国内商標権と、直営店「PATRICK LABO」による強力なブランド展開
・品質管理能力の高い、中国の自社OEM工場
自己資本比率84%を誇る、極めて強固な財務基盤と親会社カメイの信用力

弱み (Weaknesses)
・ファッションや特定ブランドのトレンドに業績が左右される可能性
OEM事業における、主要取引先への高い依存度

機会 (Opportunities)
・Eコマースの強化による、直販比率の向上とさらなる収益性改善
・「PATRICK」ブランドでのアパレルやアクセサリーなど、商品カテゴリーの拡大
・ゴルフOEMで培った製造ノウハウを活かした、他分野へのOEM事業展開

脅威 (Threats)
・景気後退による、ファッション・ゴルフ用品といった嗜好品への消費支出の減少
・海外ブランドとの競争激化
・中国における人件費や原材料費の高騰


【今後の戦略として想像すること】
盤石な経営基盤を活かし、ブランド価値の向上と事業領域の拡大を両輪で進めていくでしょう。

✔短期的戦略
近年加速している直営店「PATRICK LABO」の出店を継続し、主要都市でのブランドプレゼンスをさらに高めていくことが予想されます。これにより、ブランドの世界観を伝えながら、収益性の高い直販比率を向上させていきます。同時に、各ブランドの公式ECサイトを強化し、オンラインとオフラインを融合させた顧客体験の向上を図るでしょう。

✔中長期的戦略
「PATRICK」をライフスタイルブランドとして確立するため、シューズ以外の分野(アパレル、バッグ等)のライセンス事業を本格化させる可能性があります。また、OEM事業で培った生産管理能力と品質へのこだわりを活かし、ゴルフ以外のスポーツやアウトドア用品など、新たなカテゴリーへのOEM展開も視野に入れているかもしれません。


【まとめ】
カメイ・プロアクト株式会社は、消費者の憧れを形にする「ブランドプロデューサー」の顔と、世界のトップメーカーを支える「ものづくりのプロフェッショナル」という、二つの強力なエンジンを持つ企業です。その安定した事業運営は、自己資本比率84%という鉄壁の財務基盤に如実に表れています。

今期のわずかな赤字は、停滞ではなく、むしろ「PATRICK LABO」の全国展開という次なる成長へのアクセルを踏み込んだ証左と言えるでしょう。これからも、日本人ならではのモノづくりへのこだわりと、グローバルな視点を融合させ、私たちのライフスタイルを豊かにする製品を届け続けてくれることが期待されます。


【企業情報】
企業名: カメイ・プロアクト株式会社
所在地: 東京都港区虎ノ門3丁目18番19号
代表者: 川井 康紀
設立: 1982年8月
資本金: 9,000万円
事業内容: 輸入スポーツ用品、アパレル、雑貨の販売。ゴルフ用品のOEM事業。
株主: カメイ株式会社

www.kamei-pro.co.jp

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