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#3923 決算分析 : 株式会社企業評価総合研究所 第10期決算 当期純利益 184百万円

会社の値段は、いくら?― 上場企業であれば株価という明確な指標がありますが、日本に数百万社と存在する未上場の中小企業にとって、自社の価値を客観的に知ることは容易ではありません。特に、事業承継やM&Aという会社の未来を左右する局面において、この「企業価値」の算定は、円滑な取引の礎となる極めて重要なプロセスです。

今回は、この難題に挑む、M&Aにおける企業評価の専門家集団、株式会社企業評価総合研究所の決算を読み解きます。M&A仲介最大手である日本M&Aセンターグループの頭脳として、中小企業M&Aマーケットのインフラを担う同社の、驚異的な収益性と事業戦略に迫ります。

企業評価総合研究所決算

【決算ハイライト(10期)】
資産合計: 648百万円 (約6.5億円)
負債合計: 274百万円 (約2.7億円)
純資産合計: 374百万円 (約3.7億円)
当期純利益: 184百万円 (約1.8億円)
自己資本比率: 約57.8%
利益剰余金: 354百万円 (約3.5億円)

【ひとこと】
純資産3.7億円に対し、当期純利益が1.8億円と、自己資本に対して極めて高い収益率を達成しています。自己資本比率も57.8%と非常に高く、財務基盤は盤石です。設立10期目にして利益剰余金が3.5億円以上積み上がっており、専門性の高いサービスがいかに高い価値を生んでいるかを示す、傑出した決算内容です。

【企業概要】
社名: 株式会社企業評価総合研究所
設立: 2016年
株主: 株式会社日本M&Aセンターホールディングス(100%)
事業内容: 日本M&Aセンターグループの企業評価(バリュエーション)専門会社として、中堅・中小企業のM&Aにおける中立的な企業評価・事業分析を手掛ける。20,000件を超える国内最大級のM&A成約事例データベースを強みとする。

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【事業構造の徹底解剖】
株式会社企業評価総合研究所の事業は、中小企業M&Aマーケットの健全な成長に不可欠な「客観的なモノサシ」を提供することにあります。

✔企業評価(バリュエーション)事業
同社の中核事業です。親会社である日本M&Aセンターが手掛けるM&A案件において、対象企業の株式価値や事業価値を、専門家として中立的な立場で算定します。公認会計士などの専門家が、財務データだけでなく事業内容や将来性までを詳細に分析し、レポートを作成。これは、譲渡企業・譲受企業の双方が納得して取引を進めるための、羅針盤のような役割を果たします。累計20,000件を超える圧倒的な評価実績が、その信頼性を裏付けています。

✔中小企業M&A取引事例法の確立
同社が目指す、より大きなミッションです。これまでブラックボックスになりがちだった未上場企業のM&A価格に対し、日本M&Aセンターが持つ膨大な成約事例データを分析・データベース化。これにより、業種や規模、地域といった様々な特徴に応じた「相場観」を確立しようとしています。これは、不動産取引において近隣の取引事例が価格の参考になるのと同様に、中小企業のM&Aにおいても客観的な指標を整備する画期的な取り組みです。

✔企業評価システム「V-Compass」の開発・提供
蓄積したノウハウを、金融機関などが利用できる企業評価システム「V-Compass」として提供しています。これにより、同社の知見を広く社会に還元するとともに、新たな収益源を確立。中小企業M&Aのインフラとしての役割を強化しています。


【財務状況等から見る経営戦略】
設立からわずか10年で築き上げた強固な財務基盤の背景を探ります。

✔外部環境
後継者不足を背景に、中小企業のM&Aは年々増加しており、マーケットは拡大の一途をたどっています。それに伴い、M&Aの当事者が安心して取引に臨むための、信頼できる第三者による公正な企業評価へのニーズは非常に高まっています。

✔内部環境
同社の最大の競争優位性は、親会社である日本M&Aセンターから提供される、20,000件超の「成約事例データ」という唯一無二の資産です。これは、他のいかなる評価機関も持ち得ない情報であり、評価の精度と説得力を担保する強力な武器となっています。また、同社の事業は、高度な専門知識を持つ「人」と「データ」が資本であり、多額の設備投資を必要としない高収益なビジネスモデルです。

✔安全性分析
貸借対照表は、知的サービス企業の理想的な姿を示しています。総資産約6.5億円に対し、純資産が約3.7億円。自己資本比率は57.8%と非常に高く、無借金経営に近い極めて健全な財務体質です。資本金1,000万円に対し、利益剰余金が3.5億円以上と、設立以来、驚異的なスピードで利益を蓄積してきたことがわかります。当期も1.8億円という高い純利益を計上しており、財務的な安定性は盤石です。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・日本M&Aセンターの20,000件超の成約事例データベースへの独占的なアクセス
M&A評価における国内トップクラスの実績とブランド力
・親会社との強力なシナジーと安定した案件供給
自己資本比率50%超の高い収益性と、盤石な財務基盤

弱み (Weaknesses)
・事業が親会社である日本M&Aセンターの案件数に大きく依存する
・高度な専門性を持つ人材の採用・育成が常に課題

機会 (Opportunities)
・事業承継ニーズの拡大に伴う、M&A市場全体の成長
・企業評価システム「V-Compass」の金融機関などへの拡販
・蓄積されたデータを活用した、新たな情報サービスや指標提言

脅威 (Threats)
・大手監査法人系ファームや他のM&A仲介会社との競争
・景気後退によるM&A市場の停滞
・AIによる企業評価サービスの台頭


【今後の戦略として想像すること】
M&Aの「評価インフラ」としての地位を、さらに不動のものにしていくでしょう。

✔短期的戦略
引き続き、日本M&Aセンターの案件評価を通じて、データベースのさらなる拡充と分析モデルの精緻化を進めます。同時に、企業評価システム「V-Compass」の導入先を地方銀行や信用金庫へと拡大し、日本全国の中小企業M&Aのスタンダードを築いていくことが考えられます。

✔中長期的戦略
蓄積された膨大なデータを活用し、公的な統計データとしても価値のある、業種別のM&A動向や株価指標などをレポートとして発表していく可能性があります。これにより、中小企業M&Aマーケット全体の透明性向上に貢献し、政策提言なども行う「シンクタンク」としての役割を担っていくことが期待されます。


【まとめ】
株式会社企業評価総合研究所は、単なるコンサルティング会社ではありません。それは、日本の未来を左右する中小企業のM&Aという巨大な市場に、「客観性」と「透明性」という光を当てる、社会的なインフラを構築する企業です。その心臓部には、日本M&Aセンターが持つ、他に類を見ない膨大な成約事例データベースがあります。

1.8億円という高い純利益と、57.8%という健全な自己資本比率は、同社が提供する「中立的な企業評価」という価値が、市場でいかに強く求められているかを明確に示しています。これからも、M&Aの当事者すべてが安心して未来への一歩を踏み出せるよう、信頼性の高い羅針盤を提供し続けることでしょう。


【企業情報】
企業名: 株式会社企業評価総合研究所
所在地: 東京都中央区日本橋室町一丁目9番12号
代表者: 能登 雄太
設立: 2016年4月1日
資本金: 1,000万円
事業内容: 中堅・中小企業M&Aにおける企業評価(株式価値算定 / 事業分析)、事例に基づく中小企業M&A取引事例法の確立と指標提言
株主: 株式会社日本M&Aセンターホールディングス(100%)

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