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#4066 決算分析 : 株式会社近藤組 第72期決算 当期純利益 507百万円

私たちが日々の生活で利用する道路や橋、働くオフィスビルや工場、そして家族と過ごす大切な我が家。これらの社会インフラから個人の住まいまで、私たちの暮らしのあらゆる場面は「建設」という事業によって支えられています。特に、一つの地域に深く根ざし、70年以上にわたってその街の発展と共に歩んできた総合建設会社は、もはや単なる企業ではなく、地域の歴史を創り上げてきたパートナーと言えるでしょう。

今回は、愛知県刈谷市を拠点とする近藤グループの母体企業、株式会社近藤組の決算を読み解きます。売上高155億円を超える地場ゼネコンの雄が築き上げた、90億円超という驚異的な内部留保と、その揺るぎない経営の安定性の秘密に迫ります。

近藤組決算

【決算ハイライト(72期)】
資産合計: 17,794百万円 (約177.9億円)
負債合計: 7,935百万円 (約79.4億円)
純資産合計: 9,859百万円 (約98.6億円)

当期純利益: 507百万円 (約5.1億円)

自己資本比率: 約55.4%
利益剰余金: 9,026百万円 (約90.3億円)

【ひとこと】
自己資本比率約55.4%、そして利益剰余金は90億円超という、極めて盤石な財務基盤がすべてを物語っています。まさに「超」優良企業です。売上高155億円に対し、純利益5億円超(売上高当期純利益率3%超)と、建設業として高い収益性も維持しており、70年以上の歴史が築いた信頼と実力がうかがえます。

【企業概要】
社名: 株式会社近藤組
設立: 1953年(創業1949年)
事業内容: 愛知県刈谷市を本拠とする総合建設会社(ゼネコン)。土木、建築、住宅、不動産開発の4大事業を柱に、官公庁から民間企業、個人まで、地域の社会インフラ整備と生活環境づくりを包括的に担う、近藤グループの母体企業。

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【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、創業以来70年以上にわたり培ってきた建設技術と地域からの厚い信頼を基盤に、社会インフラから個人の住まいまで、あらゆる「建設」に関するニーズにワンストップで応える「総合建設エンジニアリング事業」として構成されています。

✔土木事業
同社の創業事業であり、経営の原点です。道路、橋梁、河川、上下水道といった、人々の暮らしに不可欠な社会資本(インフラ)の整備を手掛けています。国や愛知県、市町村といった官公庁を主な顧客とし、地域の安全・安心な暮らしの土台を築き、経済活動を支えています。

✔建築事業
オフィスビル、工場、商業施設、学校、医療・福祉施設など、民間から官公庁まで、多種多様な建築物の設計・施工を行っています。200名を超える技術スタッフを擁し、その豊かな経験と実績に裏打ちされた高い技術力で、顧客の事業活動に最適な空間を提供します。

✔住宅事業
「家族の幸せと安心な暮らしを守り続ける家づくり」をテーマに、個人向けの注文住宅の請負や、分譲住宅・マンションの開発・販売を手掛けています。知立市にあるショールーム「ヒトイエ」を拠点に、地域住民の「夢のマイホーム」という“こころ”を“かたち”にしています。

✔不動産開発事業
土地の有効活用をトータルにサポートする事業です。土地の仕入れから、市場調査、事業企画、設計、建設、そして完成後の販売や賃貸まで、グループの総合力を活かして不動産の価値を最大化します。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
建設業界は、インフラの老朽化対策や国土強靭化計画による公共投資が底堅く推移する一方、民間では企業の国内回帰に伴う工場建設や、都市部の再開発などが需要を牽引しています。しかし、建設資材価格の高騰や、職人・技術者の高齢化と深刻な人手不足は、業界全体が直面する大きな経営課題です。

✔内部環境
90億円を超える莫大な利益剰余金が象徴するように、圧倒的な財務基盤が同社の最大の強みです。 これにより、大規模な建設プロジェクトを受注するために不可欠な社会的信用力と、先行投資に耐えうる強靭な資金力を確保しています。売上高155億円に対し、当期純利益5億円超(売上高当期純利益率約3.2%)という高い収益性は、官公庁から民間、法人から個人まで、多様な顧客を持つ安定した事業ポートフォリオと、長年の経験に裏打ちされた高い施工管理能力・コスト管理能力の賜物と言えるでしょう。

✔安全性分析
財務の安全性は「鉄壁」という言葉がふさわしいレベルです。 自己資本比率が約55.4%と、建設業の平均を大きく上回る極めて高い水準にあります。短期的な支払い能力を示す流動比率も約177%と高く、資金繰りにも全く問題はありません。そして何より、資本金1億円に対し、その90倍以上にも達する約90億円の利益剰余金は、創業以来70年以上にわたり、浮き沈みの激しい建設業界で一貫して黒字経営を続け、利益を堅実に内部留保してきた歴史の動かぬ証拠です。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
自己資本比率55%超、利益剰余金90億円超という、圧倒的に強固な財務基盤
・70年以上の歴史で培った、官公庁から民間まで幅広い顧客からの厚い信頼と豊富な施工実績
・土木、建築、住宅、不動産開発と、建設に関わるあらゆるニーズにワンストップで応えられる総合力
・近藤工業(自動車部品、駐車場など)やプラスワン(リフォーム)といった、グループ会社との連携による事業シナジーの可能性

弱み (Weaknesses)
・事業エリアが愛知県を中心としており、地域経済の動向(特に自動車産業の設備投資など)に業績が左右されやすい
・建設業界全体が抱える構造的な課題である、技術者や技能労働者の高齢化と、若手人材の確保・育成

機会 (Opportunities)
・国土強靭化計画の継続的な推進や、リニア中央新幹線関連工事などによる、公共投資の安定した需要
・企業の国内生産拠点への回帰や、物流倉庫の建設需要の拡大
・ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)といった、環境配慮型建築への関心の高まりと、それに伴う補助金制度の活用

脅威 (Threats)
・建設業界における人手不足のさらなる深刻化と、それに伴う労務費の急騰
・鋼材やセメント、木材といった建設資材価格の継続的な高騰による、工事利益率の圧迫
・大手ゼネコンや地場の競合他社との厳しい受注競争


【今後の戦略として想像すること】
盤石な経営基盤と総合力を活かし、さらなる成長と事業領域の深化を目指すと考えられます。

✔短期的戦略
引き続き、既存の4大事業の足元を固め、安定した収益を確保していくでしょう。特に、官公庁からの公共工事や、主要顧客である民間企業からの設備投資案件を確実に受注していくことが最優先事項となります。同時に、ICT建機やBIM/CIMといった建設DX(デジタルトランスフォーメーション)への投資を継続し、生産性の向上と働き方改革を推進します。

✔中長期的戦略
圧倒的な財務基盤を活かし、建設業の枠を超えた、近藤グループ全体でのシナジー創出を本格化させるでしょう。例えば、グループ会社のエナジーKと連携し、自社で建設する工場や商業施設に太陽光発電システムを標準搭載する提案を強化する。また、近藤工業と連携し、建設現場の生産性を向上させる新たな機材や工法を共同開発することも考えられます。豊富な自己資金を元に、新たな建設技術を持つスタートアップへの出資や、事業エリアを補完する同業者のM&Aも、有力な成長戦略の選択肢となるでしょう。


【まとめ】
株式会社近藤組は、単なる建設会社ではありません。それは、1949年の創業以来、愛知県を拠点に、道路や橋といった社会の「骨格」から、工場やオフィス、そして人々の「住まい」まで、地域社会のあらゆる“かたち”を創り上げてきた「総合生活環境創造企業」です。官報が示す90億円超の利益剰余金は、70年以上にわたる同社の誠実な仕事と、揺るぎない信頼の積み重ねに他なりません。「“こころ”を“かたち”に」をスローガンに、これからも、その盤石な経営基盤とグループの総合力を武器に、地域のリーディングカンパニーとして社会の期待に応え続け、建設業の枠を超えた新たな価値創造に挑戦していくことが期待されます。


【企業情報】
企業名: 株式会社近藤組
所在地: 愛知県刈谷市里山町伐払123番地
代表者: 代表取締役社長 近藤 純子
設立: 1953年12月25日(創業:1949年10月19日)
資本金: 100,000千円
事業内容: 総合建設業(土木・建築・舗装・造園等設計施工全般)、住宅事業、不動産開発事業
株主: 近藤グループ

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