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#1628 決算分析 : 常磐湯本温泉株式会社 第49期決算 当期純利益 10百万円


道後、有馬と並び「日本三古泉」の一つに数えられる、千有余年の歴史を持つ、いわき湯本温泉。かつて常磐炭田の繁栄と共にあり、一時は枯渇の危機に見舞われながらも、炭鉱から湧き出す湯を活かして奇跡の復活を遂げた、ドラマチックな歴史を持つ温泉郷です。その心臓部である源泉を管理し、スパリゾートハワイアンズをはじめとする地域の旅館・ホテルに「命の湯」を安定的に供給し続ける、まさに温泉地のライフラインを担う企業があります。

それが、今回分析する常磐湯本温泉株式会社です。いわき市、湯本財産区、そして常磐興産(スパリゾートハワイアンズ運営会社)の三者による共同出資で設立された、極めて公共性の高い「湯守」の決算からは、驚異的な財務健全性と、地域観光を支えるという確固たる使命感が見えてきました。その実態に深く迫ります。

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決算ハイライト(第49期)
資産合計: 763百万円 (約7.6億円)
負債合計: 40百万円 (約0.4億円)
純資産合計: 723百万円 (約7.2億円)

当期純利益: 10百万円 (約0.1億円)

 

自己資本比率: 約94.8%
利益剰余金: 573百万円 (約5.7億円)

 

まず驚かされるのは、94.8%という、ほぼ無借金経営と言える驚異的な自己資本比率です。これは企業の財務基盤がいかに強固であるかを示す指標であり、圧倒的な経営の安定性を物語っています。総資産約7.6億円に対し、純資産が約7.2億円、その中でも利益剰余金が約5.7億円と極めて潤沢に積み上がっており、設立以来、地域の観光資源を守るという使命を、堅実な経営で果たしてきたことがうかがえます。当期純利益も1,000万円を確保しており、安定した事業運営がなされています。

 

企業概要
社名: 常磐湯本温泉株式会社
設立: 1976年4月1日
出資者: いわき市いわき市湯本財産区常磐興産株式会社
事業内容: いわき湯本温泉の源泉揚湯・送湯施設の管理運営、温泉水の供給

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【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、日本の貴重な観光資源である「いわき湯本温泉」の恒久的・安定的な供給という、ただ一つの、しかし極めて重要なミッションに集約されています。

✔源泉の集中管理と安定供給
同社の事業の根幹です。かつて常磐炭田の坑内から湧出していた温泉を、閉山後も安定的に確保するため、地下620m地点に設置された複数のボーリング坑から温泉水を汲み上げています。
特筆すべきは、その独特な揚湯システムです。地下170m地点に設けられた巨大な貯留槽まで、自然の圧力で温泉水を引き込み、そこからポンプで地上の貯湯槽へ揚湯。そして、毎分5.5トンという豊富な湯量を、スパリゾートハワイアンズ(毎分3.5トン)と、いわき湯本温泉の旅館・ホテル群(毎分2.0トン)へ、張り巡らされた送湯管を通じて安定的に供給しています。この一元管理システムこそが、温泉郷全体の生命線となっています。

✔公共性を重視した設立背景
同社は、いわき市、地域の財産を管理する湯本財産区、そしてスパリゾートハワイアンズを運営する常磐興産という、行政と地域、民間企業が三位一体となって設立された、極めて公共性の高い企業です。この成り立ちが、目先の利益追求ではなく、地域の観光資源である温泉を未来永劫守り、地域社会の発展に貢献するという、長期的視点に立った事業運営を可能にしています。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
観光産業は、コロナ禍からの回復が鮮明となり、国内旅行、そしてインバウンド(訪日外国人旅行)ともに活気を取り戻しています。特に、円安は海外からの観光客にとって大きな魅力となっており、日本の伝統的な文化である「温泉(ONSEN)」への関心は非常に高いものがあります。
また、東日本大震災からの復興を経て、福島県浜通り地方の新たな魅力を発信する動きも活発化しており、いわき湯本温泉への注目度も高まっています。一方で、施設の老朽化対策や、自然災害(特に地震)への備えは、温泉供給インフラを維持する上で常に考慮すべき課題です。

✔内部環境
同社の最大の強みは、いわき湯本温泉の源泉を独占的に管理・供給しているという、他に競争相手のいない事業モデルにあります。いわき市、湯本財産区常磐興産という強固な株主構成は、事業の安定性と継続性に対する揺るぎない信頼の基盤となっています。
また、「三函の湯」として1000年以上の歴史を持つ温泉そのものが持つブランド力と、美白効果などが期待される優れた泉質(含硫黄-ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉)は、何物にも代えがたい資産です。

✔安全性分析
自己資本比率94.8%という数値は、財務基盤が鉄壁であることを示しています。有利子負債は皆無に等しく、経営の安定性は盤石です。短期的な支払い能力を示す流動比率流動資産÷流動負債)も約746%と驚異的な高さであり、キャッシュフローは極めて潤沢です。資本金1.5億円に対し、その3.8倍以上となる約5.7億円の利益剰余金は、設立以来約50年にわたり、地域のインフラを支えながら、いかに堅実な経営を続けてきたかを物語っています。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
自己資本比率94.8%という、圧倒的な財務健全性と経営の安定性
いわき湯本温泉の源泉を一元管理・供給する、独占的で安定した事業基盤
・「日本三古泉」という歴史的背景と、優れた泉質がもたらす強力な温泉ブランド
いわき市、地域、常磐興産という三位一体の強固な支援体制

弱み (Weaknesses)
・単一の温泉地に特化しているため、その地域の観光動向に業績が大きく左右されること
・揚湯・送湯施設の老朽化に対する、継続的な維持・更新コストの発生

機会 (Opportunities)
・インバウンド観光の本格的な回復と、海外における「温泉」への関心の高まり
東日本大震災からの復興ツーリズムや、福島県浜通り地方への新たな注目
・健康志向の高まりを背景とした、湯治やウェルネスツーリズムへの需要

脅威 (Threats)
・大規模な自然災害(地震、台風など)による、源泉や供給設備への物理的なダメージリスク
・燃料価格の高騰による、ポンプ稼働など揚湯・送湯コストの上昇
・国内の人口減少に伴う、長期的な国内観光市場の縮小

 

【今後の戦略として想像すること】
この事業環境の中、盤石の経営基盤と重要な社会的使命を持つ同社が、今後どのような戦略を描くのかが注目されます。

✔短期的戦略
まずは、現在の揚湯・送湯設備を、今後も長期にわたって安定的に稼働させるための、計画的なメンテナンスと更新が最優先課題です。特に、省エネルギー性能の高い最新のポンプ設備への更新などは、コスト削減と環境負荷低減の両面から重要な取り組みとなります。また、供給先である旅館・ホテルと連携し、温泉の魅力を科学的なデータ(泉質分析など)と共に、より効果的に発信していくことも求められます。

✔中長期的戦略
長期的には、温泉という貴重な地域資源を、さらに多角的に活用していくことが期待されます。例えば、温泉熱を利用した地熱発電や、農業(温泉トラフグの養殖など)への活用は、エネルギーの地産地消や新たな産業創出に繋がり、地域の持続可能性を高めます。また、温泉水を原料とした化粧品や入浴剤などの商品を開発・販売することも、新たな収益源となり得ます。いわき湯本温泉の「湯守」として、温泉の安定供給という本業を全うしつつ、その恵みを地域全体の活性化に繋げていくことこそが、同社に課せられた未来への使命と言えるでしょう。

 

まとめ
常磐湯本温泉株式会社は、単に温泉を供給する会社ではありません。千年の歴史を持つ「三函の湯」という地域の宝を守り、スパリゾートハワイアンズいわき湯本温泉郷の繁栄を、地下深くから支える、まさに「縁の下の力持ち」です。決算内容からは、自己資本比率94.8%という鉄壁の財務基盤の上で、地域のライフラインを担うという公共的な使命を、静かに、しかし力強く果たし続ける、真の優良企業の姿が浮かび上がります。

その強さの源泉は、揺るぎない事業基盤と、行政・地域・民間が一体となった強固な支援体制にあります。これからも、いわき湯本温泉の「湯守」として、安心・安全な湯を安定的に供給し続けることで、福島の観光と地域社会の未来を温かく照らし続けていくことでしょう。

 

企業情報
企業名: 常磐湯本温泉株式会社
所在地: 福島県いわき市常磐湯本町台山23-1
代表者: 代表取締役社長 下山田 敏博
設立: 1976年4月1日
資本金: 150,000千円
出資者: いわき市いわき市湯本財産区常磐興産株式会社
事業内容: いわき湯本温泉の源泉管理および、温泉郷の宿泊施設(スパリゾートハワイアンズ、旅館、ホテル等)への温泉水の揚湯・送湯事業。

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