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#3392 決算分析 : 株式会社GSTV 第37期決算 当期純利益 ▲360百万円

きらびやかな輝きで人々を魅了するジュエリー。その価格は、鉱山で原石が採掘されてから、研磨、デザイン、製造、卸、そして小売店の店頭に並ぶまで、多くの流通プロセスを経て形成されるのが世界の常識でした。この常識に、テレビショッピングというダイレクトな販売手法で風穴を開け、「鉱山からお客様の元へ」に近い独自のサプライチェーンを構築した企業があります。

今回は、宝石専門チャンネル「ジュエリー☆GSTV」の運営会社として知られる、宝飾品のSPA(製造小売)企業、株式会社GSTVの決算を読み解き、そのユニークなビジネスモデルと、厳しい消費環境の中での経営状況に迫ります。

GSTV決算

【決算ハイライト(第37期)】
資産合計: 9,830百万円 (約98.3億円)
負債合計: 5,795百万円 (約58.0億円)
純資産合計: 4,035百万円 (約40.3億円)
当期純損失: 360百万円 (約3.6億円)
自己資本比率: 約41.0%
利益剰余金: 1,397百万円 (約14.0億円)

【ひとこと】
純資産40億円、自己資本比率41.0%と、財務基盤は極めて強固で安定しています。しかし、当期は3.6億円の純損失を計上しており、厳しい事業環境がうかがえます。宝飾品という高価な嗜好品を扱うビジネスモデルだけに、近年の物価高騰などによる消費マインドの冷え込みが、業績に直接的な影響を与えた可能性が考えられます。

【企業概要】
社名: 株式会社GSTV
設立: 1988年
事業内容: 宝石専門チャンネル「ジュエリー☆GSTV」を運営する、宝飾品のSPA(製造小売)企業。世界中からの宝石の仕入れ、企画・製造、そしてテレビ、ECサイト、全国のショールームでの販売、さらにはジュエリーの二次流通(リセール)までを一貫して手掛ける。

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【事業構造の徹底解剖】
GSTVのビジネスモデルの核心は、ジュエリーのライフサイクルを川上から川下、そしてその先まで網羅する、独自の垂直統合サプライチェーンにあります。

✔宝石専門チャンネル「ジュエリー☆GSTV」(強力な販売チャネル)
事業の中核をなすのが、BS放送などで毎日生放送されるテレビショッピング番組です。ジュエリーの専門知識を持つコメンテーターが、商品の背景にあるストーリーや宝石の魅力を熱量高く語り、視聴者とダイレクトに繋がります。ライブならではの臨場感と、専門家による分かりやすい解説が、多くのお客様の支持を集める強力な販売チャネルとなっています。

✔SPA(製造小売)モデルによる価格競争力
同社は、香港、バンコク、ムンバイといった世界の主要な宝石取引の中心地に拠点を構え、経験豊富なバイヤーが産地から直接ジェムストーンを買い付けます。そして、宝飾産業の集積地である山梨県甲府市の自社事業所や協力工場でジュエリーを製造。この「仕入れから製造・販売まで」を一気通貫で行うSPAモデルにより、中間マージンを徹底的に排除し、高品質なジュエリーを適正な価格で顧客に提供することを可能にしています。

✔マルチチャネル戦略による顧客接点の多様化
販売チャネルはテレビだけではありません。24時間いつでも購入できる公式ECサイトはもちろん、銀座、心斎橋、札幌など全国の主要都市に13のショールームを展開。テレビで気になった商品を、実際に手に取ってその輝きを確かめたいという顧客のニーズに応えています。テレビ、インターネット、店舗という複数のチャネルが連携し、顧客との多様な接点を創出しています。

✔二次流通事業「Jewelry Secondary Market」(循環型経済への貢献)
近年、特に力を入れているのが、ジュエリーの委託(仲介)販売サイトの運営です。顧客が大切にしてきたジュエリーを、次に必要とする人へと繋ぐ二次流通のプラットフォームを提供。これにより、顧客は使わなくなったジュエリーを資産として活用でき、同社は新たな顧客層の獲得と、サステナブルなビジネスモデルの構築を実現しています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
ジュエリーのような高額な嗜好品市場は、景気動向や消費者の心理状態に大きく左右されます。近年の世界的なインフレと、それに伴う日々の生活コストの上昇は、消費者の財布の紐を固くし、宝飾品への支出を抑制する大きな要因となり得ます。一方で、サステナビリティ(持続可能性)への関心の高まりは、リセール市場(二次流通)の拡大を後押ししています。また、インバウンド観光客の完全回復は、銀座や心斎橋、元町といった都心部や観光地のショールームにとって、大きなビジネスチャンスとなります。

✔内部環境
当期に計上した▲3.6億円の純損失は、こうした消費マインドの冷え込みによる売上の伸び悩みが最大の要因と推測されます。宝飾品は、金やプラチナ、ダイヤモンドといった原材料の原価が高く、また、魅力的な品揃えを維持するためには多額の在庫投資が必要です。そのため、売上が計画を下回ると、高い原価率と固定費(番組制作費、店舗運営費など)が利益を大きく圧迫する事業構造となっています。しかし、自己資本比率41.0%、純資産40億円という極めて強固な財務基盤は、こうした短期的な業績の落ち込みを吸収し、市況の回復を待つだけの十分な体力を有していることを示しています。

✔安全性分析
財務の安全性は「非常に高い」レベルにあると評価できます。自己資本比率が40%を超えていることは、経営の安定性を示す重要な指標です。また、短期的な支払い能力を示す流動比率流動資産÷流動負債)も約177%(79億円 ÷ 45億円)と、安全の目安である100%を大きく上回っており、資金繰りにも全く懸念はありません。流動資産の多くは商品(ジュエリー在庫)と推測され、この価値ある在庫をいかに効率的に販売し、キャッシュフローを創出していくかが、今後の経営の鍵となります。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・原石の仕入れから製造・販売までを一貫して行うSPAモデルによる、高い価格競争力と品質管理能力
・宝石専門チャンネル「ジュエリー☆GSTV」という、他に類を見ない強力な販売チャネルと高いブランド知名度
・純資産40億円、自己資本比率41.0%を誇る、極めて強固で安定した財務基盤
・一次流通(新品販売)から二次流通(リセール)までをカバーする、包括的な事業ポートフォリオ

弱み (Weaknesses)
・景気や消費マインドといった外部環境の変動に、業績が大きく左右されやすい事業特性
・主要な販売チャネルであるテレビ通販の、視聴者層の高齢化という構造的課題
・価値の変動リスクがある、高額な宝飾品在庫を保有する必要がある点

機会 (Opportunities)
・インバウンド観光客の本格的な回復に伴う、都心部ショールームでの売上増加
サステナビリティ志向の高まりを背景とした、ジュエリーの二次流通(リセール)市場のさらなる拡大
・公式ECサイトSNS、ライブコマースなどを活用した、若年層をはじめとする新たな顧客層へのアプローチ強化

脅威 (Threats)
・長引く物価高騰による、消費者の宝飾品をはじめとする高額な嗜好品への支出抑制
・オンライン販売を主軸とする、新興のD2Cジュエリーブランドとの競争激化
・金やダイヤモンドといった、主要な原材料価格のさらなる高騰による原価上昇圧力


【今後の戦略として想像すること】
強固な財務基盤を活かし、変化する市場環境に適応するための多角的な戦略が考えられます。

✔短期的戦略
まずは収益性の改善が最優先課題です。テレビ通販においては、番組内容のさらなる工夫や、ECサイトとの連動を強化することで販売効率を高めることが求められます。また、回復基調にあるインバウンド需要を確実に取り込むため、都心部ショールームにおける多言語対応の強化や、免税手続きの円滑化などを推進するでしょう。コスト面では、グローバルな調達網を活かした、より効率的な原材料の買い付けなどが挙げられます。

✔中長期的戦略
中長期的には、成長分野である二次流通事業「Jewelry Secondary Market」への投資を強化し、事業の新たな柱として本格的に育成していくことが期待されます。一次流通で獲得した膨大な顧客基盤は、二次流通事業にとって大きなアドバンテージとなります。また、テレビ通販で獲得した顧客に対し、自社メディア「JEWELRY SQUARE」などを通じて専門的な情報を提供し続けることでエンゲージメントを高め、LTV(顧客生涯価値)を向上させていくことも重要な戦略です。


【まとめ】
株式会社GSTVは、テレビ通販を主軸とした宝飾品のSPA(製造小売)という、ユニークで強力なビジネスモデルを確立したパイオニア企業です。現在の消費マインドの冷え込みという逆風を受け、当期は赤字を計上しましたが、純資産40億円という盤石の財務基盤は全く揺らいでいません。今後は、一次流通で培った強みを活かしながら、成長市場である二次流通分野をいかに伸ばしていけるかが、再成長への鍵を握ります。これからも、ジュエリー文化の伝道師として、多くの人々に夢と輝きを届け続ける挑戦に期待が集まります。


【企業情報】
企業名: 株式会社GSTV
所在地: 東京都品川区東品川2-2-43
代表者: 今橋 徹
設立: 1988年5月17日
資本金: 1億円
事業内容: 宝飾品の製造及びテレビ・インターネット・店舗催事等による販売、セカンダリージュエリーの販売仲介サイト運営

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