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#664 決算分析 : 株式会社Minoru 第6期決算 当期純利益 6百万円

「家賃が実る家」という革新的な住宅取得サービスを展開する、株式会社Minoruの第6期(2024年10月期)の決算公告が、令和7年1月8日付の官報に掲載されました。設立6年目のスタートアップである同社の財務状況と、ユニークなビジネスモデルの将来性について考察します。

20241031_6_Minoru決算

第6期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 20 (約0.2億円)
負債合計: 37 (約0.4億円)
純資産合計: ▲17 (約▲0.2億円)
当期純利益: 6 (約0.1億円)


今回の決算で最も注目すべき点は、当期純利益として6百万円(約0.1億円)を計上し、黒字転換を達成したことです。

 

一方で、純資産合計は▲17百万円(約▲0.2億円)となり、負債が資産を上回る債務超過の状態です。これは、創業以来の事業モデル構築やプラットフォーム開発、マーケティング活動といった先行投資により、利益剰余金が▲197百万円(約▲2.0億円)のマイナスとなっているためです。

 

スタートアップ企業が事業立ち上げ期に先行投資で債務超過となるのは珍しくありません。重要なのは、そのビジネスモデルが収益を生み出し始めたかという点です。その意味で、第6期での黒字化達成は、同社の事業が本格的な収益化フェーズに入ったことを示す、極めてポジティブなシグナルと言えるでしょう。

 

事業内容と今後の展望(考察)


【事業内容の概要】
株式会社Minoruは、「SMART, INNOVATIVE and INCLUSIVE」を掲げ、従来の住宅ローンの仕組みではマイホーム取得が困難だった人々に新たな道を開く、社会課題解決型の不動産テック(PropTech)企業です。その中核事業が「家賃が実る家」です。

 

革新的な住宅取得プラットフォーム「家賃が実る家」:

このサービスは、マイホームを希望する入居者、安定利回りを求める不動産オーナー、そして両者を繋ぐプラットフォーマーであるMinoruの三者にメリットをもたらす、画期的な仕組みです。

 

入居者:

フリーランス個人事業主、若年層など、信用情報や勤続年数から住宅ローン審査が通りにくい人々が、賃貸として住み続けながら最終的にマイホームを所有できます。Web上でセミオーダーの家を設計できる点も魅力です。


不動産オーナー:

入居者が確定した新築戸建てに投資するため、「空室リスク」「家賃下落リスク」が原則なく、長期にわたり安定したキャッシュフローを見込めます。


Minoru:

両者をマッチングし、契約をサポートすることで手数料収益を得ます。


社会課題解決への貢献(SDGs):

この事業は単なる不動産仲介に留まりません。金融包摂(インクルーシブ)の実現、企業の福利厚生(従業員に家を)、地方創生(自治体と連携した移住定住促進)といった、SDGsの目標達成にも貢献するビジネスモデルとして設計されており、その社会的な意義は非常に大きいと言えます。

 

【財務状況と今後の展望・課題】
前述の通り、同社は先行投資による債務超過と、事業の成長による黒字化という、スタートアップの典型的な財務状況にあり、これまでの積極的な投資活動を物語っています。

 

黒字化を達成した今、同社は新たな成長ステージに入ったと見ることができます。今後の展望と課題は以下の通りです。

 

市場機会と成長性:

働き方の多様化が進む現代において、従来の画一的な住宅ローンからこぼれ落ちる人々は増加傾向にあります。「家賃が実る家」がターゲットとする市場は、今後さらに拡大する可能性を秘めています。また、BtoB(福利厚生)やBtoG(自治体連携)への展開は、事業を一気にスケールさせる起爆剤となり得ます。


財務基盤の強化:

当面の最重要課題は、継続的な黒字経営によって累積損失(利益剰余金のマイナス)を解消し、債務超過の状態から脱却することです。事業の成長性が市場に示されたことで、今後の事業拡大に向けた追加の資金調達(エクイティファイナンス等)も行いやすくなるでしょう。


リスクと課題:

ビジネスモデルの革新性ゆえの課題も存在します。「譲渡予約付き賃貸借契約」といった法務・税務面の複雑さについて、ユーザーへの丁寧で分かりやすい説明責任が求められます。また、事業の成功が広く認知されれば、大手資本による模倣サービスが登場する可能性も否定できません。今のうちにブランド力とネットワーク効果(提携不動産会社、建設会社網の拡大)を確立し、先行者としての地位を盤石にすることが重要です。


総じて、株式会社Minoruは、設立からわずか6年で事業モデルの有効性を証明し、収益化への第一歩を踏み出しました。社会課題の解決を事業の核に据えたそのビジネスモデルは、多くのステークホルダーから支持を集めるポテンシャルを秘めています。継続的な利益創出を通じて財務の健全化を果たし、日本の住宅取得のあり方に「一石を投じる」存在となれるか、その挑戦から目が離せません。

 

企業情報
企業名: 株式会社Minoru
所在地: 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー16F
代表者: 代表取締役 石原 基成
事業内容: 家賃を払い続けるとマイホームになる譲渡型賃貸住宅「家賃が実る家」事業。入居希望者と不動産オーナーをマッチングするプラットフォームを運営。

minoru-inc.jp

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