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#3684 決算分析 : 環境計測株式会社 第54期決算 当期純利益 163百万円

私たちが呼吸する空気、利用する水の清浄さ、そして静かな生活環境。これら当たり前のように享受している安全で快適な暮らしは、目に見えない環境の状態を科学的に「計測」し、監視・管理する専門家たちの働きによって支えられています。環境計測株式会社は、日本で公害問題が深刻化した1971年に測定器のメンテナンス会社として創業して以来、50年以上にわたり、その重要な役割を担ってきたパイオニア的存在です。

今回は、伝統的な環境調査にAIやドローンといった最新技術を融合させ、環境ソリューションの新たな地平を切り拓く同社の決算公告を読み解き、その事業の奥深さと健全な財務内容に迫ります。

環境計測決算

【決算ハイライト(54期)】
資産合計: 2,499百万円 (約25.0億円)
負債合計: 1,424百万円 (約14.2億円)
純資産合計: 1,075百万円 (約10.8億円)

当期純利益: 163百万円 (約1.6億円)

自己資本比率: 約43.0%
利益剰余金: 988百万円 (約9.9億円)

【ひとこと】
総資産約25億円に対し、純資産が10億円を超え、自己資本比率も43%と非常に健全な財務基盤を維持しています。1.6億円以上の当期純利益を確保しており、社会の環境インフラを支える事業で安定した収益力を有する優良企業であることがわかります。

【企業概要】
社名: 環境計測株式会社
設立: 1971年3月
株主: トーヨーカネツ株式会社(プライム上場)
事業内容: 環境常時監視、環境調査、及びそれらに関するデジタル・AI/IoTソリューションの提供

www.kankyou-keisoku.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
環境計測の事業は、単なる調査・分析に留まりません。機器の保守管理(ハード)、専門家による調査・コンサルティング(ソフト)、そしてデータを活用するシステム開発(IT)までを統合した「総合環境ソリューション事業」を展開しています。

✔環境常時監視ソリューション
創業以来の中核事業であり、同社の原点です。国や地方自治体が国道沿いや河川、工場地帯などに設置している大気質や水質の自動測定局を、24時間365日体制で保守管理します。定期的なメンテナンスや機器の修理を通じて、環境データの精度と信頼性を維持し、環境行政の根幹を支える重要な役割を担っています。

✔環境調査ソリューション
道路やダム、工場などの建設事業に先立って行われる「環境アセスメント(環境影響評価)」を主力としています。大気、水質、土壌、騒音・振動といった生活環境から、動植物の生態系といった自然環境まで、専門知識を持つ技術者が現地調査と科学的な分析を実施。事業が環境に与える影響を予測・評価し、保全措置の提案まで行うコンサルティング業務です。

✔デジタル & AI/IoTソリューション
同社の先進性を象徴する事業です。環境計測で得られる膨大なデータをリアルタイムで収集・監視する「テレメーターシステム」の開発・提供には長年の実績があります。近年では、ドローンを活用した生態系調査や地形測量、AIを用いた交通量画像の自動解析サービスなど、最新技術を駆使して調査の効率化・高度化を実現し、新たな価値を創造しています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
SDGsカーボンニュートラル(脱炭素)への社会的な要請の高まりは、同社の事業にとって強力な追い風です。企業の環境情報開示義務の強化や、環境関連の法規制の厳格化は、環境計測・調査の需要を直接的に押し上げています(機会)。一方で、技術革新のスピードは速く、AIやIoTといった先端技術への継続的な研究開発投資が、競争力を維持する上で不可欠となっています。

✔内部環境
50年以上にわたる歴史の中で培ってきた環境計測に関する豊富なノウハウと、官公庁や大手企業との長年にわたる取引実績が、強固な事業基盤を形成しています。ハード・ソフト・ITを自社で一貫して提供できる総合力は、顧客の複雑な課題にワンストップで応えられる大きな強みです。2021年に大手プラントメーカーのトーヨーカネツ株式会社の100%子会社となったことで、経営基盤がさらに強化され、大規模な環境インフラプロジェクトへの参画など、グループシナジーを活かした事業拡大が期待されます。

✔安全性分析
自己資本比率43.0%は、専門的な技術サービス業として非常に安定した水準です。純資産約10.8億円のうち、利益剰余金が約9.9億円を占めており、創業以来、着実に利益を積み重ねてきた堅実な経営姿勢がうかがえます。負債も適切にコントロールされており、財務基盤は健全そのもの。この安定性があるからこそ、AIやドローンといった先行投資が必要な新技術開発にも積極的に取り組むことができるのです。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・創業50年以上の実績と、官公庁などを中心とする強固な顧客基盤
・計測機器の保守、環境調査、システム開発までを網羅する総合的なソリューション提供能力
・AIやドローンなどの先進技術を積極的に活用する技術開発力
トーヨーカネツグループとしての信用力と事業シナジー

弱み (Weaknesses)
・公共事業への依存度が高い場合、国の予算動向に業績が左右される可能性がある
・事業の専門性が高く、高度な知識を持つ技術者の確保と育成が不可欠

機会 (Opportunities)
SDGsや脱炭素社会への移行に伴う、企業の環境投資の拡大
・インフラ老朽化対策や防災・減災分野における、環境モニタリング需要の増加
・AI・IoT技術のさらなる進化による、新たな環境サービスの創出(環境予測など)

脅威 (Threats)
・環境調査・コンサルティング業界における価格競争の激化
・技術革新のスピードに追随できないリスク
・大規模な公共事業の抑制・見直し


【今後の戦略として想像すること】
伝統と革新を両輪に、同社は「環境×デジタル」の領域でさらなる成長を目指していくと考えられます。

✔短期的戦略
強みであるAIやドローンを活用した調査・解析サービスを、環境アセスメント市場で積極的に展開し、他社との差別化を明確にするでしょう。また、親会社であるトーヨーカネツグループの顧客基盤(工場、プラントなど)に対し、省エネ診断や排水管理といった環境監視ソリューションを提案するクロスセルを推進していくことが予想されます。

✔中長期的戦略
蓄積された膨大な環境データとAIを組み合わせ、「大気汚染予測」や「生態系変化のシミュレーション」といった、より付加価値の高い「環境予測サービス」へと事業を進化させていく可能性があります。また、カーボンニュートラルという大きなテーマに対し、企業のCO2排出量算定(Scope1,2,3)の支援や、森林のCO2吸収量をモニタリング・評価するサービスなど、新たな事業領域を開拓していくことが期待されます。


【まとめ】
環境計測株式会社は、公害が社会問題となった時代に産声を上げ、測定器のメンテナンスという地道な業務からスタートし、今やAIやドローンを駆使する総合環境ソリューション企業へと華麗な進化を遂げた企業です。その歩みは、日本の環境政策の歴史そのものと重なります。
健全な財務基盤に支えられ、社会の持続可能性という大きなテーマに、科学と技術の力で真摯に向き合い続ける同社の姿勢は、多くの企業にとって手本となるでしょう。トーヨーカネツグループの一員として、今後はさらに大きなスケールで、私たちの生活と地球の未来を支える環境インフラを構築していくことが期待されます。


【企業情報】
企業名: 環境計測株式会社
所在地: 京都市伏見区竹田北三ツ杭町84番地
代表者: 代表取締役社長 品川 武志
設立: 1971年3月
資本金: 7,500万円
事業内容: 環境常時監視ソリューション、環境調査ソリューション、デジタルソリューション、AI/IoTソリューション
株主: トーヨーカネツ株式会社

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