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#909 キャリーネット株式会社 第54期決算 当期純利益 394百万円

水産最大手の株式会社ニッスイ。その巨大なサプライチェーンにおいて、製品を全国の食卓へ届けるための「動脈」の役割を担うのが、物流子会社であるキャリーネット株式会社です。同社の第54期(2025年3月期)決算公告が、2025年5月30日付の官報に掲載されました。本記事では、その好調な決算内容を分析し、日本の食生活に不可欠なコールドチェーン(低温物流網)を支える、プロフェッショナル集団の強みと今後の展望に迫ります。 

20250331_54_キャリーネット決算

第54期 決算のポイント(単位:億円)
資産合計: 24.8億円
負債合計: 12.9億円
純資産合計: 11.8億円
当期純利益: 3.9億円


今回の決算では、当期純利益として3.9億円という非常に高い収益を計上しました。総資産24.8億円に対し、純資産が11.8億円と自己資本比率は約48%に達しており、安定した財務基盤を誇ります。10億円を超える潤沢な利益剰余金は、ニッスイグループの物流を支える重要企業として、半世紀以上にわたり着実に利益を積み上げてきた歴史の証です。

事業内容と今後の展望(考察)


【事業内容の概要】
キャリーネット株式会社は、1971年の設立以来、ニッスイグループの物流機能を担う中核企業として、特に食品輸送に特化した事業を展開しています。その事業は、日本の豊かな食生活を根底から支えています。

 

3温度帯対応の食品専門輸配送:

冷凍(Frozen)、チルド(Chilled)、ドライ(常温)の全温度帯に対応した輸送ネットワークを全国に展開。特に、品質管理が難しい冷凍・チルド食品を、生産地から消費地まで最適な温度で届けるコールドチェーンに強みを持ちます。


ニッスイグループ製品の安定供給網:

親会社であるニッスイグループが製造する「フィッシュソーセージ」や「ねり製品」、冷凍食品といった多種多様な製品を、全国の工場から物流センター、そしてスーパーやレストランといった販売先へ届ける、グループの動脈としての重要な役割を担っています。


「ワンストップロジスティクス」の提供:

親会社である日水物流株式会社が運営する全国の冷凍・冷蔵倉庫機能と、自社の輸配送機能を緊密に連携。海外から輸入された水産物や食品の通関・保管から、国内の最終目的地への配送までを、グループ内で一貫して提供できる体制を構築しています。


【財務状況と今後の展望】
今期達成した3.9億円という高い純利益は、冷凍食品市場の拡大や、中食・外食産業の回復を背景に、食品物流全体の需要が堅調に推移していることを示しています。ニッスイグループという巨大かつ安定した荷主を基盤に持ちながら、効率的な配車や運行管理、そして全国に張り巡らされたネットワークを駆使することで、高い収益性を実現していると推察されます。

 

私たちの食生活は、今や冷凍食品やチルド食品なくしては成り立ちません。これらの食品が、生産地から家庭の食卓まで、そのおいしさと安全性を損なうことなく届けられるのは、キャリーネットが日夜支えるコールドチェーン(低温物流網)のおかげです。同社は、日本の豊かな食生活を維持するための、社会に不可欠なインフラ企業としての重要な役割を担っているのです。

 

この事業におけるキャリーネットの最大の強みは、ニッスイグループの一員であることに尽きます。グループ内で製造される膨大な量の製品輸送が、景気の波に左右されにくい安定した事業基盤となっています。さらに、親会社である日水物流の倉庫機能との一体運営により、顧客に対して「ワンストップロジスティクス」を提供できることも、他の運送会社にはない強力な競争優位性です。これにより、単なる「運送」だけでなく、保管・在庫管理・通関まで含めた包括的なソリューション提案が可能になっています。

 

しかし、その一方で、物流業界全体が直面する「2024年問題」、すなわちドライバーの労働時間規制強化による輸送能力の低下とコスト上昇は、同社にとっても最大の経営課題です。また、高止まりする燃料費や、全国的なドライバー不足も、収益を圧迫するリスク要因として常に存在します。

 

同社は、経営ビジョンに「持続可能な物流ネットワークを構築し、安全・安心な社会生活の維持に貢献する」ことを掲げており、これらの課題への対応をすでに始めています。今後の具体的な取り組みとしては、長距離輸送におけるモーダルシフト(トラック輸送から鉄道や船舶輸送への転換)の推進や、複数のドライバーで荷物をリレーする中継輸送の導入、そして荷主であるニッスイグループと一体となった荷役作業の効率化や納品リードタイムの見直しなどが、さらに重要になってきます。

 

また、コンプライアンス遵守やハラスメント防止といった「ホワイト物流」への取り組みを強化し、「働きがいのある会社」としてのアピールを強めることが、厳しい採用環境の中で優秀なドライバー人材を確保し、定着させるための鍵となります。

 

キャリーネット株式会社が目指すのは、単なるニッスイグループの物流子会社ではありません。それは、経営ビジョンに掲げる「社会に信頼されるインフラ企業」として、日本の食のコールドチェーンを支え続けることです。ニッスイグループの物流を担う誇りと責任を胸に、安全・安心・確実な輸送サービスを提供し続ける。キャリーネットは、これからも日本の豊かな食生活を、日夜走り続けるトラックの力で支えていくことでしょう。

 

企業情報
企業名: キャリーネット株式会社
所在地: 愛知県名古屋市港区明正一丁目181番地
代表者: 代表取締役 社長執行役員 山本 大介
事業内容: 株式会社ニッスイのグループ企業(日水物流100%子会社)。冷凍・チルド・ドライの3温度帯に対応した食品専門の運送事業を展開。親会社の倉庫機能と連携した「ワンストップロジスティクス」に強みを持つ。

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