決算データ倉庫

いつか、なにかに役立つかもしれない決算データを官報から自分用に収集しストックしている倉庫です。あくまでも自分用ですので網羅的ではなく、カテゴリー分類も大雑把です。気になる業界・企業・事業内容・キーワードがありましたら検索してみてください!なお、ブログ内のコメント等の正確性を保証するものではない点、何卒ご容赦ください(官報の画像データは正確です)。

#889 エース株式会社 第75期決算 当期純利益 2,436百万円

日本製スーツケースのトップブランド「ProtecA(プロテカ)」や、アポロ計画でも使用された「ZERO HALLIBURTONゼロハリバートン)」などを擁し、日本の旅文化と共に80年以上の歴史を歩んできた総合カバンメーカー、エース株式会社。同社の第75期(2024年12月期)決算公告が、2025年3月19日付の官報に掲載されました。本記事では、その好調な決算内容を読み解き、日本のものづくりを牽引する老舗の強さと未来への戦略に迫ります。

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第75期 決算のポイント(単位:億円)
売上高: 266.7億円
営業利益: 27.3億円
経常利益: 30.5億円
当期純利益: 24.4億円


純資産合計: 190.0億円

今回の決算では、売上高266.7億円に対し、当期純利益として24.4億円という極めて高い収益を確保しました。売上高営業利益率は10%を超えており、強力なブランド力と高品質な製品が、高い収益性を生み出していることを示しています。また、総資産217.7億円に対し、純資産が190.0億円と自己資本比率は約87.3%に達し、盤石の財務基盤を誇ります。166億円を超える巨額の利益剰余金は、長年の歴史の中で着実に利益を積み上げてきた経営の賜物です。

事業内容と今後の展望(考察)


【事業内容の概要】
エース株式会社は、1940年に創業した「新川柳商店」を源流とする、日本を代表する総合カバンメーカーです。「すべての移動を旅と捉え、その移動を快適にする」という思想の下、多様なブランドを展開しています。

 

自社ブランド事業(プロテカ / エース):

日本製ならではの高品質・高機能を徹底的に追求するラゲージブランド「ProtecA(プロテカ)」と、ビジネスからカジュアルまであらゆるシーンに最適なカタチを提供するバッグ&ラゲージブランド「ace.(エース)」を2大基幹ブランドとして展開。特にプロテカは、北海道赤平市の自社工場で製造される「MADE IN JAPAN」の信頼の象徴です。


買収ブランド事業(ゼロハリバートン):

2006年に買収した米国発の伝説的ラゲージブランド「ZERO HALLIBURTONゼロハリバートン)」のグローバル展開を推進。アポロ計画で月の石を持ち帰った逸話で知られるアルミニウムケースのDNAを継承しつつ、現代のニーズに合わせた製品開発で、新たな価値を創造しています。


文化・技術の継承と発信:

1970年代に一世を風靡した「マジソンバッグ」の生みの親であるなど、日本のカバン文化に大きな足跡を残してきました。現在も、東京・駒形に「世界のカバン博物館」を運営し、カバンの歴史や文化を発信する社会的役割も担っています。


【財務状況と今後の展望】
今期達成した24.4億円という高い純利益は、国内外の旅行需要の本格的な回復が大きな追い風となったことに加え、同社が長年築き上げてきたブランド力と高品質なものづくりが、消費者の強い支持を得ている結果です。コロナ禍を経て、人々は再びアクティブに移動を開始し、「旅」の価値が再認識されています。その中で、信頼できる良いカバンを求める需要が、同社の業績を力強く牽引したと推察されます。

 

エースの最大の強みは、卓越したマルチブランド戦略にあります。

 

「プロテカ」 は、品質と機能性を何よりも重視する層に、「MADE IN JAPAN」の安心感と誇りを提供します。


「エース」 は、変化するワークスタイルやライフスタイルに柔軟に対応し、時代に即した機能性とデザインで幅広い層を惹きつけます。


ゼロハリバートン」 は、歴史とステータス性を重視する層に、他に代えがたい所有する喜びをもたらします。


これら個性とターゲットの異なるブランド群を巧みに展開することで、市場のあらゆるニーズを的確に捉えています。この戦略を支えるのが、かつて40年間にわたりサムソナイト製品のライセンス生産を手掛けてきた歴史で培われた、世界水準の製造技術と品質管理能力です。北海道赤平市の自社工場は、そのDNAを今に伝える、まさに日本のものづくりの聖地と言えるでしょう。

 

今後の課題としては、サステナビリティへの取り組みが一層重要になります。リサイクル素材の積極的な活用や、製品を長く使えるようにするための修理サービスの充実、環境負荷の低い生産プロセスの追求などを通じて、持続可能な社会に貢献する姿勢を明確に打ち出すことが、未来のブランド価値をさらに高めることに繋がります。

 

また、ECサイトの強化やSNSマーケティングといった、デジタル技術を活用した顧客との新たなコミュニケーションも不可欠です。各ブランドが持つ豊かなストーリーや世界観を、デジタル上で効果的に表現し、国境を越えて新たなファンを獲得していくことが、グローバルな成長の鍵となります。

 

特に、アジア市場における「ゼロハリバートン」ブランドのさらなる成長や、主力の「プロテカ」「エース」ブランドにおける、時代の変化に対応した新素材・新機能の開発、そして新たなライフスタイルを提案する製品カテゴリーへの挑戦が期待されます。

 

エース株式会社が目指すのは、単なるカバンメーカーではありません。それは、「世界を代表する、日本のトラベル&ビジネスラゲージカンパニー」としての確固たる地位です。「最適で最高のカバン」を創造し続けることで、世界中の人々の「移動」をより豊かで快適なものに変えていく。創業から80年以上にわたり日本の旅と共に歩んできたエースは、これからも品質と革新を両輪に、新たな時代の旅の物語を力強く紡ぎ続けていくことでしょう。

 

企業情報
企業名: エース株式会社
所在地: 大阪府大阪市中央区博労町四丁目5番2号
代表者: 代表取締役社長 森下 宏明
事業内容: 「ProtecA」「ace.」などの自社ブランドや、買収した「ZERO HALLIBURTON」ブランドの各種カバンの製造・販売を手掛ける総合カバンメーカー。北海道赤平市に製造拠点を持ち、高品質な日本製ラゲージで知られる。

www.ace.jp