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#2394 決算分析 : 壽環境機材株式会社 第49期決算 当期純利益 35百万円

工場の生産活動や私たちの日常生活に、水は欠かせません。しかし、一度使われた水は汚染され、そのままでは環境に大きな負荷を与えてしまいます。この使用済みの水を浄化し、再び自然に返すための「排水処理設備」。そして、そもそも生産に必要な清浄な「用水」を作り出す設備。これらの水処理プラントは、現代の産業と社会を持続可能にするための、まさに生命線です。今回は、大阪市に本社を構え、45年以上にわたり、この水処理プラントの設計から施工、維持管理までを一貫して手掛ける環境エンジニアリング企業、「壽環境機材株式会社」に焦点を当てます。「地球環境保全に貢献する」を理念に、水処理技術を核として、鉄道車両の洗浄装置などユニークな分野にも事業を広げる同社は、どのような経営を行っているのか。第49期決算公告から、その財務の健全性と事業の強みに迫ります。

壽環境機材決算

 

【決算ハイライト(第49期)】
資産合計: 2,632百万円 (約26.3億円)
負債合計: 1,036百万円 (約10.4億円)
純資産合計: 1,595百万円 (約16.0億円)

当期純利益: 35百万円 (約0.4億円)

自己資本比率: 約60.6%
利益剰余金: 1,552百万円 (約15.5億円)

まず決算数値で驚かされるのが、自己資本比率が約60.6%という、極めて健全で安定した財務基盤です。総資産約26.3億円に対し、負債を大きく上回る約16.0億円の純資産を有しており、外部環境の変化に対する高い耐性を持っています。さらに、資本金32百万円に対し、その48倍以上にもなる約15.5億円もの莫大な利益剰余金が積み上がっていることは、長年にわたり安定的に高収益を上げ続けてきた超優良企業の紛れもない証拠です。今期も35百万円の純利益を確保しており、盤石な経営基盤の上で、力強い事業運営がなされていることが明確に見て取れます。

企業概要
社名: 壽環境機材株式会社
設立: 1977年4月15日
事業内容: 大阪を拠点とする総合環境エンジニアリング企業。工場向けの用水・排水処理プラントのコンサルティング、設計、製作、施工、メンテナンスを主軸に、鉄道車両などの特殊な洗浄装置や、オイル吸着マットなどの環境製品も手掛ける。

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【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、45年以上の歴史で培った豊富な知識と経験を活かし、顧客の課題を解決する「トータルソリューション」の提供にあります。

✔水処理エンジニアリング事業
事業の中核です。化学工場、食品工場、電子部品工場など、様々な業種の工場から排出される排水の性質を分析し、その工場に最適な排水処理プラントを、コンサルティングから設計、製作、施工、そしてアフターメンテナンスまで一貫して提供します。加圧浮上設備、凝集沈殿設備、生物処理設備、ろ過設備など、あらゆる水処理技術を網羅。単に装置を販売するだけでなく、24時間監視システムや定例水質分析といった、運転管理も含めたトータルなサービスが強みです。

✔洗浄装置事業
同社のユニークさが際立つ事業です。特に、重要なインフラである鉄道車両の保守に欠かせない、車体や台車、部品等の洗浄装置のメーカーとして、高い実績を誇ります。特許を取得した「細泡混入洗浄法」など、独自開発の洗浄方式であらゆる部品の汚れを効率的に除去。鉄道関連だけでなく、自動車部品加工用治具の洗浄装置なども手掛けています。

✔環境関連製品・メンテナンス事業
オイル吸着マット「スーパーアタックシリーズ」や、水中の溶存ガスを除去する真空脱気装置(VC)といった、環境改善に貢献する自社製品の開発・販売も行っています。また、過去に納入した5,000件以上の設備のメンテナンスも重要な収益源となっており、長期的な視点で顧客と関係を築く、安定したストック型のビジネスモデルを構築しています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
世界的なSDGs(持続可能な開発目標)への関心の高まりは、同社の事業にとって強力な追い風です。企業の環境保全に対する社会的責任はますます重くなっており、排水の適正な処理や、水資源の有効活用(リサイクル)といった、環境インフラへの投資は今後も拡大が見込まれます。また、2022年に関西電力グループの総合設備企業である株式会社関電工と資本業務提携を締結しており、今後のエネルギー分野などでのシナジーも期待されます。

✔内部環境
同社のビジネスモデルは、顧客ごとに仕様が異なるプラントを設計・施工する「個別受注生産」が基本です。顧客の要望を深く理解し、最適なソリューションを提案する高度なエンジニアリング能力が、競争力の源泉となっています。また、多数の建設業許可(機械器具設置、土木、建築、管、水道施設など)や、二級建築士事務所登録も行っており、大規模で複雑なプラント工事も自社で一貫して管理できる総合力が強みです。

✔安全性分析
自己資本比率60.6%、利益剰余金約15.5億円という盤石の財務基盤は、経営の安定性を如実に物語っています。短期的な支払い能力を示す流動比率流動資産÷流動負債)も約239%と極めて高く、資金繰りにも全く懸念はありません。この鉄壁とも言える財務基盤があるからこそ、技術開発にじっくりと取り組み、顧客への長期的なメンテナンスサービスを保証することができるのです。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
自己資本比率60.6%を誇る、鉄壁の財務基盤。
・45年・5,000件以上の実績に裏打ちされた、水処理・環境分野での高い技術力とノウハウ。
・設計から施工、メンテナンスまで一貫して提供できる、トータルサポート体制。
・水処理プラント、洗浄装置、環境製品と、多角的な事業ポートフォリオによるリスク分散。
・関電工との資本業務提携による、事業拡大への期待。

弱み (Weaknesses)
・個別受注生産が主体であるため、大型案件の受注動向によって業績が変動する可能性がある。
・専門性の高い技術者の確保と育成が、事業継続の生命線となる。

機会 (Opportunities)
・企業のESG経営への意識向上に伴う、環境設備投資の拡大。
・工場の老朽化に伴う、水処理プラントの更新・リニューアル需要の増加。
半導体工場などで必要とされる、超純水製造設備などの高度な水処理技術へのニーズ。

脅威 (Threats)
・国内外のエンジニアリング会社との、技術・価格競争の激化。
・建設業界全体における、人手不足と労務費の高騰。
・景気後退による、企業の設備投資の冷え込み。


【今後の戦略として想像すること】
この事業環境と優れた財務状況を踏まえ、同社が今後どのような戦略を描いていくか、以下のように想像します。

✔短期的戦略
まずは、既存の顧客基盤を深耕し、メンテナンス事業をさらに強化していくでしょう。納入した設備の長期保守計画を立案し、安定したストック収益を積み上げることで、経営基盤をより盤石なものにします。また、鉄道車両洗浄で培った独自の洗浄技術を、航空機や船舶、あるいは半導体製造装置といった、他の分野へ横展開することも積極的に模索していくと考えられます。

✔中長期的戦略
「地球環境保全に貢献する企業」として、より上流のソリューションへと事業を展開していくことが期待されます。例えば、単に排水を処理するだけでなく、処理した水を工場内で再利用する「水リサイクルシステム」や、排水から有用な資源を回収する技術など、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に貢献する新たな事業の柱を育てていくのではないでしょうか。関電工とのシナジーを活かし、工場のエネルギー効率改善まで含めた、包括的な環境コンサルティングへと進化していく可能性も秘めています。


【まとめ】
壽環境機材株式会社の決算は、自己資本比率60%超、15億円を超える利益剰余金という、驚異的なまでの財務健全性を示していました。それは、45年以上にわたり、水と環境という社会の根幹をなす領域で、技術と真摯に向き合い、顧客からの信頼を積み重ねてきた歴史の結晶です。同社は単なる設備メーカーではありません。それは、汚れた水を浄化し、限りある水資源を守り、そしてクリーンな生産環境を創造する、まさに「環境のドクター」です。持続可能な社会の実現が世界の共通目標となる中、同社が果たす役割はますます大きくなっていくでしょう。これからも、確かな技術力で、日本の、そして地球の美しい未来を支え続けていくことが期待されます。


【企業情報】
企業名: 壽環境機材株式会社
所在地: 大阪市北区天満1丁目19番4号 センチュリーパーク東天満8階
設立: 1977年4月15日
代表者: 小山 富士夫
資本金: 3,200万円
事業内容: 各種水処理設備(用水・排水)、各種洗浄装置、オイル吸着マット等環境関連製品のコンサルティング、設計、製作、施工、メンテナンス

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