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#4044 決算分析 : ブルーモ証券株式会社 第3期決算 当期純利益 ▲249百万円

「貯蓄から投資へ」という言葉が叫ばれて久しい日本。2024年から始まった新NISA制度を追い風に、個人の資産形成への関心はかつてないほどの高まりを見せています。しかし、「何に、どうやって投資すれば良いのかわからない」「米国株に興味はあるけれど、手続きが面倒そう」といった理由で、一歩を踏み出せないでいる人も少なくありません。もし、そんな投資のハードルをテクノロジーの力で劇的に下げ、誰もが簡単に世界経済の成長を取り込めるサービスがあるとしたら、日本の未来はどう変わるでしょうか。

今回は、まさにその課題に挑むべく誕生したFinTechスタートアップ、ブルーモ証券株式会社の決算を読み解きます。その革新的なサービスと、決算書に示された壮大な未来への先行投資に迫ります。

ブルーモ証券決算

【決算ハイライト(3期)】
資産合計: 2,537百万円 (約25.4億円)
負債合計: 116百万円 (約1.2億円)
純資産合計: 2,421百万円 (約24.2億円)

当期純損失: 249百万円 (約2.5億円)

自己資本比率: 約95.4%
利益剰余金: ▲430百万円 (約▲4.3億円)

【ひとこと】
自己資本比率約95.4%という極めて高い数値は、盤石な財務基盤を示しています。これは、メガバンク系VCなどから調達した28億円を超える潤沢な資本によるものです。一方で、当期は約2.5億円の純損失を計上。サービス開発や顧客獲得に大規模な先行投資を行っている、典型的なFinTechスタートアップの姿が鮮明に映し出されています。

【企業概要】
社名: ブルーモ証券株式会社
設立: 2022年
事業内容: 「投資をみんなのものに」をミッションに掲げ、長期・分散・積立のグローバル投資(米国株・ETF)を、スマートフォンアプリで手軽に実践できる新しい資産形成サービスを提供するFinTech証券会社。

bloomo.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、テクノロジーを駆使することで、これまで複雑で専門家向けだった本格的なポートフォリオ投資を民主化し、誰もが簡単に始められるようにする「資産形成のUX(ユーザー体験)革命」に集約されます。

✔コア機能「目標ポートフォリオ
同社のサービスを象徴する革新的な機能です。ユーザーは、投資したい米国株やETFの銘柄と、それぞれの投資比率を「目標ポートフォリオ」として設定するだけ。例えば、「アップル30%, S&P500連動ETF 50%, テスラ20%」のように自由に組み合わせます。あとは日本円で入金すれば、アプリが自動で米ドルへの両替から、設定した比率に合わせた各銘柄の買付までを実行してくれます。これにより、投資家は為替レートや株価を気にしながら何度も発注する、といった従来の手間から完全に解放されます。

✔「小数部取引」による少額からのグローバル投資
1株買うのに数万円、時には10万円以上するような米国の優良株も、0.0001株という非常に細かい単位で購入できる「小数部取引」に対応しています。これにより、月々数千円や1万円といった少額の積立でも、高価な銘柄を含む理想のポートフォリオを、無駄なく構築することが可能です。

✔ターゲット顧客と提供価値
主なターゲットは、将来のために資産形成を始めたいと考えているものの、従来の証券会社のサービスは複雑でハードルが高いと感じている20代から40代の現役世代です。彼らにとっての「面倒くさい」を徹底的に排除し、直感的で分かりやすいアプリを通じて、世界経済の成長を享受する機会を提供することに価値を置いています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
新NISA制度のスタートは、同社にとって最大の追い風です。非課税という強力なインセンティブにより、これまで投資に無関心だった層も市場に参入し始めています。特に、高い成長が期待される米国株への投資人気は根強く、同社のサービスと完全に合致しています。しかし、その市場はSBI証券楽天証券といった巨大な顧客基盤を持つネット証券の巨人が覇権を握っており、新規参入企業がシェアを奪うのは容易ではありません。

✔内部環境
同社は、急成長を目指すスタートアップの典型的な「Jカーブ」戦略を描いています。サービス開始初期は、強固なセキュリティを持つシステム開発費、優秀なエンジニアや金融専門家の採用費、そして認知度を高めるためのマーケティング費用などが莫大にかかります。今回の約2.5億円の赤字は、まさにこの大規模な先行投資フェーズにあることを示しています。この戦略を支えているのが、事前に調達した約24億円という潤沢な自己資本です。まずは収益性よりもユーザー数と預かり資産残高(AUM)の拡大を最優先し、将来の黒字化を目指すモデルです。

✔安全性分析
財務の安全性は「極めて高い」と言えます。自己資本比率が約95.4%に達し、負債はわずか1.2億円と、実質的に無借金経営です。この異次元の財務基盤は、三菱UFJSMBC、みずほといったメガバンク系のベンチャーキャピタルをはじめ、国内外の有力な投資家が、同社のビジネスモデルと経営チームに大きな期待を寄せ、合計28億円を超える大規模な出資を行った結果です。利益剰余金のマイナスは、未来の成長のために計画された「投資」の結果であり、この潤沢な資本がある限り、当面の赤字は全く問題になりません。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
メガバンク系VCがずらりと並ぶ強力な株主構成と、約28億円の潤沢な資金力
・投資の面倒を徹底的に排除した「目標ポートフォリオ」という、革新的でユーザーフレンドリーなサービス設計
財務省マッキンゼーなどを経験した代表が率いる、金融とテクノロジーに精通した優秀な経営チーム
・0.0001株から取引できる小数部取引機能

弱み (Weaknesses)
・2022年設立と歴史が浅く、顧客基盤や預かり資産残高がまだ小さい
・大手ネット証券と比較して、証券会社としてのブランド認知度が低い
・現在は計画的な赤字経営であり、収益化のモデルを早期に確立する必要がある

機会 (Opportunities)
・新NISA制度の開始に伴う、国民的な投資機運の歴史的な高まり
・既存の複雑な金融サービスに不満を持つ、デジタルネイティブな若年層・現役世代の存在
・テクノロジーのさらなる進化による、金融サービスの効率化・低コスト化の可能性

脅威 (Threats)
・圧倒的な顧客基盤、商品ラインナップ、低コストを誇る大手ネット証券(SBI、楽天など)との熾烈な競争
・競合他社による、類似サービスの開発・提供
金融商品取引法などの規制強化や、システム障害・サイバーセキュリティといった固有のリスク
・米国株式市場の長期的な低迷など、投資対象市場の環境悪化


【今後の戦略として想像すること】
「投資をみんなのものに」というミッションの実現に向け、計算された戦略を着実に実行していくと考えられます。

✔短期的戦略
新NISA口座の顧客獲得を最重要課題とし、SNSウェブ広告インフルエンサーマーケティングなどを活用した積極的なプロモーションを展開するでしょう。アプリの使いやすさ(UI/UX)をさらに磨き上げ、一度使えば手放せなくなるような感動的な顧客体験を提供することで、口コミによるオーガニックなユーザー増を目指します。まずは、新しいものに敏感なアーリーアダプター層を中心に熱心なファンを形成し、預かり資産残高を着実に積み上げていくことに注力すると考えられます。

✔中長期的戦略
一定の顧客基盤を確立した後は、サービスの拡充を通じて事業をスケールさせていくでしょう。例えば、投資対象を米国株だけでなく全世界の株式や債券に広げる、iDeCo(個人型確定拠出年金)に対応する、あるいは、より初心者向けに資産運用を完全にお任せできるロボアドバイザー機能を追加する、といった展開が考えられます。最終的には、預かり資産残高の増加に伴う収益(取引手数料や運用報酬の一部など)で先行投資を回収し、黒字化を達成。「次世代の金融インフラ」として、日本の資産形成市場で独自の確固たる地位を築くことを目指します。


【まとめ】
ブルーモ証券は、単なる新しいネット証券の一つではありません。それは、テクノロジーの力で「投資をみんなのものに」という壮大なミッションを実現し、日本の「貯蓄から投資へ」という歴史的な転換を、国民一人ひとりのレベルで本気で後押ししようとするFinTechの挑戦者です。決算書が示す約2.5億円の赤字は、失敗の証ではなく、未来の大きな成長の果実を得るために撒かれた「種」に他なりません。強力な株主の支援のもと、これから資産形成を始める現役世代の強力な伴走者となり、誰もが安心して未来に自信を持てる社会を創る、新しい金融インフラへと成長していくことが大いに期待されます。


【企業情報】
企業名: ブルーモ証券株式会社
所在地: 東京都中央区日本橋兜町5-1 FinGATE BASE 404
代表者: 代表取締役社長 中村 仁
設立: 2022年6月9日
資本金: 100,000千円
事業内容: 第一種金融商品取引業スマートフォンアプリを通じた有価証券の売買・媒介)
株主: 株式会社三菱UFJイノベーション・パートナーズ、SMBCベンチャーキャピタル株式会社、みずほキャピタル株式会社、グローバル・ブレイン株式会社など

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