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#3212 決算分析 : 株式会社キョウデンプレシジョン 第10期決算 当期純利益 378百万円


AIロボット、5G通信機器、自動運転を支える高度なセンサー、そして人々の命を救う最先端の医療機器。私たちの暮らしを豊かにし、未来の産業を発展させる様々なエレクトロニクス製品は、無数の精密な部品と、それらを繋ぐ電子回路基板から成り立っています。これらの複雑な製品を、設計図というアイデアから、実際に手に取れる「カタチ」にするためには、金属加工、樹脂成型、基板実装、製品組立といった、多種多様な製造技術を結集させる必要があります。

「お客様の便利な工場でありたい」。そんなユニークなコンセプトを掲げ、これらものづくりのほぼ全ての工程を、静岡県伊豆の国市和歌山県紀の川市の拠点で1社で完結させてしまう、驚異の“完全内製型”工場があります。それが、プリント基板業界の大手である株式会社キョウデンの製造中核子会社、株式会社キョウデンプレシジョンです。今回は、日本のものづくりのハブとして急成長を遂げる同社の決算を分析。その他に類を見ないビジネスモデルと、積極果敢な投資戦略、そして力強い収益力に迫ります。

キョウデンフプレシジョン決算

【決算ハイライト(第10期)】
資産合計: 12,166百万円 (約121.7億円)
負債合計: 9,289百万円 (約92.9億円)
純資産合計: 2,877百万円 (約28.8億円)

当期純利益: 378百万円 (約3.8億円)

自己資本比率: 約23.7%
利益剰余金: 2,371百万円 (約23.7億円)

【ひとこと】
2015年の設立からわずか10年で総資産120億円を超える企業へと急成長を遂げ、今期も3.8億円という安定した当期純利益を計上しています。自己資本比率23.7%という数値は、近年の和歌山・紀の川工場の新設など、成長のための積極的な設備投資に伴う借入を示唆しており、まさに成長企業の証左です。23億円を超える利益剰余金が、その力強い成長を裏付けています。

【企業概要】
社名: 株式会社キョウデンプレシジョン
設立: 2015年7月1日
親会社: 株式会社キョウデン (東証スタンダード上場、100%出資)
事業内容: EMS(電子機器の受託製造)事業およびODM(相手先ブランドでの設計・製造)事業

kyodenprecision.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、顧客のあらゆるものづくりニーズにワンストップで応える「総合製造ソリューション事業」です。その提供価値は、大きく2つの事業形態に分けられます。

✔EMS事業(電子機器の受託製造):完全内製型の“コンビニエンスファクトリー”
事業の根幹をなすのが、このEMS事業です。顧客である国内外のメーカーから製品の設計データを受け取り、その製造を全面的に請け負います。同社の最大の強みは、その圧倒的な「完全内製化率」です。通常であれば、製品のガワとなる金属筐体は板金工場へ、プラスチック部品は樹脂成型工場へ、頭脳となる電子回路基板の実装は実装工場へ、そして最終的な組立は組立工場へと、別々の会社に発注する必要があります。しかし同社は、これらほぼ全ての工程を自社グループ内で完結させることができます。これにより、顧客は発注管理の手間を大幅に削減できるだけでなく、工程間の輸送ロスがなくなり、圧倒的な短納期とコスト競争力、そして一貫した高い品質管理を実現できるのです。

✔ODM事業(設計・開発からの受託):アイデアをカタチに
EMSからさらに一歩踏み込み、顧客の「こんな製品を作りたい」というアイデアや構想の段階から、同社が回路設計や機構設計といった開発フェーズにまで関与し、製品化までをワンストップで実現するのがODM事業です。特に、旧東芝系の技術を継承した工業用の「真空洗浄機・蒸留再生機」は、自社で設計・製造から販売、アフターサービスまで手掛けるオリジナル製品であり、同社の高い開発技術力を象徴しています。

✔提供価値
同社は顧客にとって、まるで「必要な時に必要なだけ使える、便利な自社の製造部門」のような存在です。試作品などの多品種少量生産から、本格的な大量生産まで、あらゆるロットに柔軟に対応。顧客は、自社で大規模な工場や多様な製造設備を持つリスクを負うことなく、製品の企画開発とマーケティングという、自社のコア業務に集中することが可能になります。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
世界的な半導体不足の緩和や、DX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーン・トランスフォーメーション)に関連する企業の旺盛な設備投資需要が、エレクトロニクス業界全体を力強く牽引しています。また、企業の開発競争が激化する中で、製造を外部の専門企業(EMS)に委託する水平分業の流れは世界的に加速しています。国内に目を向ければ、深刻な人手不足や、地政学リスクの高まりを背景としたサプライチェーンの国内回帰の動きから、同社のような国内に強固な製造基盤を持つEMS企業への需要は、ますます高まっています。

✔内部環境
「完全内製型」という他に類を見ないビジネスモデルを実現・維持するため、同社は常に最新鋭の設備への投資を続けています。ファイバーレーザー複合機や大型の樹脂成型機、0201サイズといった超微細チップを搭載できる最新の基板実装(SMT)ラインなど、その設備投資は積極果敢です。決算書に見られる高い固定負債(約63億円)は、これらの成長投資の証です。多くの製造工程を内製化しているため固定費は大きいですが、高い稼働率を維持することで、大きな利益を生み出すことができる収益構造を持っています。

✔安全性分析
自己資本比率23.7%という数値は、製造業としては標準的な水準ですが、決して高くはありません。これは、2023年に本格操業を開始した和歌山県紀の川工場新設など、近年の積極的な設備投資に伴う金融機関からの借入金(固定負債)が大きいためです。まさに、企業の成長のために財務レバレッジを効かせている、成長企業の典型的な姿と言えます。
一方で、その成長が利益に裏打ちされたものであることを力強く物語っているのが、23.7億円という潤沢な「利益剰余金」です。これは、2015年の設立以来、毎年のように着実な利益を上げ、それを内部留保として蓄積し、さらなる成長の原資として再投資してきた、力強い経営の軌跡を示しています。今期の3.8億円という高い当期純利益は、これらの巨額投資が着実に収益へと結びついている証左に他なりません。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・金属加工、樹脂成型、基板実装、組立までを1社で完結できる、他に類を見ない「完全内製型」のビジネスモデル
多品種少量生産から大量生産まで、顧客のあらゆるニーズに柔軟かつスピーディーに対応できる生産体制
・親会社であるプリント基板大手キョウデンとの連携による、部品調達から完成品までを網羅する垂直統合サプライチェーン
・通信、ロボット、医療、車載など、景気変動の波が異なる多様な業界への豊富な納入実績によるリスク分散

弱み (Weaknesses)
・積極的な設備投資の結果としての、高い有利子負債と財務レバレッジ
・金属、樹脂、電子、組立と、多様な技術分野を維持・発展させるための、幅広い分野での高度な技術者・技能者の確保と育成が不可欠であること

機会 (Opportunities)
地政学リスクを背景とした、国内製造業の回帰と、国内サプライチェーン強靭化の流れ
・AI、IoT、次世代ロボット、EVといった、日本の新たな成長分野からの旺盛な受託製造需要
・自社ブランド製品である真空洗浄機の、半導体や電子部品といった精密洗浄が求められる業界へのさらなる拡販

脅威 (Threats)
・国内外の巨大なEMS企業(鴻海など)との、熾烈な価格競争および技術開発競争
・世界的な景気後退による、顧客であるメーカーからの大幅な受注減少
・深刻化する人手不足や、電気代、原材料価格の継続的な高騰による、利益率の圧迫
・急速な技術革新による、既存の製造設備の陳腐化リスク


【今後の戦略として想像すること】
急成長を遂げてきた同社は、今後、さらなる飛躍と持続的な成長に向けた戦略を展開していくと考えられます。

✔短期的戦略
まずは、2023年に本格操業を開始した和歌山・紀の川工場の稼働を軌道に乗せ、グループ全体の基板実装キャパシティを拡大し、旺盛な需要を確実に取り込んでいくことが最優先です。同時に、静岡の既存工場では、自社内に開設したロボットセンターを中心に、生産の自動化・省人化をさらに推進し、コスト競争力と品質の安定化に磨きをかけていくでしょう。

✔中長期的戦略
EMS事業で培った様々な業界の知見と、自社が持つ幅広い開発・製造能力を融合させ、ODM事業をさらに強化していくことが期待されます。単なる受託製造業者から、顧客と共に新たな製品を世に送り出す「開発パートナー」へと進化していくことで、収益性と付加価値をさらに高めていくでしょう。また、自社製品である真空洗浄機事業を、EMS/ODM事業に次ぐ第三の収益の柱として本格的に育成。特に、今後ますます微細化・精密化が進む半導体や電子部品業界でのシェア拡大を目指します。


【まとめ】
株式会社キョウデンプレシジョンは、顧客のあらゆるアイデアを「カタチ」にする、ものづくりの“コンビニエンスファクトリー”です。金属加工、樹脂成型、基板実装、製品組立という、通常は複数の専門工場にバラバラに発注するしかない製造工程を、1社で全て完結させる。この「完全内製型EMS」という他に類を見ないユニークなビジネスモデルが、圧倒的な短納期と高品質、そして競争力を生み出しています。

設立からわずか10年で総資産120億円を超える企業へと急成長し、今期も3.8億円の純利益を叩き出しました。積極的な設備投資を物語る財務内容と、それを裏付ける23億円超の利益剰余金は、同社の成長が利益に裏打ちされた力強いものであることを明確に示しています。サプライチェーンの国内回帰が叫ばれる中、同社のような強固な製造基盤を持つ企業の価値は、今後ますます高まっていくでしょう。これからも日本のものづくりの“便利なハブ”として、あらゆる産業の発展を足元から支え続けていくことが期待されます。


【企業情報】
企業名: 株式会社キョウデンプレシジョン
所在地: 静岡県伊豆の国市三福80番2
代表者: 海老塚 隆
設立: 2015年7月1日
資本金: 100百万円
事業内容: EMS事業(プレス・板金事業、樹脂成型事業、基板実装事業、小型製品・大型装置組立、装置メンテナンス受託)、ODM事業(真空洗浄機・蒸留再生機設計・製造・販売事業)
親会社: 株式会社キョウデン (100%出資)

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