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#3393 決算分析 : 株式会社ウォーターエージェンシー 第67期決算 当期純利益 3,610百万円

蛇口をひねれば当たり前のように出てくる、安全で清浄な水。私たちが日々の暮らしで何気なく使っているこの水は、上下水道施設という巨大な社会インフラによって支えられています。しかし、その多くは高度経済成長期に整備され、施設の老朽化や、頻発する自然災害への対応、そして担い手不足といった深刻な課題に直面しています。この国民生活の根幹をなす「水の循環」を、官民連携の力で守り、進化させているパイオニア企業が存在します。

今回は、日本の水インフラ運営におけるリーディングカンパニーであり、「すべては公益のために」を理念に掲げる、株式会社ウォーターエージェンシーの決算を読み解き、その圧倒的な収益力と、社会を支える強靭なビジネスモデルに迫ります。

ウォーターエージェンシー決算

【決算ハイライト(第67期)】
資産合計: 31,260百万円 (約312.6億円)
負債合計: 17,964百万円 (約179.6億円)
純資産合計: 13,296百万円 (約133.0億円)
当期純利益: 3,610百万円 (約36.1億円)
自己資本比率: 約42.5%
利益剰余金: 13,096百万円 (約131.0億円)

【ひとこと】
総資産312億円という事業規模もさることながら、当期純利益36億円という極めて高い収益性にまず驚かされます。自己資本比率42.5%、利益剰余金131億円という盤石の財務基盤は、社会インフラを支える企業に求められる、揺るぎない安定性と持続可能性を明確に示しています。

【企業概要】
社名: 株式会社ウォーターエージェンシー
株主: 株式会社ウォーターホールディングス
事業内容: 全国の地方自治体等から、上下水道施設をはじめとする水インフラ施設の運転・維持管理業務を受託する、包括的な水環境ソリューション企業。工業薬品の販売や、オゾン水生成器等の開発も手掛ける。

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【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、単なる施設の維持管理に留まりません。長年の経験と最新技術を融合させた独自の『水マネジメント』を核に、日本の水インフラが抱える課題を解決する、多角的なサービスを展開しています。

✔水マネジメント事業(官民連携によるインフラ運営)
事業の中核をなすのが、全国の地方自治体等とのパートナーシップに基づく、上下水道施設の運転・維持管理(O&M)事業です。民間企業として、この公共性の高い水事業にいち早く参入したパイオニアであり、半世紀以上にわたる経験とノウハウを蓄積しています。施設の日常的な運転操作から、水質管理、設備の点検・補修までを一貫して担い、安全・安心な水の安定供給を支えています。これは、長期契約に基づく安定した収益基盤となっています。

✔テクノロジーを駆使したイノベーション
同社の競争力の源泉は、常に最新技術を取り入れ、インフラ運営を革新し続けている点にあります。
・DXの推進:センサーなどのICT、IoT技術を活用し、水質や設備の状況を常時監視。異常を検知した際には自動で運転を最適化する独自システム『水再清ロボット®』などを開発・導入し、省エネルギー化と運転の安定化を両立させています。
・AIの活用:これまで蓄積してきた膨大な運転データをAIに学習させ、常に最適な運転方法を導き出す仕組みを開発。経験豊富な技術者のノウハウを、AIの力で再現・進化させています。
・広域管理体制:人口減少や技術者不足に対応するため、複数の施設を少数精鋭のチームが遠隔監視と巡回を組み合わせて管理する『広域管理体制』を構築。スケールメリットを活かし、コスト削減と管理レベルの向上を実現しています。

シナジーを生む周辺事業
水インフラ運営の専門家である知見を活かし、周辺事業も展開しています。
・工業薬品事業:水処理に不可欠な各種工業薬品を、ユーザー目線で選定・供給。
・オゾン水/浄水器事業:自社で企画・開発したオゾン水生成器や浄水器などを提供。
これらの事業は、中核である水マネジメント事業とのシナジーを生み出し、顧客への提供価値を高めています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
日本の水インフラは、全国的に施設の老朽化が深刻な問題となっており、その更新・維持管理には莫大な費用と高度な技術が必要です。また、ゲリラ豪雨や大規模地震といった自然災害の頻発は、事業継続計画(BCP)の重要性を高めています。こうした背景から、専門的なノウハウと効率的な運営能力を持つ民間企業への期待はますます高まっており、官民連携(PPP/PFI)市場は、同社にとって非常に大きな成長機会となっています。

✔内部環境
当期純利益36億円という高い収益性は、同社が提供する技術主導の運営管理サービスが高い付加価値を持つこと、そして、業界のパイオニアとして確固たる市場地位を築いていることの証左です。自己資本比率42.5%、そして資本金の65倍以上にもなる131億円の利益剰余金は、長期的な視点での研究開発投資や、災害時にも事業を継続するための強靭な財務体力を示しています。「すべては公益のために」という理念を掲げ、短期的な利益追求だけでなく、地域雇用や環境教育といった社会貢献活動にも力を入れている点が、自治体をはじめとする顧客からの長期的な信頼獲得に繋がっています。

✔安全性分析
財務の安全性は「極めて高い」と断言できます。自己資本比率40%超は、製造業やインフラ関連企業として非常に健全な水準です。短期的な支払い能力を示す流動比率流動資産÷流動負債)も約240%(276.5億円 ÷ 115.6億円)と、安全の目安である100%をはるかに上回っており、資金繰りにも全く懸念はありません。長年にわたる安定した黒字経営によって築き上げられたこの財務基盤は、社会インフラを担う企業として、まさに信頼の礎となっています。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・水インフラ運営における、業界のパイオニアとしての半世紀以上の経験と圧倒的な実績
・AIやIoTを活用した、他社にはない高度な技術力とデータに基づいた運営ノウハウ
・純資産133億円、自己資本比率42.5%を誇る、極めて強固で安定した財務基盤
・全国をカバーする事業ネットワークと、災害時にも対応可能な危機管理体制

弱み (Weaknesses)
・事業の多くを地方自治体などの公共セクターに依存しており、国の公共事業予算の方針転換がリスクとなり得る
・事業の根幹を支える、専門性の高い技術人材の継続的な確保と育成が、成長のボトルネックになる可能性

機会 (Opportunities)
・全国で深刻化する、水道・下水道インフラの老朽化対策という、巨大かつ長期的な市場
・国が推進する官民連携(PPP/PFI)手法の、さらなる普及拡大
・国内で培った高度なO&M(運転・維持管理)モデルを、水インフラ整備が急務である海外市場へ展開する可能性

脅威 (Threats)
・同業他社や、異業種(大手ゼネコン、総合商社など)からの、官民連携市場への参入による競争の激化
・公共事業入札における、過度な価格競争による収益性の低下
・管理施設における、重大な事故や環境問題の発生による、社会的信用の失墜リスク


【今後の戦略として想像すること】
「水のDX」をリードし、国内で盤石な地位を築くとともに、グローバルな水問題の解決に貢献していく未来が描かれます。

✔短期的戦略
これまで通り、強みである技術力を活かして、全国の自治体から長期的な包括的民間委託契約を着実に受注していくことが事業の根幹となります。特に、AIやIoTを活用した『水再清ロボット®』などの独自ソリューションの導入をさらに推進し、顧客である自治体の財政負担軽減と、サービスの質の向上を両立させる提案を強化していくでしょう。

✔中長期的戦略
「水のDX(デジタルトランスフォーメーション)」のリーディングカンパニーとしての地位を不動のものにしていくと考えられます。全国の管理施設から得られる膨大なデータを活用し、設備の故障を予知する「予知保全」サービスの高度化や、気象データと連携した最適な水量管理システムの開発など、より付加価値の高いサービスを創出していくことが期待されます。将来的には、日本で培ったこの世界トップクラスのO&Mモデルをパッケージ化し、水インフラの整備が急務であるアジア諸国などへ展開していくことも、大きな成長戦略となり得ます。


【まとめ】
株式会社ウォーターエージェンシーは、単なる施設の維持管理会社ではありません。それは、日本の、そして人々の生活に不可欠な「水」というライフラインを、最先端の技術と強い責任感で守り続ける、社会インフラの守護神です。決算書に示された圧倒的な収益力と、盤石の財務基盤は、「すべては公益のために」という崇高な理念を、ビジネスとして見事に成立させていることの証左です。これからも、健全な水の循環を未来へ繋ぐという大きな使命を胸に、日本の水環境の未来をリードし続けることが期待されます。


【企業情報】
企業名: 株式会社ウォーターエージェンシー
所在地: 東京都新宿区東五軒町3番25号
代表者: 榊原 秀明
資本金: 2億円
事業内容: 上下水道施設等の維持管理、工業薬品類販売、環境衛生製品等の製造販売
株主: 株式会社ウォーターホールディングス

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