決算データ倉庫

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#1072 日本無機株式会社 第118期決算 当期純利益 1,220百万円

半導体や医薬品の製造に不可欠なクリーンルーム、そして私たちが日々利用するビルの空調。その心臓部で、目に見えない塵埃や有害なガスを除去し、「きれいな空気」を創造し続ける技術者集団、日本無機株式会社。空調世界最大手のダイキン工業グループの中核企業である同社の第118期(2025年3月期)決算が、2025年6月23日付の官報に掲載されました。世界初の超高性能エアフィルタ開発など、80年以上にわたり業界をリードしてきた同社の強固な経営状況と、その事業戦略の核心に迫ります。

20250331_118_日本無機決算

第118期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 16,842百万円 (約168.4億円)

負債合計: 3,907百万円 (約39.1億円)

純資産合計: 12,935百万円 (約129.4億円)

当期純利益: 1,220百万円 (約12.2億円)

 

今回の決算では、売上高149億円(2024年度実績)に対し、当期純利益として1,220百万円(約12.2億円)という、極めて高い利益を計上しました。これは、同社が提供する高性能フィルタやクリーン機器が、幅広い産業分野で高い需要を獲得し、強い収益性を確保していることを明確に示しています。

また、財務基盤も極めて盤石です。総資産約168.4億円に対し、純資産が約129.4億円、自己資本比率は驚異の76.8%に達しています。これは実質的な無借金経営であり、研究開発や設備投資を自己資金で賄えるだけの、圧倒的な経営体力を有していることの証です。資本金13.2億円に対し、利益剰余金が10,152百万円(約101.5億円)と、資本金の7倍以上に積み上がっており、長年にわたる安定した黒字経営の歴史を物語っています。

事業内容と今後の展望(考察)


【事業内容の概要】
日本無機は、1939年にガラス繊維メーカーとして創業して以来、その技術を応用し、エアフィルタとクリーンルーム機器のトップメーカーへと進化を遂げてきました。その事業は、現代産業に不可欠な「清浄な空間」を創造することに特化しています。

フィルタ事業:
同社の事業の根幹は、空気中から様々なサイズの粒子や、有害な化学物質を除去する高性能エアフィルタの開発・製造・販売です。

✔超高性能フィルタ(ULPA/HEPA)

電子・半導体産業や製薬・医療分野で、ナノレベルの清浄度が求められるクリーンルームの心臓部として活躍。0.05μmの粒子を捕集するフィルタを世界で初めて開発するなど、その技術力は世界トップクラスです。

✔ビル空調用・産業用フィルタ

オフィスビルや商業施設、食品工場など、幅広い用途に向けたフィルタを提供。近年は、PM2.5ウイルス対策への関心の高まりを受け、その需要はますます拡大しています。

クリーン機器事業:
フィルタ単体だけでなく、クリーンルームやエアシャワー、パスボックス(クリーンルームへの物品受け渡し装置)など、清浄空間を構築するための機器やシステム全体を設計・施工しています。建設業許可(管工事業など)も保有しており、顧客のニーズに応じた最適なクリーン環境をワンストップで提供できるのが強みです。

ダイキン工業グループとしてのグローバル展開:
2009年より、空調世界最大手のダイキン工業の100%子会社となっています。これにより、ダイキングループが世界中に持つ販売網や研究開発拠点(グローバルフィルタR&Dセンタなど)を活用し、事業をグローバルに展開。特に、世界トップシェアのエアフィルタメーカーであるAAF(アメリカンエアフィルター)社との連携は、同社の製品を世界の最先端工場へと届ける上で、大きな力となっています。

 

【財務状況と今後の展望・課題】
第118期決算における約12.2億円という高い純利益は、同社が身を置く市場の堅調さと、その技術的優位性を反映したものです。世界的な半導体需要の拡大に伴う製造工場の新設・増設や、医薬品・バイオ分野での研究開発投資の活発化、そして人々の空気質への関心の高まりなど、あらゆるトレンドが同社にとって強力な追い風となっています。

76.8%という驚異的な自己資本比率と、100億円を超える巨額の利益剰余金は、同社がその追い風を確実にとらえ、高い収益を上げてきた結果です。この財務的な体力は、次世代のフィルタ技術や、よりエネルギー効率の高いクリーンルームシステムの研究開発など、未来への投資を継続するための盤石の基盤となります。

この「世界トップクラスのフィルタ技術」と「ダイキングループのグローバルな事業基盤」こそが、日本無機の最大の強みです。


しかし、その事業には、技術主導型企業ならではの課題も存在します。
第一に、「絶え間ない技術革新への挑戦」です。半導体製造プロセスの微細化は、さらに高いレベルの清浄度を要求します。また、省エネルギー化への要請も年々高まっています。競合他社との技術開発競争に勝ち抜き、常に市場をリードする製品を生み出し続けるための、研究開発への飽くなき挑戦が求められます。

第二に、「グローバル市場での競争と連携」です。ダイキングループの一員として世界市場で戦うには、各国の異なる規格や顧客ニーズに柔軟に対応する必要があります。グループ内のAAF社などとの連携を密にし、グローバルでの最適な生産・販売体制を構築していくことが重要です。

 

今後の展望として、日本無機は「快適環境創造企業」として、その事業領域をさらに拡大させていくでしょう。
短期的には、国内外で続く半導体工場の建設ラッシュを確実に取り込み、業績をさらに伸ばしていくことが予想されます。
中長期的には、これまでの「空気をきれいにする」技術を応用した、新たな事業の創出が期待されます。例えば、空気清浄だけでなく、水質浄化や、特定の物質だけを選択的に分離・回収するような、新たな分離膜技術の開発。あるいは、ダイキングループの空調技術と自社のフィルタ技術をより高度に融合させた、次世代の省エネ型・健康増進型空調システムの開発などが考えられます。

 

「Make a clean value ー新しい価値を創造し続ける」。そのスローガンの下、日本無機は、目に見えない粒子やガスと戦い、私たちの健康で快適な暮らしと、日本のハイテク産業を支え続けています。そのクリーンな技術が、これからも世界の未来をきれいにし続けてくれることでしょう。

 

企業情報
企業名: 日本無機株式会社

本社所在地: 東京都台東区東上野5-1-5 日新上野ビル4F

代表者: 代表取締役 社長執行役員 山口 健

事業内容: 空調世界最大手・ダイキン工業のグループ中核企業として、エアフィルタおよびクリーンルーム関連機器の開発・製造・販売を手掛ける。半導体工場や医薬品工場向けの超高性能フィルタから、ビル空調用フィルタ、ガラス繊維製品まで、幅広い製品ラインナップを持つ。

www.nipponmuki.co.jp