決算データ倉庫

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#857 名古屋ヒルトン株式会社 第39期決算 当期純利益 518百万円

名古屋の国際的なビジネスと文化の中心地、伏見にそびえ立つ「ヒルトン名古屋」。その運営を担う名古屋ヒルトン株式会社の第39期(2024年12月期)決算公告が、令和7年3月26日付の官報に掲載されました。本記事では、その決算内容を分析するとともに、同社の強固なビジネスモデルと名古屋のホテル市場における展望を考察します。 

20241231_39_名古屋ヒルトン決算

第39期 決算のポイント(単位:百万円)
売上高: 6,030 (約60.3億円)
営業利益: 424 (約4.2億円)
当期純利益: 518 (約5.2億円)


資産合計: 4,306 (約43.1億円)
純資産合計: 3,046 (約30.5億円)
利益剰余金: 2,046 (約20.5億円)


第39期決算は、売上高約60.3億円、当期純利益約5.2億円という非常に好調な結果となりました。これは、コロナ禍からの経済活動の正常化、円安を追い風としたインバウンド需要の力強い回復、そしてジブリパーク開業などで注目を集める国内観光の活況を的確に捉えた成果と言えるでしょう。純資産は約30.5億円、中でも利益剰余金が約20.5億円と潤沢に積み上がっており、盤石な財務基盤を築いていることがうかがえます。 

事業内容とビジネスモデルの考察


【事業内容の概要】
名古屋ヒルトン株式会社は、1989年3月に開業した名古屋を代表する国際的ラグジュアリーホテル「ヒルトン名古屋」の運営会社です。名古屋の中心、広小路通に面した地上28階建ての建物に、全460室の客室、大小20の宴会場、そして多彩なレストラン&バーを備えています。

 

特に、同ホテルの食へのこだわりは顧客から高い評価を得ています。

 

インプレイス 3-3:

ライブ感あふれるキッチンが魅力のオールデイダイニング。特に、テーマが定期的に変わるスイーツビュッフェは、SNSでも常に話題を集める同ホテルの「顔」ともいえる存在です。


王朝:

本格的な広東料理を提供する中国料理レストラン。


源氏:

鉄板焼、会席、寿司、天ぷらを一つの空間で楽しめる日本料理店。


これらの施設を通じて、国内外のビジネス客、観光客、そして地元の顧客による記念日利用まで、幅広いニーズに応える高品質なサービスを提供しています。

 

【財務諸表から読み解く強固なビジネスモデル】
今回の決算で注目すべきは、貸借対照表(B/S)の構造です。ヒルトン名古屋という大規模なホテルにもかかわらず、運営会社である名古屋ヒルトン株式会社の総資産は約43.1億円に留まっています。これは、同社がホテル業界で主流となっている「所有と経営の分離」というビジネスモデルを採用していることを明確に示しています。

 

ヒルトン名古屋の建物・土地の所有者はAMMNAT企業共同体(朝日新聞社明治安田生命など)です。名古屋ヒルトン株式会社は、ホテル資産を直接所有するのではなく、ヒルトングループが長年培ってきた世界最高水準のホテル運営ノウハウ、ブランド力、予約システム、そして人材育成プログラムを提供し、運営を受託するホテル運営会社(オペレーター)に特化しています。

 

このモデルのメリットは絶大です。

 

リスクの低減:

巨額の不動産投資や資産維持コストのリスクを負うことなく、運営に集中できます。


高い資本効率:

少ない自己資本で大規模な事業を展開でき、高いROE自己資本利益率)を実現しやすくなります。


専門性の追求:

サービスの品質向上という本業に経営資源を集中投下できます。


積み上がった約20.5億円の利益剰余金は、この効率的で安定したビジネスモデルが35年以上にわたって成功裏に機能してきた何よりの証拠と言えるでしょう。

 

市場環境と今後の展望・課題
名古屋エリアは、リニア中央新幹線の開業を見据え、駅前や栄地区で大規模な再開発が進んでいます。ホテルの開業ラッシュも続き、市場競争は今後ますます激化することが予想されます。

 

このような環境下で、ヒルトン名古屋が競争優位性を保ち続けるための鍵は以下の点にあると考えられます。

 

圧倒的なブランド力:

ヒルトン」という名は、国内外の旅行者にとって安心と信頼の証です。特に回復が著しいインバウンド富裕層にとって、第一の選択肢となり得ます。


歴史と顧客基盤:

1989年の開業以来、ビジネスや観光の拠点として、またプロ野球チームの定宿として利用されるなど、長年にわたり築き上げてきた顧客との信頼関係は大きな財産です。


卓越したサービスと人材:

競争が激化するほど、最終的な差別化要因は「人」になります。ヒルトングループ共通のバリューである「HOSPITALITY(おもてなし)」を、現場のスタッフ一人ひとりが体現し、顧客に特別な体験を提供し続けられるかが問われます。


今後の課題は、サービス業全体が直面する人手不足の中で、いかにして優秀な人材を確保し、育成していくかという点に尽きます。また、競争力を維持するためには、時代のニーズに合わせた客室や施設の継続的なリニューアル投資も不可欠です。

 

好調なインバウンド需要を追い風に、その盤石なビジネスモデルとブランド力を最大限に活用し、名古屋を代表するリーディングホテルとしての地位をさらに強固なものにできるか。名古屋ヒルトン株式会社の今後の戦略に注目が集まります。

 

企業情報
企業名: 名古屋ヒルトン株式会社
所在地: 愛知県名古屋市中区栄一丁目3番3号
代表者: 中村康人
事業内容: 世界的なホテルブランド「ヒルトン」を冠する「ヒルトン名古屋」の運営。宿泊、レストラン、宴会、ウェディング事業などを通じ、国内外のゲストに高品質なホスピタリティサービスを提供。

nagoya.hiltonjapan.co.jp