決算公告データ倉庫

決算公告を自分用に収集し保管している倉庫。あくまで自分用であり、引用する決算公告を除き内容の正確性/真実性を保証できない点はご容赦ください。


#1887 決算分析 : 株式会社スギノマシン 第69期決算 当期純利益 2,691百万円


「水」で金属を切り、「水」で精密部品を洗い、「水」で化粧品の原料をナノレベルまで砕く。富山県滑川市に本社を置く株式会社スギノマシンは、「水」をはじめとする流体技術を極限まで高め、世界中のものづくりを革新する産業機械メーカーです。創業は1936年、国産初の「チューブクリーナ」開発から始まったその歴史は、常に未知の領域へ挑戦する技術者魂そのものです。今回は、この知られざる「超技術」集団の決算公告を深く読み解きます。そこには、売上高250億円に対し、約27億円もの純利益を上げる、圧倒的な収益力が示されていました。地方から世界へ挑む「グローカルニッチリーダー」の、強さの秘密に迫ります。

今回は、「真心創り・もの創り・未来創り」をミッションに掲げ、独自の「超技術」で社会に貢献する株式会社スギノマシンの決算を読み解き、その事業内容と圧倒的な経営基盤をみていきます。

スギノマシン決算

決算ハイライト(第69期)
資産合計: 55,266百万円 (約552.7億円)
負債合計: 10,737百万円 (約107.4億円)
純資産合計: 44,529百万円 (約445.3億円)

売上高: 25,051百万円 (約250.5億円)
当期純利益: 2,691百万円 (約26.9億円)

自己資本比率: 約80.6%
利益剰余金: 40,577百万円 (約405.8億円)

 

まず驚愕させられるのは、その傑出した財務の健全性と、極めて高い収益性です。自己資本比率は約80.6%と、製造業としては異次元とも言えるほどの水準であり、実質的な無借金経営を達成しています。そして、売上高約251億円に対し、営業利益約40億円、当期純利益約27億円と、営業利益率15%を超える非常に高い収益力を誇ります。約406億円にも積み上がった利益剰余金は、長年にわたり高収益を維持し、それを着実に内部留保としてきた、技術主導型企業の理想的な経営モデルを物語っています。

 

企業概要
社名: 株式会社スギノマシン
設立: 1956年4月6日(創業: 1936年3月1日)
事業内容: 「切る・削る・洗う・磨く・砕く・解す」の6つの「超技術」を核とした、各種産業用機械・装置の開発、設計、製造、販売。

www.sugino.com

 

【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、特定の業界に依存せず、独自のコア技術を多様な産業分野へ横展開する「技術主導型」のビジネスモデルを特徴としています。

✔6つの「超技術」によるソリューション提供
同社は、自社の強みを6つの「超技術」として定義し、事業を展開しています。

切る (超高圧水切断): 水を最高6,000気圧まで高めて噴射し、金属から食品まであらゆるものを切断する「ウォータージェットカッター」。熱影響がなく、環境にも優しい最先端の切断技術です。

削る (精密加工): 自動車のエンジン部品などを高精度に加工する「マシニングセンタ」や、穴あけ・ねじ立てを行う「セルフフィーダ」。

洗う (高圧洗浄): 高圧水を噴射し、自動車部品などに付着した微細なバリや切りくずを精密に洗浄・除去する「高圧水バリ取り洗浄機」。

磨く (鏡面仕上): ローラーで金属表面を押し均し、鏡のような滑らかさに仕上げる「スーパロール」。表面を美しくするだけでなく、部品の耐久性も向上させます。

砕く (湿式微粒化): 水の力を利用して、医薬品や化粧品、電子材料の原料をナノレベルの微粒子にまで粉砕する「スターバースト」。素材の特性を最大限に引き出します。

解す (ナノファイバー化): セルロースなどの天然資源を、独自の技術で直径20ナノメートルレベルの極細繊維「バイオマスナノファイバー」に解きほぐします。

✔創業の精神「自ら考え、自ら造り、自ら販売・サービスする」
同社は、製品の企画開発から、設計、製造、販売、そしてアフターサービスまで、すべてを自社で行うことを創業以来の哲学としています。これにより、顧客の深いニーズを直接製品開発に活かすことができ、高品質な製品と迅速なサービス提供を両立させています。この一貫体制こそが、他社の追随を許さない「超技術」を生み出す土壌となっています。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
同社が事業を展開する市場は、自動車、航空機、医療・化粧品、食品、エネルギー、電子機器と、極めて多岐にわたります。この幅広い事業ポートフォリオが、特定の業界の景気変動に左右されない、非常に安定した経営基盤を構築しています。近年では、世界的なカーボンニュートラルの潮流が、同社の省エネルギーな加工技術や、水素ステーション向け耐圧試験装置、バイオマスナノファイバーといった環境関連技術への追い風となっています。

✔内部環境
圧倒的な技術開発力と、それを支える強固な財務基盤が、同社の最大の強みです。利益剰余金が400億円以上あるということは、景気後退期においても研究開発の手を緩めることなく、長期的な視点で次世代の「超技術」に投資し続けることができる、ということです。また、「グローカルニッチリーダー」というビジョンを掲げ、富山県という地方に本社・工場を置きながらも、世界中に販売・サービス網を展開。地方の優れたものづくりと、グローバルな市場を直結させる、独自のビジネスモデルを確立しています。

✔安全性分析
財務安全性は、これ以上ないほど「盤石」です。自己資本比率が80%を超え、事実上の無借金経営であるため、倒産リスクは皆無です。豊富な手元資金と安定したキャッシュフロー創出力は、顧客にとって、長期にわたる装置のサポートやメンテナンスを安心して任せられる、絶大な信頼の証となっています。この財務的な体力が、新たな挑戦を恐れない企業文化を育んでいます。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・「切る・削る・洗う・磨く・砕く・解す」という、模倣困難で多岐にわたる独自の「超技術」群
自己資本比率80%超、利益剰余金400億円超という、圧倒的に強固な財務基盤
・多様な産業分野に顧客を持つことによる、優れたリスク分散能力
・「自ら考え、造り、販売する」一貫体制による、高い顧客対応力と技術開発力

弱み (Weaknesses)
・製品が多岐にわたるため、経営資源が分散しやすい
・最先端の産業機械であるため、顧客への導入・提案に高度な技術知識が求められる
・労働集約的な側面もあり、高度なスキルを持つ技術者・技能者の育成に時間がかかる

機会 (Opportunities)
・EV、半導体、医療、食品など、あらゆる産業における製造プロセスの高度化・精密化へのニーズ
カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーといった、世界的な環境意識の高まり
バイオマスナノファイバーなど、植物由来の新素材に対する、脱プラスチックの代替需要
・製造業におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)や自動化への投資拡大

脅威 (Threats)
・世界的な景気後退による、企業の設備投資の抑制・凍結
・国内外の競合メーカーとの、熾烈な技術開発競争
・技術の陳腐化のスピードの速さ
・大規模な自然災害による、工場の被災やサプライチェーンの寸断リスク

 

【今後の戦略として想像すること】
グローカルニッチリーダー」として、同社は今後も技術主導の成長を続けていくでしょう。

✔短期的戦略
既存の6つの「超技術」をさらに深化させ、各技術を組み合わせた複合的なソリューション提案を強化していくことが考えられます。例えば、「砕く」技術で開発した新素材を、「切る」技術や「磨く」技術で精密加工するといった、スギノマシンにしかできない付加価値を提供し、収益性をさらに高めていきます。

✔中長期的戦略
バイオマスナノファイバー」のような、環境貢献型の新素材事業を、将来の大きな収益の柱として育成していくことが期待されます。これは、従来の「機械を売る」ビジネスから、「素材を売る」ビジネスへの大きな転換を意味し、事業ポートフォリオをさらに強固なものにします。また、盤石な財務基盤を活かし、自社の技術を補完するような、国内外の技術系スタートアップへのM&Aや出資も、成長戦略の選択肢として考えられます。

 

まとめ
株式会社スギノマシンの第69期決算は、約27億円の純利益と自己資本比率80%超という、地方に拠点を置く技術主導型企業の、驚異的な実力を示すものでした。その強さの秘密は、創業以来受け継がれる「自ら考え、造り、販売する」という哲学と、そこから生まれた6つの「超技術」にあります。特定の業界に依存せず、常に技術を磨き、新たな市場を創造し続ける。この終わりなき挑戦こそが、80年以上にわたり高収益を維持し、400億円もの利益剰余金を築き上げた原動力です。スギノマシンは、これからも富山の地から、世界のものづくりを根底から変える「すごい!」を生み出し続けていくことでしょう。

 

企業情報
企業名: 株式会社スギノマシン
所在地: 富山県滑川市栗山2880番地
代表者: 代表取締役社長 杉野 岳
設立: 1956年4月6日
資本金: 2,324,675千円
事業内容: 高圧ジェット洗浄装置、超高圧水切断装置、湿式・乾式微粒化装置、マシニングセンタ、鏡面仕上工具、バイオマスナノファイバー、産業用ロボット等の開発・設計、製造、販売。

www.sugino.com

©Copyright 2018- Kyosei Kiban Inc. All rights reserved.