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#3557 決算分析 : 株式会社LHL 第7期決算 当期純利益 20百万円

人生100年時代、私たちは病気やケガ、老後の生活資金など、様々なリスクに備える必要があります。その強力な味方となるのが「保険」ですが、その種類はあまりにも多く複雑です。かつては保険会社の営業職員に勧められるまま加入するのが一般的でしたが、今や消費者は自らインターネットで情報を集め、複数の商品を比較検討し、来店型の「保険ショップ」で専門家のアドバイスを受けながら、主体的に選ぶ時代へと大きく変化しました。

この、保険流通の大きな地殻変動を、業界の頂点から牽引する巨大プレイヤーグループが存在します。それが、日本最大の生命保険会社である日本生命の傘下で、保険代理店事業を統括する「株式会社LHL」です。今回は、ライフサロンなどを束ねる、日本生命グループの保険代理店事業の司令塔である同社の決算を読み解きます。100億円を超える巨大な純資産の正体と、デジタルとリアルを融合させた先進的な戦略に迫ります。

LHL決算

【決算ハイライト(7期)】
資産合計: 11,130百万円 (約111.3億円)
負債合計: 701百万円 (約7.0億円)
純資産合計: 10,429百万円 (約104.3億円)

当期純利益: 20百万円 (約0.2億円)

自己資本比率: 約93.7%
利益剰余金: ▲150百万円 (約▲1.5億円)

【ひとこと】
自己資本比率が93.7%と極めて高く、財務基盤は鉄壁です。約105億円という巨大な資本剰余金が特徴的で、親会社・日本生命からの大規模な出資を受けていることがわかります。利益剰余金はマイナスですが、設立7年の持株会社として、将来の成長に向けた先行投資の結果と推察されます。

【企業概要】
社名: 株式会社LHL
設立: 2018年11月9日
株主: 日本生命保険相互会社 (100%)
事業内容: 日本生命グループの保険代理店事業を統括する持株会社。「ライフサロン」「ほけんの110番」などを傘下に持ち、Webメディア運営とリアル店舗網を組み合わせたサービスを展開。

www.lhl.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
株式会社LHLは、単体の事業会社ではなく、グループ全体の戦略を司る司令塔としての機能と、独自のデジタル集客機能を併せ持つ、ユニークな存在です。

✔中核機能:「保険代理店グループ」の持株会社
LHLの最大の役割は、全国に店舗網を持つ「株式会社ライフサロン」「株式会社ライフプラザパートナーズ」「株式会社ほけんの110番」といった、有力な保険代理店を子会社として統括する持株会社(ホールディングス)であることです。これにより、日本生命グループとして、複数のブランドを持つ来店型保険ショップチャネルを全国に展開し、多様な顧客層に対して最適な保険コンサルティングを提供できる体制を構築しています。

✔デジタルの強力な集客エンジン:「Webメディア事業」
LHL自身が、複数の保険関連Webメディアを運営している点が、同社の戦略の核となっています。全国の保険ショップを検索・予約できるポータルサイト「保険相談ニアエル」や、保険商品を比較検討できる情報サイト「くらべる保険なび」などを通じて、オンラインで保険を検討している多くの潜在顧客を集客します。そして、そこで獲得した顧客を、傘下である全国の保険ショップリアル店舗)へと送客する。この、デジタル(Web)とリアル(店舗)を融合させた効率的な顧客獲得サイクルこそが、同社の最大の強みです。

日本生命グループとしての絶対的なバックボーン
日本最大の生命保険会社である日本生命保険の100%子会社であることが、事業のあらゆる面で強力な支えとなっています。業界のガリバーとしての圧倒的なブランド力と社会的信用、そして潤沢な資本力が、積極的な事業展開やM&A戦略を可能にしています。


【財務状況等から見る経営戦略】
今回の決算は、巨大資本を背景に、新たな成長モデルを構築する「投資フェーズ」にある企業の姿を映し出しています。

✔外部環境
保険代理店業界は、多数のプレイヤーがひしめく競争の激しい市場です。近年は、大手保険会社系列の代理店や、独立系の大型代理店による業界再編が進んでいます。消費者の情報収集手段がインターネット中心になる中で、オンラインでの集客力と、店舗での質の高い対面コンサルティング能力の両方を併せ持つことが、競争を勝ち抜く上での絶対条件となっています。

✔内部環境と収益性分析
当期純利益は20百万円と、その巨大な純資産に比して非常に小さい水準です。これは、LHLが持株会社として、傘下の子会社の成長基盤を構築するための先行投資を行っている段階であることを示唆しています。「保険相談ニアエル」などのWebメディアの開発・運営費用や、グループ全体のシステム投資、M&A関連費用などが重荷になっている可能性があります。グループ全体の利益は、傘下の事業会社(ライフサロンなど)で計上される事業構造です。

✔安全性分析
財務の安全性は、驚異的と言えるレベルです。自己資本比率は93.7%と、負債が極めて少なく、財務基盤は鉄壁です。特に注目すべきは、純資産約104億円のうち、その大半を占める約105億円が資本剰余金である点です。これは、親会社である日本生命からの大規模な出資(おそらくは子会社である保険代理店の買収資金など)があったことを明確に示しています。一方で、利益剰余金は▲1.5億円とマイナス(累積損失)ですが、これは設立(2018年)以来、前述のWebメディア開発やM&Aといった、グループの成長基盤を構築するための戦略的な先行投資が、これまでの収益を上回っているためと考えられます。盤石な資本を背景にした、未来のための「戦略的な赤字」と解釈できます。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
日本生命グループとしての、絶対的なブランド力、社会的信用力、そして潤沢な資本力
・ライフサロンなどを傘下に持つ、全国規模のリアルな保険ショップ(店舗)ネットワーク。
・自社運営のWebメディアによる強力なデジタル集客能力と、リアル店舗への送客モデルの確立。
自己資本比率93%超という、M&Aなどの大胆な戦略を可能にする、極めて強固で安定した財務基盤。

弱み (Weaknesses)
・2018年設立と歴史が浅く、持株会社としてグループ全体のシナジーを最大化していく、まだ発展途上の段階にあること。
・利益剰余金がマイナスであり、グループ全体としてはまだ「投資フェーズ」から「収穫フェーズ」への移行が課題であること。

機会 (Opportunities)
・「人生100年時代」を背景とした、個人の資産形成や介護、老後資金に関する、より専門的な保険コンサルティングへのニーズの増加。
・国内の保険代理店業界における、さらなるM&Aによる事業規模拡大の機会。
フィンテック(InsurTech)の活用による、オンラインでの保険契約プロセスのさらなる効率化や、データに基づいた新たな保険サービスの開発可能性。

脅威 (Threats)
・来店型保険ショップの草分けである「ほけんの窓口」グループをはじめとする、他の大手保険代理店グループとの厳しい顧客獲得競争。
・ネット専業の保険代理店や、AIを活用した保険アドバイスサービスといった、新たな競合の台頭。
保険業法などの規制強化が、販売手法や代理店手数料の体系に影響を与える可能性。


【今後の戦略として想像すること】
この圧倒的な資本力を背景に、LHLは日本の保険流通業界におけるプラットフォーマーを目指していくでしょう。

✔短期的戦略
まずは「Webとリアルの連携強化」が挙げられます。自社メディアで集客した顧客の情報を、傘下の代理店とシームレスに連携させ、来店時のコンサルティングの質を劇的に向上させるでしょう。オンラインでの事前相談から、店舗での最適なプランニングと契約まで、一貫した質の高い顧客体験を構築することで、顧客満足度と成約率の向上を図ります。

✔中長期的戦略
「総合金融プラットフォームへの進化」が期待されます。現在は保険が中心ですが、将来的には、日本生命グループが持つ資産運用商品(投資信託など)やローンといった、保険以外の金融サービスも紹介・仲介できるような、総合的な金融プラットフォームへと進化していく可能性があります。また、グループ全体の経営効率とサービス品質を高めるため、傘下の代理店各社で異なっている業務システムや顧客管理システム、研修プログラムの統合などを進めていくことも重要なテーマとなります。


【まとめ】
株式会社LHLの第7期決算は、自己資本比率93.7%、純資産104億円という、設立わずか7年の企業とは思えない、極めて盤石な財務基盤を浮き彫りにしました。その圧倒的な力の源泉は、言うまでもなく、親会社である日本生命からの強力な資本支援にあります。

LHLは、単なる保険代理店の集合体ではありません。それは、Webメディアで最新の情報を求めるデジタル世代の顧客を獲得し、その膨大な見込み客を、傘下にある全国のリアル店舗網へと繋げることで、保険流通の未来を創り出す「戦略的な司令塔」です。利益剰余金がまだマイナスであることは、同社が巨大な資本を背景に、未来の成長に向けた戦略的な先行投資を続けている、まさにその過程にあることを示しています。

日本の保険業界のガリバー・日本生命が描く、次世代の保険流通戦略の中核企業として、LHLが今後どのように飛躍していくのか、その動向から目が離せません。


【企業情報】
企業名: 株式会社LHL
所在地: 東京都新宿区西新宿2丁目4番1号 新宿NSビル4階
代表者: 太田 裕治
設立: 2018年11月9日
資本金: 1億円
事業内容: 広告事業(保険関連Webメディアの運営)、募集代理店事業、保険代理店グループ(株式会社ライフサロン、株式会社ライフプラザパートナーズ、株式会社ほけんの110番)の経営・事業管理を行う持株会社事業
株主: 日本生命保険相互会社(100%)

www.lhl.co.jp

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