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#2669 決算分析 : メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社 第10期決算 当期純利益 182百万円

私たちの豊かな社会は、大量生産・大量消費の上に成り立っていますが、その裏側では日々、膨大な量の廃棄物が生まれています。これらを適切に処理し、再び資源として甦らせる「静脈産業」は、持続可能な社会を築く上で不可欠な存在です。メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社は、まさにこの社会の根幹を支える企業。産業廃棄物の処理から、鉄や非鉄金属スクラップのリサイクル、さらにはアスベストの適正処理まで、幅広い領域で環境ソリューションを提供しています。同社は、総合環境企業の大栄環境と、金属リサイクルのリバーという、業界大手2社のジョイントベンチャーとして設立されました。今回は、この強力なバックボーンを持つリサイクル・廃棄物処理のプロフェッショナル集団の決算を読み解きます。

今回は、環境ソリューション業界の雄、メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社の決算を読み解き、そのビジネスモデルや戦略をみていきます。

メジャーヴィーナスジャパン決算

【決算ハイライト(第10期)】
資産合計: 1,312百万円 (約13.1億円)
負債合計: 271百万円 (約2.7億円)
純資産合計: 1,040百万円 (約10.4億円)

当期純利益: 182百万円 (約1.8億円)

自己資本比率: 約79.3%
利益剰余金: 940百万円 (約9.4億円)

まず驚くべきは、自己資本比率が約79.3%という極めて高い水準にあることです。これは財務基盤が非常に強固で、実質的に無借金に近い健全経営が行われていることを示しています。設立10期目にして、純資産は約10.4億円、中でも利益剰余金が約9.4億円にも達しており、創業以来、高い収益性を維持し、安定的に利益を積み重ねてきた超優良企業であることが明確です。当期純利益も約1.8億円と、その事業規模に対して非常に高く、盤石の経営基盤の上で高い収益性を実現しています。

企業概要
社名: メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社
設立: 2015年12月
株主: 大栄環境株式会社 50%、リバー株式会社 50%
事業内容: 鉄鋼原料の集荷加工・販売、産業廃棄物・特別管理産業廃棄物の収集運搬・処理処分、金属くず・古物の売買

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【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、企業の事業活動から発生する様々な廃棄物や有価物を、法令に則って適正に処理し、最大限資源として再利用する「総合リサイクル・廃棄物処理事業」です。株主である大手2社の強みを融合させています。

✔リサイクル・廃棄物処理事業
事業の中核であり、様々な品目の産業廃棄物の中間処理を行います。顧客から排出された廃棄物を自社の施設で破砕・選別などの処理を施し、リサイクル可能なものは資源として再生させ、最終処分が必要なものは埋立処分場などへ安全に運搬します。

✔スクラップの処分・買取事業
鉄、銅、アルミニウム、ステンレスといった金属スクラップや、使用済みの産業機械、電子機器などを有価物として買い取ります。買い取ったスクラップは、加工処理を施した上で、製鋼原料などとして国内外のメーカーに販売します。これが大きな収益源の一つとなっています。

アスベスト積替保管事業
解体工事などで発生する、人体に有害なアスベスト含有廃棄物の収集運搬および、最終処分場へ運ぶまでの中間的な保管(積替保管)を行います。専門的な知識と厳格な管理体制が求められる、社会的に非常に重要な事業です。

✔大手2社によるジョイントベンチャー
同社の最大の強みは、株主構成にあります。
・大栄環境株式会社:関西を地盤とする総合環境ソリューション企業。廃棄物処理・リサイクルの幅広いノウハウとネットワークを持つ。
・リバー株式会社:金属リサイクルの大手。鉄スクラップの加工処理と、国内外への販売網に強みを持つ。
この2社の強力なバックボーンにより、営業面、技術面、資金面で絶大なシナジー効果を発揮しています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
循環型社会への移行は、世界的な潮流であり、日本政府もカーボンニュートラルやプラスチック資源循環などを強力に推進しています。これにより、廃棄物のリサイクル率向上や、再生資源の利用拡大が社会全体で求められており、同社のような専門企業への需要は今後ますます高まることが予想されます。一方で、金属スクラップの価格は、国際市況や為替レートに大きく影響されるため、市況の変動が業績に与えるリスクも存在します。

✔内部環境
同社は、大栄環境とリバーという両株主からの安定した顧客紹介や、共同での大口案件の受注など、強力な営業基盤を有していると推察されます。自己資本比率79.3%という盤石の財務基盤は、大規模な処理施設の設備投資や、市況変動に対する高いリスク耐性をもたらしています。設立から10年で築き上げたこの財務内容は、両株主の強力なサポートと、事業そのものの高い収益性の賜物でしょう。

✔安全性分析
自己資本比率が約79.3%と極めて高く、財務的な安全性は万全です。負債合計が約2.7億円と少なく、これをはるかに上回る約9.4億円の利益剰余金を有しています。短期的な支払い能力を示す流動比率も、流動資産(約10億円)が流動負債(約2.5億円)の約4倍もあり、約394%と驚異的な高さです。資金繰りにも全く不安はなく、財務的には鉄壁と言えるでしょう。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・大栄環境とリバーという、業界大手2社を株主に持つことによる、圧倒的な信用力、営業基盤、技術力
自己資本比率79.3%を誇る、極めて強固で盤石な財務基盤
廃棄物処理から金属リサイクル、アスベストまで対応できる、総合的なソリューション提供能力
・東京・新木場という、首都圏の物流の要衝に拠点を構える立地優位性

弱み (Weaknesses)
・金属スクラップの国際市況や為替変動に業績が左右されるリスク
・両株主会社との事業領域の調整が必要となる場面がある可能性

機会 (Opportunities)
カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー(循環経済)への社会的な要請の高まり
・都市部の再開発やインフラ更新に伴う、建設系廃棄物や金属スクラップの発生量増加
・廃プラスチックやリチウムイオン電池など、新たなリサイクル対象品目の拡大
M&Aによる、事業エリアの拡大や、新たな処理技術の獲得

脅威 (Threats)
・金属スクラップ価格の急落
廃棄物処理に関する法規制の強化と、それに伴うコンプライアンスコストの増加
・処理施設の維持・更新にかかる、大規模な設備投資の必要性
・同業他社との、廃棄物や有価物の獲得競争の激化


【今後の戦略として想像すること】
圧倒的な経営基盤を持つ同社が、今後さらなる成長を遂げるためには、以下の戦略が考えられます。

✔短期的戦略
首都圏におけるシェアをさらに拡大するため、両株主のネットワークを最大限に活用し、大手ゼネコンやメーカーとの取引を強化していくでしょう。また、処理能力の向上や効率化を図るための設備投資を、潤沢な自己資金を元手に積極的に行っていくことが考えられます。

✔中長期的戦略
「総合資源循環企業」への進化がテーマとなります。現在は鉄スクラップが中心ですが、今後は廃プラスチックのマテリアルリサイクルや、使用済みEVバッテリーからのレアメタル回収など、より高度で社会的な要請の強いリサイクル分野へ事業を拡大していくことが期待されます。将来的には、両株主のアセットを活用し、関東圏だけでなく、全国規模でのリサイクルネットワークの中核を担う存在へと成長していく可能性を秘めています。


【まとめ】
メジャーヴィーナス・ジャパンは、単なる廃棄物処理会社やスクラップ業者ではありません。それは、大栄環境の「環境再生のプロ」としての知見と、リバーの「金属資源循環のプロ」としての知見を融合させ、持続可能な社会の実現に貢献する、新時代の環境ソリューション企業です。今期決算では、自己資本比率79.3%という圧巻の財務内容で、その揺るぎない安定性と高い収益性を見せつけました。環境問題への関心が世界的に高まる中、同社が担う社会的役割はますます重要になります。これからも、業界のサラブレッドとして、日本の資源循環を力強く牽引していくことが期待されます。


【企業情報】
企業名: メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社
所在地: 東京都江東区新木場四丁目2番21号
代表者: 代表取締役 渡辺 弘三
設立: 2015年12月
資本金: 1億円
事業内容: 鉄鋼原料の集荷加工及び販売、産業廃棄物・特別管理産業廃棄物の収集運搬業及び処理処分業、産業廃棄物・特別管理産業廃棄物の再生業及び再生品の販売、金属くず及び古物の売買
株主: 大栄環境株式会社 50%、リバー株式会社 50%

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