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#1839 決算分析 : 株式会社TRY&TRUST 第39期決算 当期純利益 ▲95百万円

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東海地方を地盤に、大型パチンコホール「マリオン」「マリオンガーデン」を展開する株式会社TRY&TRUST。「挑戦(TRY)」と「信頼(TRUST)」を社名に掲げ、1986年の創業以来、地域に根差したアミューズメント施設を運営してきました。近年では、従業員の主体性を引き出す「アメーバ経営」の導入や、全従業員で策定した独自の経営哲学「T&Tフィロソフィ」を共有するなど、「第二創業期」として積極的な組織改革を推し進めています。しかし、今回公開された決算内容は、9,500万円の当期純損失という厳しい結果でした。本記事では、この決算内容を深掘りし、同社が誇る極めて健全な財務基盤と、パチンコ業界全体が直面する構造的な課題、そして未来に向けた成長戦略について多角的に考察します。

TRY&TRUST決算

決算ハイライト(第39期)
当期純損失: 95百万円 (約1.0億円)

資産合計: 12,159百万円 (約121.6億円)
負債合計: 3,381百万円 (約33.8億円)
純資産合計: 8,781百万円 (約87.8億円)

自己資本比率: 約72.2%
利益剰余金: 8,506百万円 (約85.1億円)

 

まず決算書を見て最も印象的なのは、当期純損失を計上している一方で、自己資本比率が約72.2%という極めて高い水準にある点です。これは、企業の財務健全性を示す重要な指標であり、総資産に占める返済不要の自己資本が潤沢であることを意味します。過去の利益の蓄積である利益剰余金が約85.1億円と豊富にあるため、短期的な赤字では経営基盤が揺るがない、強固な財務体質を築いていることが明確に見て取れます。厳しい事業環境の中でも、財務的な体力は十分に維持されていると言えるでしょう。

 

企業概要
社名: 株式会社TRY&TRUST
設立: 1986年11月
事業内容: パチンコホール「マリオンガーデン」「マリオン」および飲食店「まりや」「一富士」の運営

www.marion-g.jp

 

【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、収益の中核であるパチンコホール運営を軸としながら、飲食事業や不動産リース事業へと多角化を図ることで、経営の安定化を目指すポートフォリオを構築しています。

パチンコホール事業
現在の同社を支える主力事業です。「マリオン」および、より大型の「マリオンガーデン」のブランドで店舗を展開しています。特に愛知・岐阜・三重の東海三県を地盤とし、地域でのブランド認知度を高めるドミナント戦略を採っています。顧客が快適に過ごせる広い駐車場を完備した、3,000坪以上の郊外型大型店舗の出店を基本戦略としており、地域密着型のきめ細やかな運営で、長年にわたり固定客の支持を集めています。

✔飲食事業
パチンコホールに付随する形、あるいは独立した店舗として「まりや」「一富士」といった飲食店を運営しています。アミューズメント事業とのシナジーを創出するとともに、新たな収益源を確保し、地域住民の多様なニーズに応えることを目指していると考えられます。

✔不動産リース事業
会社の沿革を見ると、2015年以降、営業を終了したパチンコ店舗の建物や社有地を、他の事業者へ賃貸するリース事業に転用する動きが活発化しています。これは、パチンコ事業への過度な依存から脱却し、市況に左右されにくい安定した不動産賃料収入を得ることで、事業ポートフォリオのリスクを分散し、収益基盤の安定化を図る極めて戦略的な動きと分析できます。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
パチンコ業界は、複数の厳しい課題に直面しています。若者を中心とした遊技人口の長期的な減少傾向に加え、近年ではスマートパチスロ(スマスロ)やスマートパチンコ(スマパチ)への移行が急速に進んでおり、ホール企業は巨額の設備投資負担を強いられています。さらに、射幸性を抑制する方向での規制強化も断続的に行われており、業界全体の市場規模は縮小傾向にあります。コロナ禍を経て顧客のライフスタイルも大きく変化し、リアルな店舗への集客は依然として大きな経営課題です。

✔内部環境
「T&Tフィロソフィ」の策定や、京セラで生まれた経営管理手法「アメーバ経営」の導入は、こうした厳しい環境下で、従業員一人ひとりの経営参画意識を高め、全社一丸となって課題に取り組むための重要な組織改革と見ることができます。また、弁護士や社労士などから成る専門家顧問団を設置し、コンプライアンス労務管理を徹底する姿勢は、企業の社会的信用と持続可能性を高める上で不可欠な要素です。しかし、今回の当期純損失という結果は、こうした懸命な内部努力だけでは吸収しきれない、外部環境の構造的な厳しさを物語っています。

✔安全性分析
自己資本比率72.2%という数値は、同業他社と比較しても非常に高い水準であり、財務的な安定性は盤石であると断言できます。これは、創業以来30年以上にわたり、得られた利益を堅実に内部留保(利益剰余金85.1億円)として蓄積してきた、規律ある経営の賜物です。この強固な財務基盤があるからこそ、一台数十万円もするスマート遊技機への大規模な設備投資を断行でき、また、赤字を計上した期においても事業を継続し、次なる成長に向けた組織改革に邁進することが可能となっています。短期的な業績の悪化で経営が揺らぐリスクは極めて低いと言えるでしょう。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
自己資本比率72.2%という、業界でも屈指の強固で安定した財務基盤と豊富な内部留保
・東海三県という特定のエリアに集中出店し、地域での高いブランド認知度を確立しているドミナント戦略
・全従業員で共有する「フィロソフィ」や「アメーバ経営」による、組織としての一体感と高い経営意識。
・閉鎖店舗をリースに転用するなど、保有資産を有効活用する柔軟で戦略的な経営判断力。

弱み (Weaknesses)
・収益の大半をパチンコ事業に依存しており、業界特有の規制リスクや市場縮小の影響を受けやすい。
当期純損失を計上しており、現在のビジネスモデルが外部環境の変化の中で収益を上げにくい局面にあること。

機会 (Opportunities)
・スマート遊技機の全面的な普及による、これまでにない新たなゲーム性の創出と、若年層を含む新規ファンの獲得。
・閉鎖店舗や遊休地を有効活用した不動産リース事業のさらなる拡大による、収益構造の安定化と多角化
・長年のパチンコホール運営で培った高度な接客ノウハウや店舗開発力を活かした、新たなサービス業への展開。
・業界再編が加速する中、強固な財務基盤を活かして、経営不振に陥った同業他社の優良店舗を有利な条件で取得するチャンス。

脅威 (Threats)
スマートフォンの普及やエンターテインメントの多様化に伴う、パチンコ遊技人口の構造的かつ長期的な減少傾向。
・所轄官庁による法改正や行政指導を通じた、さらなる射幸性の抑制や営業規制の強化リスク。
オンラインカジノ(違法)や公営競技、他のレジャーとの、顧客の可処分時間の奪い合い。
・次世代遊技機への入れ替えに伴う、今後も継続することが予想される巨額の設備投資負担。

 

【今後の戦略として想像すること】
厳しい経営環境を乗り越え、持続的な成長を実現するため、以下のような戦略が考えられます。

✔短期的戦略
まずは損失を食い止め、収益性を回復させることが最優先です。既存店舗において、導入したスマート遊技機の効果を最大化するためのプロモーションや、顧客がより快適に過ごせるためのサービスを強化し、集客力と客単価の向上を図る必要があります。同時に、収益貢献度が低い店舗の整理・閉鎖を継続し、それらの資産を迅速にリース事業へ転用することで、コスト削減と安定収益の確保を両立させる戦略が考えられます。

✔中長期的戦略
パチンコ事業への依存度を段階的に引き下げ、事業の多角化を本格化させることが、持続的成長の鍵となります。強固な財務基盤と潤沢な内部留保を活かし、安定収益源である不動産リース事業をさらに拡大するほか、M&Aを通じてパチンコ以外のエンターテインメント事業や、地域社会に貢献できるような新たなサービス業(例えば、高齢者向けのアミューズメント施設や、飲食事業の本格展開など)への進出も視野に入ってくるでしょう。「挑戦と信頼」という社是のもと、これまで培ってきた経営資源を活かし、新たな事業領域へ果敢に挑戦していくことが期待されます。

 

まとめ
株式会社TRY&TRUSTは、東海地方を地盤とする有力なパチンコホール「マリオン」の運営企業です。今回の決算では当期純損失を計上し、パチンコ業界全体を取り巻く環境の厳しさが改めて浮き彫りになりました。しかし、その一方で自己資本比率72.2%という鉄壁とも言える財務基盤を維持しており、短期的な業績悪化では決して揺るがない、優れた経営体力を誇ります。この財務的な強さを背景に、スマート遊技機への大規模投資や、フィロソフィ経営といった組織改革を断行する「守り」と「攻め」の経営を両立させています。今後は、主力であるパチンコ事業の収益性を改善させつつ、閉鎖店舗のリース転用など、保有資産を有効活用した多角化をさらに推し進めていくことが予想されます。業界が直面する厳しい冬の時代を、その体力と組織力で乗り越え、次の成長ステージへと飛躍できるか、その「挑戦」に注目が集まります。

 

企業情報
企業名: 株式会社TRY&TRUST
所在地: 愛知県名古屋市中川区外新町一丁目24番地
代表者: 代表取締役 山田 孝志
設立: 1986年11月
資本金: 5,000万円
事業内容: パチンコホール「マリオンガーデン」「マリオン」の運営、飲食店「まりや」「一富士」の運営、不動産リース事業

www.marion-g.jp

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