決算公告データ倉庫

決算公告を自分用に収集・コメントし保管する倉庫。あくまで自分用であり、引用する決算公告を除き内容の正確性/真実性を保証できない点はご容赦ください。

#2663 決算分析 : 泉レストラン株式会社 第71期決算 当期純利益 35百万円

高層オフィスの絶景を望むカフェ、伝統と創作が融合する和食ダイニング、そして企業の祝賀会を彩る華やかなケータリングサービス。これらの「食」のシーンを、長年にわたり提供し続けてきたのが泉レストラン株式会社です。1955年に本格フランス料理店として創業した同社は、現在、総合デベロッパーである住友不動産の100%子会社として、その事業領域を大きく広げています。住友不動産が開発・運営するオフィスビルを中心に、レストランやカフェ、ビル内コンビニ「リーベンハウス」を展開し、そこで働く人々の胃袋と心を満たしています。今回は、このデベロッパー系飲食サービス企業の決算を読み解き、その盤石な経営と独自の成長戦略に迫ります。

今回は、住友不動産グループの飲食サービス事業を担う、泉レストラン株式会社の決算を読み解き、そのビジネスモデルや戦略をみていきます。

泉レストラン決算

【決算ハイライト(第71期)】
資産合計: 2,811百万円 (約28.1億円)
負債合計: 577百万円 (約5.8億円)
純資産合計: 2,234百万円 (約22.3億円)

当期純利益: 35百万円 (約0.4億円)

自己資本比率: 約79.5%
利益剰余金: 2,213百万円 (約22.1億円)

まず驚くべきは、自己資本比率が約79.5%という極めて高い水準にあることです。これは財務基盤が非常に強固で、実質的に無借金に近い健全経営が行われていることを示しています。総資産約28.1億円に対し、純資産が約22.3億円、中でも利益剰余金が約22.1億円にも達している点は、創業以来、着実に利益を積み重ねてきた優良企業であることの証です。外食産業が厳しい環境に置かれる中でも、安定した経営を続けていることがうかがえます。

企業概要
社名: 泉レストラン株式会社
設立: 1955年11月30日
株主: 住友不動産株式会社(100%出資)
事業内容: 飲食店業務、ケータリング事業、コンビニエンスストア業務、貸会議室運営など

www.izumi-rest.com


【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、親会社である住友不動産との強力な連携を基盤とした、多角的な「フードサービス事業」です。オフィスワーカーや来街者を主な顧客とし、多様な「食」のニーズに応えています。

✔レストラン・カフェ事業
事業の顔となる部門です。天ぷらと鉄板料理が楽しめる「麻布箪笥町 天涼庵」や、ランチビュッフェが人気の「ディナ ギャン ドス」、新宿の高層ビルからの眺望が魅力の「カフェ ド ロア」など、個性的でモダンな店舗を展開しています。多くが住友不動産のビル内に出店しており、立地の良さが強みです。

✔リーベンハウス事業(コンビニエンスストア
同社の事業の大きな柱の一つです。住友不動産が所有・管理するオフィスビルを中心に、ビル内コンビニエンスストア「リーベンハウス」を多数展開しています。オフィスワーカーの日々のニーズに応える品揃えで、ビルの付加価値向上に貢献するとともに、安定した収益基盤となっています。

✔ケータリング事業
1990年から続く歴史ある事業です。企業のレセプションや懇親会、セミナーなどに向け、ホテルビュッフェをイメージした高品質な和洋折衷の料理を提供しています。お弁当のデリバリーも手掛けており、法人向けの多様な食のニーズに対応しています。

住友不動産グループとしてのシナジー
同社のビジネスモデルを理解する上で最も重要なのが、住友不動産の100%子会社であるという点です。これにより、住友不動産が都心に多数開発・保有する最新のオフィスビルという、一等地の出店場所を優先的に確保できます。これは、外食・小売事業において他社にはない圧倒的な競争優位性となっています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
外食産業は、コロナ禍を経て、働き方の変化(リモートワークの普及)や消費者のライフスタイルの多様化に直面しています。オフィス街の飲食店は、出社率の変動に客数が大きく左右されます。また、原材料費や人件費、光熱費の高騰は、利益を圧迫する大きな要因です。一方で、企業のイベント需要は回復傾向にあり、ケータリング市場には追い風が吹いています。

✔内部環境
同社は、親会社である住友不動産との強力なシナジーにより、極めて安定した事業環境を享受しています。優良な立地への出店機会に加え、ビルに入居するテナント企業という膨大な潜在顧客を抱えています。自己資本比率79.5%という鉄壁の財務基盤は、こうした安定したビジネスモデルと、長年の堅実な経営の賜物です。

✔安全性分析
自己資本比率が約79.5%と極めて高く、財務的な安全性は万全です。負債合計約5.8億円に対し、それをはるかに上回る約22.1億円の利益剰余金を有しており、企業体力は申し分ありません。流動資産(約21.3億円)が流動負債(約4.5億円)を4.7倍以上も上回っており、短期的な支払い能力を示す流動比率は約475%と驚異的な高さで、資金繰りにも全く不安はありません。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
住友不動産の100%子会社であることによる、都心一等地の優良な出店立地の確保
自己資本比率79.5%を誇る、極めて強固で安定した財務基盤
・レストラン、コンビニ、ケータリングと、多様なニーズに応える多角的な事業ポートフォリオ
・1955年創業という長い歴史で培われた、食とサービスに関する豊富なノウハウ

弱み (Weaknesses)
住友不動産グループのビルへの出店が中心であり、親会社の事業戦略への依存度が高い
・オフィス街の需要に特化しているため、リモートワークの普及など働き方の変化の影響を受けやすい

機会 (Opportunities)
・企業のイベント需要やインバウンド観光客の回復に伴う、ケータリング事業およびレストラン事業の拡大
・健康志向や多様な食文化(ヴィーガン、ハラル等)に対応した、新たなメニューや業態の開発
・羽田エアポートガーデン店のような、空港や大規模複合施設への出店による新客層の開拓
・デリバリーサービスとの連携強化

脅威 (Threats)
・原材料費、人件費、エネルギーコストの継続的な上昇
・オフィスワーカーの出社率の低下による、平日ランチ・ディナー需要の減少
・コンビニ業界や外食業界における、他社との熾烈な競争
・景気後退局面における、法人交際費や個人消費の抑制


【今後の戦略として想像すること】
強固な経営基盤と独自の強みを持つ同社が、今後さらなる成長を遂げるためには、以下の戦略が考えられます。

✔短期的戦略
既存事業の磨き上げが中心となります。特に回復基調にあるケータリング事業において、企業の多様なイベントニーズ(オンラインとリアルのハイブリッド懇親会など)に対応した新プランを開発・提案していくでしょう。また、「リーベンハウス」においては、セルフレジの導入などによる省人化を進め、収益性をさらに高めていくことが考えられます。

✔中長期的戦略
住友不動産グループのデベロッパー機能を最大限に活用し、事業領域を拡大していくことが期待されます。例えば、住友不動産が手掛ける大規模な複合再開発プロジェクトにおいて、企画段階から参画し、街全体の食の魅力を高めるような店舗構成をプロデュースする役割を担うことです。将来的には、ホテルやサービスアパートメントの料飲部門の運営受託など、グループ内での役割をさらに拡大していく可能性も秘めています。


【まとめ】
泉レストラン株式会社は、単なる飲食店運営会社ではありません。それは、総合デベロッパーである住友不動産と一体となり、都市の魅力と価値を高める「食」のコンテンツを創造する、ユニークな企業です。今期決算では、自己資本比率79.5%という圧巻の財務内容で、その揺るぎない安定性を示しました。親会社が創り出す最高の舞台(立地)で、長年培った食サービスのノウハウを最大限に発揮する。この強力なビジネスモデルを武器に、同社はこれからも、都市で働き、集う人々の生活に、豊かさと潤いを提供し続けてくれることでしょう。


【企業情報】
企業名: 泉レストラン株式会社
所在地: 東京都新宿区西新宿二丁目6番1号 新宿住友ビル33F
代表者: 代表取締役社長 饗場 修
設立: 1955年11月30日
資本金: 2,000万円
事業内容: 飲食店業務、調理及び接客サービスの業務の請負、コンビニエンスストア業務、ホール・貸会議室の運営管理、外食産業に関する総合コンサルティング業務など
株主: 住友不動産株式会社(100%出資)

www.izumi-rest.com

©Copyright 2018- Kyosei Kiban Inc. All rights reserved.