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#1188 決算分析 : ケイミュー株式会社 第55期決算 当期純利益 152百万円


私たちが暮らす家。その印象を決め、雨風や地震から家族を守る「屋根」と「外壁」。これらは住まいの顔であり、鎧でもあります。この住宅の外装材という分野で、「クボタ」の素材技術と「パナソニック」の住建技術という、二つの巨人のDNAを受け継ぎ、屋根・外壁・雨といをトータルで扱う国内唯一の企業が存在します。
今回は、住宅外装材のトップメーカー、ケイミュー株式会社の決算を読み解きます。その決算書から見えてきたのは、1,000億円に迫る売上規模とは裏腹の厳しい利益構造と、それをものともしない鉄壁の財務基盤。日本の住まいを支えるガリバー企業の、知られざる現状と未来への展望に迫ります。

ケイミュー株式会社決算

決算ハイライト(第55期)

資産合計: 70,452百万円 (約705億円)
負債合計: 21,157百万円 (約212億円)
純資産合計: 49,294百万円 (約493億円)


売上高: 97,635百万円 (約976億円)
当期純利益: 152百万円 (約1.5億円)


自己資本比率: 約69.9%
利益剰余金: 40,517百万円 (約405億円)

 

まず注目すべきは、その財務の圧倒的な健全性です。自己資本比率は約69.9%と極めて高く、資本金80億円に対して利益剰余金が約405億円と、巨額の内部留保を誇ります。一方で、売上高が約976億円という巨大な規模でありながら、当期純利益は約1.5億円。この「高い安定性」と「低い利益率」という対照的な数字に、同社が置かれた現状と強さの秘密が隠されています。

 

企業概要

社名: ケイミュー株式会社
設立: 2003年12月1日
株主: クボタ株式会社、パナソニック ホールディングス株式会社
事業内容: 住宅用外装建材(屋根材、外壁材、雨とい)の製造、販売

www.kmew.co.jp

 

【事業構造の徹底解剖】

ケイミューは、クボタと松下電工(現パナソニック)の外装建材事業を統合して誕生した、サラブレッド企業です。その事業は、日本の住宅を守る3つの柱で構成されています。

✔屋根材事業:圧倒的シェアを誇るトップランナー
軽量で地震の揺れを軽減する「ROOGA」や、約60年の歴史を持つロングセラー「カラーベスト」などを擁し、セメント系屋根材では9割超という圧倒的なトップシェアを誇ります。日本の住宅の安全・安心を、文字通りその屋根から支えている、同社の中核事業です。

✔外壁材事業:光触媒技術で美しさが続く
主力商品である窯業系サイディングでは、独自の「光セラ」技術が強みです。太陽の光で汚れを分解し、雨で洗い流すセルフクリーニング機能を持つ光触媒の壁は、住宅の美しさを長く保ち、メンテナンスの手間を軽減します。数々のグッドデザイン賞を受賞した「SOLIDO」シリーズなど、デザイン性の高い製品開発力も特徴です。

✔雨とい事業:「家一棟」をまるごと提案
パナソニックから商品供給を受け、雨といを販売。これにより、屋根・外壁・雨といという外装全体を、色やデザインを統一してトータルで提案できることが、他社にはない国内唯一の強みとなっています。

 

【財務状況等から見る経営戦略】

✔外部環境
国内の新設住宅着工戸数は長期的に減少傾向にあり、市場環境は厳しさを増しています。一方で、頻発する自然災害への備えとして、防災・減災性能(軽量性、耐火性など)を持つ建材へのニーズは高まっています。また、原材料やエネルギー価格の高騰は、製造業である同社にとって大きなコストアップ要因となっています。

✔内部環境
クボタとパナソニックという二大企業を親会社に持つことは、技術開発力、生産力、そして販売網において絶大なバックボーンとなっています。圧倒的な市場シェアは高いブランド認知度を意味しますが、今回の決算で示された極めて低い利益率は、建材業界の厳しい価格競争や、コスト上昇分を製品価格へ十分に転嫁できていない現状を浮き彫りにしています。

✔安定性分析
売上高約976億円に対し、純利益約1.5億円。利益率にしてわずか0.16%。この数字だけを見れば、経営は非常に厳しいように見えます。しかし、貸借対照表に目を転じると、様相は一変します。自己資本比率約70%、約405億円の利益剰余金。これは、並の企業では考えられないほどの、強固で盤石な財務基盤です。
この「低い利益率」と「高い安定性」の共存こそが、ケイミューの真の姿です。親会社から受け継いだ巨大な資産と、長年の歴史で蓄積した利益が、いわば堅牢な「城壁」となり、厳しい市況やコスト高という外部からの攻撃をものともせず、どっしりと構えることを可能にしています。短期的な利益に一喜一憂せず、長期的な視点で研究開発や設備投資を続けられる体力こそが、同社の最大の強みなのです。

 

SWOT分析で見る事業環境】

強み (Strengths)
・クボタとパナソニックという、二大企業を親会社に持つ技術力と信用力
・屋根材、外壁材、雨といを総合提案できる、国内唯一の事業モデル
・セメント系屋根材で9割超の圧倒的な市場シェアと、高いブランド認知度
自己資本比率70%に迫る、極めて盤石な財務基盤

弱み (Weaknesses)
・当期の利益率が極めて低く、コスト増を価格に転嫁しきれていない可能性
・事業が国内の新築戸建住宅市場に大きく依存している

機会 (Opportunities)
・頻発する自然災害を受けた、防災・減災意識の高まり(軽量屋根材などへの需要)
・住宅の長寿命化志向による、高耐候性・メンテナンスフリー外装材への需要増
・リフォーム市場や、非住宅(店舗、施設など)市場への事業拡大

脅威 (Threats)
・セメントや樹脂など、原材料価格のさらなる高騰
・国内の新設住宅着工戸数の、長期的な減少トレンド
・他素材(金属系など)の外装材メーカーとの競争激化

 

【今後の戦略として想像すること】

「未来を、いま、選ぼう」というタグラインのもと、同社は現状に甘んじることなく、新たな市場への挑戦を加速させていくでしょう。

✔短期的戦略
利益構造の改善が急務となります。生産プロセスのさらなる効率化や、光セラシリーズのような高付加価値製品の販売比率を高めることで、収益性の向上を図っていくと考えられます。

✔中長期的戦略
社長メッセージにもある通り、縮小する新築戸建市場への依存から脱却し、「リフォーム市場」と「非住宅市場」、そして「海外市場」への展開を本格化させていくことが予想されます。リフォームでは、既存の壁の上から施工できる軽量外壁材などを、非住宅では、店舗や施設向けの意匠性の高い内外装材を提案。海外では、ロシアなどで実績のある耐凍害性の高い製品などを武器に、日本の住まいづくりの品質を世界へ広げていくことが期待されます。

 

まとめ

ケイミュー株式会社は、住宅外装材市場の「巨人」でありながら、その巨体故に、厳しい市場環境の中で利益を出すことに苦心している姿が垣間見えました。しかし、その足元には、二大企業から受け継いだ資産と技術、そして長年の歴史で築き上げた、揺るぎない財務という名の城壁があります。
目先の利益は少なくとも、その体力は未来への投資を可能にします。防災、長寿命、環境配慮という社会の要請に応える製品を開発し、新たな市場へ果敢に挑戦していくことで、ケイミューはこれからも日本の、そして世界の住環境をリードし続けていくことでしょう。

 

企業情報

企業名: ケイミュー株式会社
所在地: 大阪市中央区城見1丁目2番27号 クリスタルタワー13F
代表者: 代表取締役 社長 木村 均
設立: 2003年12月1日
資本金: 80億円
事業内容: 住宅用外装建材(屋根材、外壁材、雨とい)の製造、販売
株主: クボタ株式会社、パナソニック ホールディングス株式会社

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