静岡県の海の玄関口、国際貿易港である清水港の中核を担う第三セクター、清水港振興株式会社の第29期(2025年3月期)決算が、2025年6月13日付の官報に掲載されました。港湾の物流機能と地域の「にぎわい創出」を両輪で支える同社の経営状況と事業の多面性について、詳しく分析します。 ![]()

第29期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 1,738百万円 (約17.4億円)
負債合計: 342百万円 (約3.4億円)
純資産合計: 1,396百万円 (約14.0億円)
当期純利益: 69百万円 (約0.7億円)
今回の決算では、売上高555百万円、営業利益92百万円、そして当期純利益として69百万円を計上しました。特筆すべきは、その盤石な財務基盤です。総資産約17.4億円に対し、純資産が約14.0億円と厚く、自己資本比率は約80.3%という極めて高い水準にあります。資本金5億円に対して利益剰余金が約9.0億円まで積み上がっており、1996年の設立以来、着実な黒字経営を継続していることが明確に見て取れます。
事業内容と今後の展望(考察)
【事業内容の概要】
清水港振興株式会社は、もともと国のFAZ(輸入促進地域)構想の事業主体として設立された第三セクターです。FAZ法そのものは失効しましたが、同社は静岡県や静岡市、地元経済界と強固に連携し、清水港の価値向上を使命とする地域の中核企業として、多岐にわたる事業を展開しています。
港湾物流インフラ事業(ハード事業):
同社の収益の根幹をなすのが、この物流事業です。コンテナ輸送の拠点である「興津国際流通センター」や、輸入関連企業が集積する工業団地「清水港FAZアイパーク」といった、清水港の心臓部ともいえる大規模物流施設を所有・管理しています。これらの施設を海貨業者や倉庫業者に賃貸することで、安定的かつ継続的な収益を確保しています。
臨海エリアの施設管理・運営事業(ハード事業):
物流施設に加え、清水港日の出地区において、人々の交流拠点となる施設の管理運営も担っています。国際会議や展示会が開催される「清水マリンターミナル」、地域のイベントや会議に利用される「清水マリンビル」、そして「日の出パーキング」をはじめとする複数の大規模駐車場を運営し、港に訪れる人々の利便性を高めています。
にぎわい創出・地域貢献事業(ソフト事業):
ハード施設の運営にとどまらず、港に人々を呼び込み、その魅力を発信するソフト事業にも注力しています。「模型のまち静岡」を象徴する「清水ホビーショー」をはじめ、「清水港興津フェア」「サイクルドリーム@日の出」といった地域色豊かな大規模イベントを自ら企画・運営。これにより、港を単なる物流拠点から、文化・交流・レクリエーションの場へと昇華させています。
【財務状況と今後の展望・課題】
第29期決算における69百万円の純利益は、主に「興津国際流通センター」などの物流施設や、「清水マリンターミナル」といった保有施設からの安定した賃料収入が源泉であると強く推察されます。これは典型的なストック型ビジネスであり、景気変動の影響を受けにくく、同社の経営に揺るぎない安定性をもたらしています。貸借対照表に計上されている有形・無形の固定資産(合計約6.7億円)は、まさにこれら収益を生む資産群そのものです。
この「ハード事業(施設賃貸)」で得た安定収益を原資として、「ソフト事業(イベント開催)」に再投資し、港エリア全体の価値を高める。この価値向上が、結果的にハード施設の魅力を高め、テナント確保や利用促進に繋がるという、理想的な好循環モデルを確立している点が、同社の最大の強みと言えるでしょう。
また、静岡県・静岡市が主要株主である第三セクターという立場は、公共性の高い大規模プロジェクトを推進する上での大きな信頼性と推進力となっています。日本三大美港の一つである清水港の地理的優位性(首都圏と中京圏の中間地点)を活かし、地域経済を牽引する役割を担っています。
一方で、今後の持続的な成長に向けては、いくつかの課題も存在します。
第一に「施設の老朽化対策」です。1998年に完成した興津国際流通センター1号棟をはじめ、設立初期に整備された施設は築25年を超えています。今後、計画的な大規模修繕や設備更新が不可欠となり、そのための長期的な投資計画と資金確保が重要な経営課題となります。
第二に「物流・地域経済の構造変化への対応」です。物流業界における「2024年問題」や自動化・省人化の潮流、さらには国際情勢の変動によるサプライチェーンの変化は、テナント企業のニーズを変化させる可能性があります。また、地域経済の基盤である人口動態の変化も、長期的には港のにぎわいに影響を与える可能性があります。
今後の展望として、短期的には既存施設の高い稼働率を維持し、安定収益を確保することが最優先事項です。同時に、「清水ホビーショー」のようなキラーコンテンツをさらに磨き上げ、港への集客力を維持・強化していくことが求められます。
中長期的には、老朽化対策を単なる現状復旧にとどめず、未来への投資と捉える視点が重要です。例えば、再生可能エネルギーの導入やDX技術を活用したスマート倉庫へのリノベーションなど、脱炭素化や効率化といった社会的な要請に応える付加価値の高い施設へアップグレードすることができれば、新たな競争力を生み出すことができます。
清水港振興株式会社は、物流インフラの提供者であると同時に、地域の魅力を創造するプロデューサーでもあります。盤石な財務基盤と行政との連携力を活かし、施設の更新という課題を乗り越え、清水港を次世代の国際物流・交流拠点へと進化させていけるか。その戦略と実行力に、地域社会から大きな期待が寄せられています。
企業情報
企業名: 清水港振興株式会社
代表者: 代表取締役 髙橋 明彦
事業内容: 清水港において「興津国際流通センター」等の物流施設や「清水マリンターミナル」等の交流施設を管理・運営する不動産賃貸事業を主軸としつつ、「清水ホビーショー」等のイベントを企画・運営するにぎわい創出事業も手掛ける第三セクター。