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#3022 決算分析 : 株式会社アマダプレスシステム 第63期決算 当期純利益 1,348百万円

自動車のボディ、スマートフォンの筐体、家電製品の精密部品。私たちの身の回りにある、あらゆる工業製品の”骨格”を形作っているのが、金属などを強力な圧力で成形する「プレスマシン」です。そして、その生産性を飛躍的に高めるのが、プレス機と連携して動く自動化装置やロボットです。もし、このプレス機本体から、周辺の自動化装置、さらにはボールペンの先に入るような極小バネを作る成形機まで、”金属塑性加工”の全てを網羅する総合メーカーが存在するとしたら。

今回は、板金機械の世界的メーカー「アマダグループ」の中核を担い、日本のものづくりを支える、株式会社アマダプレスシステムの決算を読み解き、その圧倒的な技術力と収益性、そして盤石な経営基盤に迫ります。

アマダプレスシステム決算

【決算ハイライト(第63期)】
資産合計: 13,800百万円 (約138.0億円)
負債合計: 3,026百万円 (約30.3億円)
純資産合計: 10,773百万円 (約107.7億円)

売上高: 17,252百万円 (約172.5億円)
当期純利益: 1,348百万円 (約13.5億円)

自己資本比率: 約78.1%
利益剰余金: 7,518百万円 (約75.2億円)

【ひとことコメント】
自己資本比率78.1%、利益剰余金75億円超という、鉄壁とも言える財務基盤を誇ります。売上高172億円に対し、13.5億円もの純利益を計上しており、世界的な技術力に裏打ちされた、極めて高い収益性を証明しています。

【企業概要】
社名: 株式会社アマダプレスシステム
設立: 1962年7月
株主: 株式会社アマダ
事業内容: プレスマシン、プレス周辺装置、ばね成形機の開発・製造・販売・サービス

www.amp.amada.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社は、歴史ある3つの事業(ブランド)を統合することで、金属塑性加工分野において、他に類を見ない「総合メーカー」としての地位を確立しています。

✔プレスマシン事業(AMADAブランド)
自動車部品や電子部品など、高精度な金属部品を製造するためのプレス機本体の開発・製造を担います。最新のサーボモーターで自在な加工を実現する「デジタル電動サーボプレス」を筆頭に、顧客のニーズに応じた多様な製品ラインナップを誇ります。数々の技術大賞を受賞していることからも、その技術力の高さが伺え、アマダグループの中核を担う事業です。

✔プレス周辺装置事業(ORIIブランド)
プレス加工の自動化・効率化を実現する、周辺装置の事業です。コイル状の金属材料を平らにしながらプレス機へ送り込む「コイル材供給装置」や、複数のプレス機間で加工品を搬送する「ワーク搬送装置(ロボット)」などを手掛けます。プレス機本体と自動化装置をワンストップで提供できることが、同社の最大の強みの一つです。

✔ばね成形機事業(MECブランド)
押しばね、ねじりばね、引きばねなど、あらゆる種類のばねを製造する「ばね成形機」の事業です。旧メックマシナリー時代から続く「MEC」ブランドは、特に精密ばねや引きばねの分野で世界随一の技術力を誇ります。その製品は、ボールペンのような日用品から、医療用カテーテル、さらにはEV向けモーターの重要部品(セグメントコンダクタコイル)の製造まで、極めて幅広い分野で活躍しています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
世界的な自動車業界のEV(電気自動車)シフトは、同社にとって最大の追い風です。エンジン部品の需要が減少する一方で、モーターやバッテリー、軽量化ボディといったEV特有の部品を製造するための、高性能なプレスマシンや自動化システムの需要が爆発的に増加しています。また、製造業全体の人手不足は、工場の自動化ニーズを加速させており、同社のプレス周辺装置事業の成長を後押ししています。

✔内部環境
同社は、アマダのプレス事業と、プレス周辺装置のオリイ、ばね成形機のメックが統合して誕生しました。この戦略的な統合により、顧客の工場に対して「プレスライン一式」を丸ごと提案できる、強力なソリューション提供能力を獲得しました。これにより、顧客の設備投資におけるシェアを最大化し、高い収益性を確保しています。

✔安全性分析
自己資本比率が78.1%という数値は、大規模な工場や設備を要する製造業として、驚異的な高さです。負債への依存度が極めて低く、経営は非常に安定しています。75億円を超える莫大な利益剰余金は、長年にわたる高収益経営の歴史を物語っており、世界経済の変動にも揺るがない、強靭な財務体質を構築しています。この盤石な財務基盤が、次世代技術への継続的な研究開発投資を可能にしています。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・「プレス機」「自動化装置」「ばね成ahmat成形機」を網羅する、比類なき製品ポートフォリオ
・「AMADA」の強力なグローバルブランドと販売網
・EV向け部品加工などで業界をリードする、数々の受賞歴に裏打ちされた高い技術開発力
自己資本比率78.1%という、鉄壁の財務基盤と高い収益性

弱み (Weaknesses)
・自動車や電機といった、特定業界の設備投資の動向に業績が左右されやすい
・親会社であるアマダグループ全体の経営戦略への依存

機会 (Opportunities)
・世界的なEVシフトに伴う、自動車部品製造ラインへの大規模な設備投資需要
・製造業の人手不足を背景とした、工場の自動化・省人化ニーズのさらなる拡大
新興国における、製造業の高度化に伴う、高性能な工作機械への需要増

脅威 (Threats)
・ドイツや中国など、海外の強力な工作機械メーカーとのグローバルな競争
・世界的な景気後退による、企業の設備投資の抑制・凍結
3Dプリンターなど、新たな金属加工技術の台頭


【今後の戦略として想像すること】
EV化と自動化という二大潮流を捉え、”未来の工場”を実現するソリューションプロバイダーとして、さらなる進化を遂げることが予想されます。

✔短期的戦略
EVのモーターコアやバッテリーケース、軽量な車体構造部材といった、新たな部品の製造に最適化されたプレスマシンと自動化ラインの提案を、国内外の自動車部品メーカーに対して強力に推進していくでしょう。また、人手不足に悩む中小企業向けに、より導入しやすいコンパクトな自動化システムのラインナップを拡充することも考えられます。

✔中長期的戦略
IoTやAI技術を自社のプレスシステムに深く組み込み、機械が自らの状態を診断して故障を予知したり、生産状況に応じて自動で稼働を最適化したりする「スマートプレスライン」の開発を加速させることが期待されます。将来的には、ハードウェアとしての機械を売るだけでなく、その稼働データに基づいた生産性向上のコンサルティングなど、サービス領域での事業も強化していくのではないでしょうか。


【まとめ】
株式会社アマダプレスシステムは、アマダ、オリイ、メックという、日本の塑性加工業界をリードしてきたレジェンド達のDNAが融合して生まれた、ものづくりの巨人です。自動車からスマートフォン、医療機器まで、現代社会を構成する無数の部品が、同社の機械から生み出されています。決算書に記された圧倒的な収益性と鉄壁の財務基盤は、その卓越した技術力と、時代の変化を的確に捉える戦略の正しさを証明しています。EVと自動化が製造業の未来を塗り替える今、アマダプレスシステムは、その未来の工場を形作る、最も重要なキープレイヤーの一社であり続けるに違いありません。


【企業情報】
企業名: 株式会社アマダプレスシステム
所在地: 神奈川県伊勢原市石田200
代表者: 代表取締役社長 堀江 喜美雄
設立: 1962年7月
資本金: 14億9,125万円
事業内容: プレスマシン、プレス周辺装置、ばね成形機の開発・製造・販売・サービス
株主: 株式会社アマダ

www.amp.amada.co.jp

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