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#1098 株式会社八ヶ岳高原ロッジ 第44期決算 当期純利益 38百万円

株式会社八ヶ岳高原ロッジは、標高1,500m、八ヶ岳雄大な自然に抱かれた「海の口自然郷」に佇む、伝統と格式あるリゾート施設です。1982年の設立以来、ホテルの運営を中核としながら、隣接する八ヶ岳高原音楽堂でのコンサート、別荘地の管理・販売、建築までを手掛け、都会の喧騒を離れた上質な時間と空間を提供し続けています。


株式会社八ヶ岳高原ロッジの第44期(令和7年2月28日現在)の決算公告が、令和7年6月13日付の官報に掲載されましたので、その概要と事業の展望について分析します。

20250228_44_八ヶ岳高原ロッジ決算

第44期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 416百万円 (約4.2億円)

負債合計: 279百万円 (約2.8億円)

純資産合計: 137百万円 (約1.4億円)

当期純利益: 38百万円 (約0.4億円)

 

今回の決算では、当期純利益として38百万円(約0.4億円)を計上し、安定した収益力を示しています。資産合計は約4.2億円、負債合計は約2.8億円に対し、純資産合計は約1.4億円となっており、自己資本比率は約32.9%です。

特筆すべきは、利益剰余金が16百万円(約0.2億円)とプラスを維持している点です。コロナ禍を経て、観光・宿泊業界が大きな影響を受ける中、着実に利益を確保し、株主資本を積み上げていることは、同社の持つブランド力と、顧客からの根強い支持の表れと言えるでしょう。この安定した経営基盤が、八ヶ岳の豊かな自然環境を守りながら、上質なサービスを提供し続ける礎となっています。

事業内容と今後の展望(考察)


【事業内容の概要】
株式会社八ヶ岳高原ロッジの事業は、単なる宿泊施設の運営に留まらず、八ヶ岳の自然と文化を体験する「滞在型リゾート」という、より大きな価値を提供することに主眼が置かれています。

ホテル・レストラン事業:
事業の中核であり、67室の客室と2つのレストラン(メインダイニング「ル・プラトー」、カジュアルレストラン「花暦」)を擁します。天然木の温もりを感じるロビーやラウンジ、そして窓外に広がる雄大な自然が、訪れる人々に非日常の癒やしを提供します。

音楽・文化事業:
リゾート内に「八ヶ岳高原音楽堂」という本格的なコンサートホールを併設している点が、同社の最大の特色です。国内外の一流アーティストによるコンサートを年間通じて開催しており、「音楽」という付加価値が、他のリゾートホテルとの明確な差別化要因となっています。また、陶芸工房なども備え、滞在中に多様な文化活動に触れる機会を提供しています。

別荘管理・不動産事業:
ホテル周辺に広がる「海の口自然郷」の別荘地の管理、不動産の販売・仲介、さらには建築請負までを手掛けています。これにより、短期滞在の観光客だけでなく、八ヶ岳での暮らしを求める長期滞在者や定住者という、より深い関係性を持つ顧客層を取り込んでいます。宅地建物取引業と建設業の免許を保有している点は、この事業に対する同社の本気度を示しています。

 

【財務状況と今後の展望・課題】
第44期決算で38百万円の純利益を確保できた背景には、コロナ禍からの回復に伴う国内旅行需要の力強い復調と、同社が長年かけて築き上げてきた独自性の高いブランドイメージがあると推察されます。

八ヶ岳の自然」と「本格的なクラシック音楽」という二つの要素を掛け合わせたリゾート体験は、唯一無二の魅力を放ち、物価高の中でも本質的な価値を求める顧客層を惹きつけています。特に、音楽堂の存在は、リピーターの獲得や、宿泊以外の収益源として、経営の安定に大きく貢献していると考えられます。

また、別荘事業は、ホテル事業の収益を補完し、安定させる役割を担っています。コロナ禍を機に、都市部から地方への移住や二拠点生活への関心が高まったことは、同社の別荘事業にとって追い風となった可能性があります。ホテル利用者の中から将来の別荘オーナーが生まれるという、相乗効果も期待できます。

今後の成長に向けた課題としては、第一に「施設の老朽化対策と戦略的リニューアル」が挙げられます。歴史ある施設はその魅力の源泉である一方、維持管理には相応のコストがかかります。どこを残し、どこを新しくするのか、ブランドイメージを損なわない慎重な投資判断が求められます。

第二に、「次世代の顧客層の開拓」です。伝統と格式を重んじる一方で、新しい世代の価値観にも対応していく必要があります。SNSを活用した情報発信の強化や、ワーケーション需要に応えるための通信環境の整備(既に全館Wi-Fi対応済み)、アクティビティの拡充などが考えられます。EV充電スタンドの設置は、環境意識の高い顧客層へのアピールとして有効な一手です。

 

株式会社八ヶ岳高原ロッジは、単なる宿泊施設ではなく、訪れる人々の心に深く刻まれる「記憶」と「文化」を創造する場所です。これからも、八ヶ岳の豊かな自然という不変の価値を核としながら、時代の変化にしなやかに対応していくことで、その輝きを増していくことでしょう。その洗練された経営手腕に、今後も注目が集まります。

 

企業情報
企業名: 株式会社八ヶ岳高原ロッジ

所在地: 長野県南佐久郡南牧村海ノ口2244番地1

代表者: 山本 俊祐

事業内容: 八ヶ岳の自然郷におけるホテル・レストラン運営を中核に、八ヶ岳高原音楽堂でのコンサート事業、別荘地の管理・不動産販売・仲介、建築請負事業などを展開。

www.yatsugatake.co.jp