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#5423 決算分析 : 株式会社エムアンドエムサービス 第28期決算 当期純利益 481百万円

かつて、多くの企業が社員の福利厚生の象徴として「保養所」や「研修所」を保有していました。しかし、時代の変化と共にその維持は難しくなり、多くの施設が遊休資産となっています。一方で、働き方改革ウェルビーイング経営が叫ばれる現代において、社員の心身を癒し、エンゲージメントを高める「上質な場」の価値は、むしろ再評価されつつあります。

今回は、まさにこの企業の福利厚生施設(保養所)の運営受託からスタートし、そこで培った「おもてなし」のノウハウを昇華させ、「里山の休日 京都・烟河」や「八ヶ岳 ホテル風か」といった、ミシュランガイドにも掲載されるほどの高品質な自社ホテル(施設経営)を運営するまでに成長した、ホスピタリティのプロフェッショナル集団、株式会社エムアンドエムサービスの決算を読み解きます。

2023年には、代表取締役社長の小池悟氏によるMBO(経営陣による買収)を経て、大手資本から独立。新たなスタートを切った同社が、どのような経営戦略を描き、驚異的な収益性を実現しているのか、その秘密に迫ります。

エムアンドエムサービス決算

【決算ハイライト(28期)】
資産合計: 3,468百万円 (約34.7億円) 
負債合計: 1,278百万円 (約12.8億円) 
純資産合計: 2,190百万円 (約21.9億円) 

当期純利益: 481百万円 (約4.8億円) 
自己資本比率: 約63.2% 
利益剰余金: 2,160百万円 (約21.6億円)

【ひとこと】
まず驚かされるのは、純資産合計が約21.9億円、自己資本比率が63.2%という鉄壁の財務基盤です。利益剰余金も約21.6億円と極めて潤沢に積み上がっています。当期純利益も4.8億円と非常に高い収益性を確保しており、MBOによる新体制が極めて順調に、そして力強くスタートを切ったことが伺えます。

【企業概要】
社名: 株式会社エムアンドエムサービス 
設立: 1997年9月 
株主: 株式会社エムアンドエムホスピタリティ (親会社) 
事業内容: 保養所等の運営受託、ホテル・旅館の施設経営、コンサルタント

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【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、ホスピタリティの提供形態によって大きく3つの柱で構成されています。

✔施設運営受託事業(創業事業) 
同社のルーツであり、企業の保養所、迎賓館、研修所など、福利厚生施設の運営を丸ごと引き受けるストック型のビジネスです。1997年の創業以来、この事業で培った信頼は厚く、2024年4月時点で37施設を運営しています。

この事業の最大の強みは、同社が標榜する「ALL in ONEサービス」です。通常、施設運営は清掃、警備、食事提供などが個別に外部委託(孫請け)されがちですが、同社はそれらを一括で自社管理します。人財育成、食の提供、保守メンテナンスまでをワンストップで手掛けることで、コストの最適化はもちろん、迅速なサービス改善と高品質な「おもてなし」を実現しています。

✔施設経営事業(成長ドライバー) 
受託運営で培った高品質なオペレーション能力を活かし、自社で施設を取得・運営する事業です。これが現在の同社の「顔」であり、成長ドライバーとなっています。

・2003年: 直営施設第一号「里山の休日 京都・烟河」(現本社所在地) ・2005年: 第二の直営施設「八ヶ岳 ホテル風か」 ・2009年: 「里創人 熊野倶楽部」

これらの施設は、いずれもミシュランガイドに掲載されるなど、極めて高い評価を獲得しています。「地産地消にこだわった旬な食材」を活かす「食の探求」と、独自の育成システムによる「人財育成」が、高い顧客満足度と収益性を両立させています。

✔ホテル・旅館 伴走型コンサルタント事業 
上記2事業で蓄積した「人財育成」「食の探求」「独自の集客ノウハウ」「保守メンテナンス」といった成功のDNAを、外部のホテル・旅館に提供する事業です。単なる机上のコンサルティングではなく、"ALL in ONE"で培った現場のオペレーション改善力で、クライアントと「伴走」するスタイルが特徴です。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境 
コロナ禍は、旅行業界に「質」への転換を決定的に促しました。単なる安さや利便性ではなく、「そこでしか味わえない体験」や「心からのおもてなし」への需要が明確に高まっています。同社が強みとする、地産地消の「食」や、ゆったりとした「空間」は、まさにこの市場のニーズと合致しています。 また、企業の福利厚生においても、「ウェルビーイング経営」の観点から、社員が真にリフレッシュできる「上質な場」の価値が見直されており、同社の受託事業にも追い風となり得ます。

✔内部環境 (MBOの効果と驚異的な収益性) 
第28期決算における当期純利益4.8億円は、純資産約21.9億円に対し、ROE自己資本利益率)換算で約22%という、非常に高い数値を叩き出しています。

これは、2023年に社長の小池悟氏がMBOマネジメント・バイアウト)を敢行したことと無縁ではありません。2012年から三井松島HD、2020年から大和証券グループと、大手資本傘下で培った強固なガバナンスや経営管理ノウハウと、創業以来の「おもてなし」のDNA。これらが、MBOによる「資本と経営の一体化」によって真に融合し、迅速な意思決定と現場の高いパフォーマンスとして結実していると強く推測されます。

✔安全性分析 (鉄壁の財務基盤) 
同社のBS(貸借対照表)は、その経営の「質」を如実に物語っています。自己資本比率63.2%という数値は、一般の製造業と比べても高く、ホテル・旅館業としては驚異的な水準です。

固定資産が約19.1億円計上されていますが、これは主に「京都・烟河」や「八ヶ岳 ホテル風か」といった自社運営施設(土地・建物)と考えられます。そして、これらの資産を上回る約21.6億円の「利益剰余金」を保有しています。 これは、M&Aや設備投資を借入に頼るのではなく、事業で稼いだ利益(自己資本)で賄えていることを示しており、極めて低いリスクでの事業運営を可能にしています。

この「鉄壁の財務」こそが、景気変動の影響を受けやすい観光業において、目先の客引きやコストカットに走らず、「食の探求」や「人財育成」といった、長期的な品質向上への投資を可能にする最大の源泉となっています。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths) 
・「受託」と「自社経営」の両輪による、景気耐性の高い安定した収益構造 
ミシュラン掲載に象徴される、高品質な「おもてなし」「食」の高いブランド力 
自己資本比率63.2%、利益剰余金21.6億円という鉄壁の財務基盤 
MBOによる、迅速かつ現場と一体化した経営体制 
・"ALL in ONE"で培った高効率なオペレーション能力と人財育成ノウハウ

弱み (Weaknesses) 
・高品質なサービスを維持するため、「人財」への依存度が高く、採用・教育コストが継続的にかかる 
・創業事業である「受託事業」の顧客(企業)が固定化しやすく、新規開拓が課題となる可能性

機会 (Opportunities) 
・インバウンド需要の本格回復と、円安を背景とした「質の高い日本体験」への需要増 
ウェルビーイング経営の広まりによる、上質な保養所・研修所の運営ニーズ 
・後継者不足に悩む地方の優良な旅館・ホテルへの、コンサルティングや運営受託、さらにはM&A(事業承継)の機会

脅威 (Threats) 
・観光業・サービス業全体の人手不足の深刻化と人件費の高騰 
地産地消の「食」を直撃する、エネルギーコストや食材費の高騰 
・景気後退による、企業の福利厚生予算の削減や、個人の旅行マインドの冷え込み

 

【今後の戦略として想像すること】
この強固な財務と事業基盤を踏まえ、MBO後の同社の戦略は、極めて「攻め」の姿勢であると想像されます。

✔短期的戦略 
当期純利益4.8億円という高い収益力を維持しつつ、積み上がった利益剰余金(21.6億円)を「人財」へ積極的に再投資することが最優先課題です。サービス業の根幹は「人」であり、採用の強化はもちろん、既存スタッフのロイヤリティ向上(待遇改善やキャリアパス整備)にこの潤沢な資金を投下し、人手不足の時代における「選ばれる職場」としての地位を確立します。 同時に、「食の探求」をさらに進め、原価高騰を吸収できるだけの「高付加価値」な宿泊プランを開発し、客単価の維持・向上を図ります。

✔中長期的戦略 
MBOの真価が問われる中長期フェーズでは、この「鉄壁の財務」が最大の武器となります。21.6億円の内部留保を元手に、第3、第4の「京都・烟河」「八ヶ岳 ホテル風か」となるような、ポテンシャルを秘めた施設(特に後継者不足に悩む地方の優良旅館など)の取得(M&A)や再生を加速させるでしょう。

また、「施設運営受託事業」で培った企業ネットワークと、「施設経営事業」で培った再生ノウハウを組み合わせ、「伴走型コンサル事業」を本格的な収益の柱に育てていくことが予想されます。例えば、企業の「遊休保養所」を同社が運営(あるいは買取り)、リノベーションを施し、一般客も利用できる高級宿として再生させるようなスキームは、同社ならではの強みが最大限に発揮される領域です。

 

【まとめ】
株式会社エムアンドエムサービスは、単なるホテル運営会社や保養所管理会社ではありません。それは、「人財育成」と「食の探求」というおもてなしの本質を武器に、施設の価値を最大化する「ホスピタリティ・ソリューション企業」です。

創業の「運営受託」で安定した基盤を築き、そのノウハウを「施設経営」へと昇華させ、ミシュランの評価を得るまでに成長。そして2023年、MBOによって資本と経営が一体となり、第28期決算では純利益4.8億円、自己資本比率63.2%という卓越した結果を示しました。

潤沢な利益剰余金(21.6億円)は、同社が目先の利益にとらわれず、人とおもてなしに長期的な投資を続けるための「信頼の証」であり、未来への「投資原資」です。

これからも、「ALL in ONEサービス」で培った現場力を武器に、日本各地に眠る隠れた資産(施設・人財)に新たな命を吹き込み、私たちに豊かな時間を提供し続けることが期待されます。

 

【企業情報】
企業名: 株式会社エムアンドエムサービス 
所在地: 京都府亀岡市本梅町平松泥ヶ渕1番地1
代表者: 代表取締役社長 小池 悟 
設立: 1997年9月1日 
資本金: 30百万円 
事業内容: 保養所、迎賓館、研修所の運営受託事業及び運営に関するコンサルタント業、ホテル、旅館及びレストラン、飲食店業、人材派遣業、食材等の販売業 
株主: 株式会社エムアンドエムホスピタリティ (親会社)

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