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#2395 決算分析 : 株式会社アバンセライフサポート 第21期決算 当期純利益 35百万円

超高齢社会、そして誰もが自分らしく生きる共生社会へ。現代の日本が目指す社会の姿を実現するためには、高齢者、障害を持つ方、そして未来を担う子どもたちまで、あらゆる人々が地域社会の中で安心して暮らせるための「セーフティネット」が不可欠です。この複雑で多岐にわたる福祉の課題に対し、介護、障害者支援、保育、さらには人材サービスまでを包括的に手掛け、地域社会の課題解決に真正面から挑む企業があります。それが、愛知県一宮市に本社を構える「株式会社アバンセライフサポート」です。「地域と連携し社会の課題を正面から見つめ、解決する会社を目指します」という力強いメッセージを掲げる同社は、どのような経営を行っているのか。第21期決算公告から、その事業の広がりと財務状況を読み解きます。

アバンセライフサポート決算

【決算ハイライト(第21期)】
資産合計: 1,542百万円 (約15.4億円)
負債合計: 1,271百万円 (約12.7億円)
純資産合計: 271百万円 (約2.7億円)

当期純利益: 35百万円 (約0.3億円)

自己資本比率: 約17.6%
利益剰余金: 177百万円 (約1.8億円)

まず注目すべきは、35百万円の当期純利益を確保し、着実な経営を行っている点です。介護・福祉業界が深刻な人手不足やコスト増といった課題に直面する中で、安定した収益を上げていることは、同社の高い運営能力を示しています。自己資本比率は約17.6%と、多くの施設を運営し設備投資や賃借料などが嵩む事業としては標準的な水準です。資本金50百万円に対し、その3倍以上となる約1.8億円の利益剰余金を積み上げており、設立以来、堅実に成長を続けてきたことがうかがえます。

企業概要
社名: 株式会社アバンセライフサポート
設立: 2005年4月
事業内容: 愛知県を中心に東海、福岡、関東甲信越で、高齢者介護、障害者支援、保育、人材サービス、セキュリティ(警備・清掃)など、福祉領域を包括的にカバーする総合ライフサポート企業。

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【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、人生の様々なステージで必要とされるサポートを、ワンストップで提供する極めて多角的なポートフォリオで構成されています。

✔高齢者向けサービス
事業の中核です。愛知・岐阜・三重の東海エリアを中心に、福岡、長野、山梨まで広範な地域で、多様な高齢者向け施設を運営しています。
・施設介護:住宅型有料老人ホーム「四季彩」「ハピネス」シリーズや、サービス付き高齢者向け住宅認知症対応型グループホーム「こころ」シリーズ、そして医療的ケアが充実した「ナーシングホーム」まで、利用者の状態やニーズに合わせて選べる多彩な「住まい」を提供。
・在宅介護:デイサービス、訪問介護訪問看護、居宅介護支援(ケアプラン作成)、福祉用具貸与・販売と、在宅生活を支えるあらゆるサービスを網羅しています。

✔障害者向けサービス
高齢者福祉で培ったノウハウを活かし、障害を持つ方々の自立支援にも力を入れています。共同生活を営む「障害者グループホーム」や、日中の活動の場となる「地域活動支援センター」、そして障害のある児童の成長を支える「児童発達支援」「放課後等デイサービス」まで、幅広い年代の障害者をサポートする体制を構築しています。

✔保育サービス・人材サービス・その他
地域の待機児童問題に応える「保育サービス」や、介護業界の最大の課題である人手不足を解決するための「人材サービス」(紹介・派遣)も手掛けています。自社で「ケアスクール」を運営し、介護職員初任者研修などを通じて人材を育成し、自社施設や他の介護事業者へ供給するという、採用と育成の好循環を生み出しています。さらに、施設の安全を守る「セキュリティ(警備・清掃)」事業も展開し、文字通り包括的なサポート体制を築いています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
同社が事業を展開する介護・福祉市場は、高齢化と社会保障制度を背景に、今後も安定的な需要が見込まれる成長市場です。一方で、介護報酬・障害福祉サービス等報酬の改定が収益に直接影響を与えるほか、業界全体で人材獲得競争が激化しており、人件費は上昇傾向にあります。いかにして質の高い人材を確保し、定着させ、生産性を向上させるかが、持続可能な経営の鍵となります。

✔内部環境
同社のビジネスモデルは、多様なサービスを組み合わせることで、地域内でのシェアを高め、利用者一人あたりの生涯価値(LTV)を最大化する「ドミナント戦略」と「ポートフォリオ戦略」の融合です。例えば、デイサービスの利用者が、将来的に有料老人ホームへ入居したり、訪問看護を利用したりと、ライフステージの変化に応じてグループ内のサービスを継続的に利用することが可能です。また、介護、障害、保育と、異なる報酬制度の事業を組み合わせることで、特定の制度改定によるリスクを分散させています。

✔安全性分析
自己資本比率17.6%という数値は、多くの不動産を賃借して運営する事業モデルとしては、標準的な範囲内です。短期的な支払い能力を示す流動比率流動資産÷流動負債)は約158%と100%を大きく上回っており、当面の資金繰りには問題ありません。利益剰余金が着実に積み上がっていることから、生み出した利益を内部に留保し、新たな施設展開や新規事業への再投資を行うという、堅実な成長サイクルが確立されていることがうかがえます。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・高齢者介護から障害者・児童福祉、人材育成までを網羅する、極めて包括的な事業ポートフォリオ
・東海エリアを中心に、関東、九州へと広がる広範な事業ネットワークと、各地域でのドミナント戦略
・自社で人材を育成し、供給できる「ケアスクール」と「人材サービス」の存在。
・着実に利益を積み上げてきた、安定した収益力と経営手腕。

弱み (Weaknesses)
・介護・福祉業界全体に共通する、深刻な人材不足と高い離職率のリスク。
多角化している分、経営資源が分散し、各事業での専門性が大手専業他社に比べて挑戦を受ける可能性がある。

機会 (Opportunities)
団塊の世代後期高齢者となる「2025年問題」以降の、介護需要の爆発的な増加。
障害者雇用の促進や、インクルーシブな社会の実現に向けた、障害福祉サービスの需要拡大。
・介護とテクノロジーを融合させた「介護テック」の導入による、生産性向上の可能性。

脅威 (Threats)
・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のマイナス改定による、収益の圧迫リスク。
・介護人材の獲得競争の激化と、それに伴う人件費のさらなる高騰。
・近隣エリアへの、他の大手介護事業者の進出による競争激化。


【今後の戦略として想像すること】
この事業環境と財務状況を踏まえ、同社が今後どのような戦略を描いていくか、以下のように想像します。

✔短期的戦略
最重要課題である人材の確保・定着のため、自社の「ケアスクール」と「人材サービス」を最大限に活用していくでしょう。育成した人材を自社施設で雇用し、キャリアパスを提示することで定着率を高め、さらに外部の介護事業者にも人材を供給することで、地域全体の介護人材不足の解消に貢献するという、好循環モデルを強化していくと考えられます。

✔中長期的戦略
「社会の課題を正面から見つめ、解決する」という理念に基づき、既存の枠組みを超えた新たなソーシャルビジネスへの挑戦が期待されます。例えば、高齢者施設と保育所を合築した「多世代交流拠点」の運営や、障害を持つ方々が活躍できる新たな就労の場を創出する事業などが考えられます。介護・福祉・保育・人材という、暮らしを支える事業を多角的に手掛ける同社だからこそ、これらの社会課題を複合的に解決する、新たなソリューションを生み出せるのではないでしょうか。


【まとめ】
株式会社アバンセライフサポートの決算は、厳しい経営環境の介護・福祉業界において、多角的な事業ポートフォリオを武器に着実な利益を確保し、安定成長を続ける優良企業の姿を映し出すものでした。同社は単なる介護施設の運営会社ではありません。それは、高齢者から障害者、そして子どもたちまで、地域に暮らすあらゆる人々のライフステージに寄り添い、必要なサポートを包括的に提供する、まさに「社会のセーフティネット」そのものです。これからも、地域社会が抱える複雑な課題に対し、複合的なサービスで答えを出し、多くの人々の豊かな暮らしを支え続けていくことが期待されます。


【企業情報】
企業名: 株式会社アバンセライフサポート
所在地: 愛知県一宮市新生3丁目9番1号
設立: 2005年4月
代表者: 林 隆春
資本金: 5,000万円
事業内容: 介護サービス(有料老人ホーム、グループホーム、デイサービス、訪問介護等)、障害者福祉サービス、保育サービス、人材サービス、セキュリティ等の運営

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