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#16264 決算分析 : 株式会社アルダグラム 第7期決算 当期純損失 837百万円(赤字)

「現場DXサービス」として導入企業数70,000社超を誇る株式会社アルダグラムの第7期決算が公告されました。施工管理アプリ「KANNA」は業界No.1の評価を獲得している一方、当期純損失は837百万円、純資産はマイナスという債務超過状態に陥っています。急成長するプロダクトの実力と、それを支える財務の実態を深掘りしていきましょう。

株式会社アルダグラム決算 


【決算ハイライト(第7期)】

資産合計 1,047百万円 (約10.5億円)
負債合計 1,068百万円 (約10.7億円)
純資産合計 ▲21百万円 (約▲0.2億円)
当期純損失 837百万円 (約8.4億円)
自己資本比率 債務超過


【ひとこと】
純資産がマイナス(▲21百万円)という債務超過状態は、財務的に最も警戒すべきシグナルです。負債合計1,068百万円が資産合計1,047百万円を上回っており、資本剰余金2,139百万円が累積損失▲2,259百万円にほぼ相殺されている構造が見えます。しかし、資産合計の93%を流動資産が占めており、プロダクトへの投資と事業継続のための手元流動性は一定程度確保されている側面もあります。追加の資本調達が実現できるかどうかが、今後の命運を大きく左右します。


【企業概要】
企業名: 株式会社アルダグラム
設立: 2019年5月8日
事業内容: 建設業・不動産業・製造業などノンデスクワーク業界向けの現場DXサービス「KANNA」の開発・運営。プロジェクト管理アプリ「KANNAプロジェクト」とデジタル帳票アプリ「KANNAレポート(特許取得)」を中心に、現場の生産性向上と業務効率化を支援している。

https://aldagram.com/


【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は「現場DXプラットフォーム事業」に集約されます。具体的には、以下の部門等で構成されています。

✔KANNAプロジェクト(プロジェクト管理アプリ)
建設・不動産・製造業などの現場において、工程表作成・進捗共有・図面管理・チャットコミュニケーションなどをリアルタイムで一元管理できるプロジェクト管理アプリです。PC・スマートフォン・タブレットのマルチデバイス対応により、現場と事務所の情報連携をシームレスに実現しています。協力会社のアカウント数が無制限という独自の料金設計は、大規模プロジェクトや多数の外部協力会社が関与する案件において特に高く評価されています。東京都港区・町田市など自治体から野村不動産パートナーズ・ミズノ・東急Re・デザインといった大手企業まで、幅広い導入実績を持っています。

✔KANNAレポート(デジタル帳票アプリ・特許取得)
現場で使用している既存の帳票をそのままの形で電子化できる特許取得済みのデジタル帳票アプリです。スマートフォン・タブレットで写真を選ぶだけで報告書が作成できる操作性の高さが評価されており、AGCテクノグラスでは「年間最大700件の工事で8割ペーパーレス化を実現」するなど、現場の業務効率化に直接貢献する事例が生まれています。特許という知的財産による参入障壁の存在も、競合との差別化において重要な要素です。

✔グローバル展開とセキュリティ対応
東京本社に加え、バンコクオフィス(タイ)を設置しており、東南アジア市場への展開を見据えた体制が構築されています。また、ISO/IEC 27001(ISMS)の認証取得により、大手企業・官公庁が求めるセキュリティ水準を担保しています。2段階認証・監査ログ・IP制限などのオプション機能も整備されており、セキュリティ要件が厳しい大手企業への導入ハードルを下げることに成功しています。


【財務状況等から見る経営環境】

✔外部環境
建設業界では2024年4月に時間外労働の上限規制が適用され(いわゆる「2024年問題」)、現場の人手不足と業務効率化への需要が構造的に高まっています。政府も建設業のDX推進を政策として明確に位置づけており、補助金・助成金の整備が進んでいることも、中小建設会社によるDXツール導入の後押しとなっています。さらに、訪日外国人の増加に伴うホテル・商業施設の建設需要の継続や、老朽化インフラの補修・更新需要の増大も、建設業界全体の活況を維持する外部要因として同社の追い風となっています。加えて、自治体DXの加速により、東京都港区・町田市のような公共セクターへの展開余地は引き続き大きいと言える状況です。

✔内部環境
資産合計1,047百万円のうち流動資産が977百万円(93%)を占めており、固定資産への過剰な投資を抑えたアセットライトな事業構造が見て取れます。これはSaaSビジネスとして合理的な資産構成ですが、負債合計が資産合計を上回る債務超過という財務構造は、経営継続に向けた追加の資本調達を不可欠としています。資本剰余金2,139百万円の存在は、これまでに相当規模の資金調達を実施してきた実績を示しており、投資家からの一定の信任があったことを示しています。一方で、累積損失▲2,259百万円という事実は、調達した資金の多くがユーザー獲得コストや開発投資として消費されてきた構造を映し出しています。

✔安全性分析
純資産がマイナス(▲21百万円)という債務超過状態は、財務安全性の観点で最も深刻なシグナルです。自己資本比率は約▲2.0%と、健全とされる水準から大きく乖離しています。固定負債677百万円の詳細は公告上確認できませんが、ベンチャーデット・転換社債・借入金等が含まれる可能性があり、その返済条件・転換条件によっては追加の財務的プレッシャーが生じる局面も考えられます。流動負債391百万円に対して流動資産977百万円という流動比率(約250%)は比較的良好であり、短期的な支払い能力には余裕がある側面もあります。しかし、当期損失837百万円という規模が継続した場合、手元資金の枯渇は遠くない将来に現実的なリスクとなりえます。


【SWOT分析で見る事業環境】

✔強み (Strengths)
最大の強みは、施工管理アプリカテゴリにおけるApp Store評価4.5・No.1という圧倒的なプロダクトの質と、70,000社超という国内最大規模の導入実績です。野村不動産パートナーズ・ミズノ・東京ドーム・九州電力・東京都港区など、大手企業から自治体まで多様な顧客ポートフォリオを持つことは、同社のプロダクト信頼性を外部に証明する最も強力な根拠となっています。さらに、KANNAレポートの特許取得は技術的な参入障壁を形成しており、競合が簡単には模倣できない独自性の源泉です。ISO/IEC 27001の取得により、セキュリティ要件が厳しい大手企業・官公庁への提案において強力な訴求材料を持っていることも、同社の競争力を底上げしています。加えて、バンコクオフィスを構えるなど早期からグローバル展開を視野に入れている点は、国内市場の飽和に備えた先行投資として評価できます。

✔弱み (Weaknesses)
純資産▲21百万円という債務超過と当期純損失837百万円は、財務面における最大の弱みです。累積損失▲2,259百万円が積み上がる中で、黒字転換の時期が見通せない状況は、銀行借入・社債発行・新規投資家誘致といった資金調達交渉における重大なハンディキャップとなります。SaaSビジネスの構造上、無料プランでの利用者を有料プランへ転換していくプロセスに時間とコストがかかることは避けられません。導入企業70,000社超のうち無料版ユーザーの割合が高ければ、実際の収益化効率はユーザー数ほど高くない可能性もあります。また、建設・不動産・製造業という特定業界への依存度が高いため、これらの業界の景気変動や投資サイクルの影響を直接受けやすいという構造的な脆弱性も存在します。

✔機会 (Opportunities)
建設業の「2024年問題」を契機とした現場DX需要の高まりは、同社にとって事業拡大の最大の追い風です。時間外労働規制への対応に追われる建設会社が、業務効率化ツールへの投資を急いでいる現状は、KANNAの新規導入を後押しする環境となっています。また、東京都港区・町田市に続く自治体への横展開は、安定した大口契約の獲得という観点で有望な機会です。自治体DXの推進は国策として進められており、行政の現場管理業務へのKANNA適用余地は広大です。さらに、バンコクオフィスを拠点とした東南アジア市場への展開は、日系建設会社の海外現場需要を取り込む中長期的な成長機会として描けます。タイをはじめとするASEAN各国での建設需要の拡大と、日系建設会社の海外進出の活発化が、この機会をより具体的なものにしています。

✔脅威 (Threats)
施工管理・現場DX市場の競合環境は年々激化しており、大手ITベンダーや建設大手グループが傘下にDXサービスを持つ事例も増えています。資本力・ブランド力・既存顧客基盤において圧倒的なアドバンテージを持つ大手との競争は、同社にとって構造的な脅威です。また、無料プランを提供する戦略は導入障壁を下げる一方で、収益化率の低下につながるリスクを内包しています。競合が同様の無料プランを展開した場合の価格競争に巻き込まれるシナリオは、収益性のさらなる悪化をもたらしかねません。さらに、債務超過という財務状況が続く中で次の資金調達ラウンドが困難になった場合、事業継続への影響は深刻になりえます。建設業界の景気サイクルの変動や、政府の公共工事予算の削減が新規導入の減速につながるリスクも、外部環境上の脅威として認識しておく必要があります。


【今後の戦略として想像すること】

✔短期的戦略
最優先事項は、追加の資本調達による債務超過の解消と財務基盤の立て直しです。現状の資本剰余金2,139百万円という調達実績は投資家へのトラックレコードとなりますが、債務超過状態での調達は条件面での不利が生じるリスクがあります。そのため、現在の顧客基盤70,000社超を最大限に活用した有料転換率の向上と、大口・エンタープライズ契約の獲得が収益改善への最短ルートと考えられます。東京都港区・町田市という自治体導入実績を横展開し、他の自治体への提案活動を加速させることも、安定的かつ大口の収益源確保につながります。また、無料から有料への転換を促すオンボーディング・カスタマーサクセス体制の強化も、短期的な収益改善において重要な取り組みです。セミナー(2026年5月開催の「建設現場DXサミット」等)を通じた新規リード獲得の継続も、パイプライン構築において有効な手段と言えます。

✔中長期的戦略
中長期的には、国内市場での有料顧客基盤の拡大と、東南アジア市場への本格展開が成長の二本柱となります。バンコクオフィスを活用した日系建設会社の海外現場へのKANNA展開は、競合が少ない先行者優位を活かせる有望な市場です。タイでの実績を軸にベトナム・インドネシアなど他のASEAN諸国へ横展開するシナリオは、国内市場の成熟に備えた中長期の成長エンジンとして描けます。また、AIや生成AI技術との統合によって、施工管理の自動化・予測分析・音声入力対応といった次世代機能を実装することで、プレミアム有料プランへのアップセルを促進し、ARPU(1顧客あたりの平均収益)の向上を図ることも重要な戦略方向性です。さらに、IPOを含む出口戦略の検討は、財務体質の抜本的な改善と事業スケール拡大の両立に向けて、中長期の経営アジェンダとして浮上してくると推測されます。


【まとめ】
株式会社アルダグラムの第7期決算は、当期純損失837百万円・純資産▲21百万円という債務超過の結果となりました。累積損失▲2,259百万円という数字は重く、追加の資本調達と収益化の加速は文字通り急務の状況です。そのため、エンタープライズ契約の拡大と有料転換率の向上が、今期以降の最重要経営課題と言えます。一方で、導入企業数70,000社超・App Store No.1という実績と、野村不動産パートナーズや東京都港区など大手企業・自治体への採用事例は、プロダクトの本質的な競争力を証明しています。今後は、国内の自治体・大手企業向け拡販と東南アジア市場への展開を軸に、SaaSビジネスとしての規模の経済を効かせながら、財務健全化と事業成長を同時に実現できるかどうかが、同社の真価を問う局面となるでしょう。


【企業情報】
企業名: 株式会社アルダグラム
所在地: 東京都港区虎ノ門二丁目2番1号 住友不動産虎ノ門タワー 26階
代表者: 代表取締役 長濱 光
設立: 2019年5月8日
資本金: 100百万円(100,000千円)
事業内容: 建設業・不動産業・製造業などノンデスクワーク業界向け現場DXサービス「KANNA」の開発・運営。プロジェクト管理アプリ「KANNAプロジェクト」およびデジタル帳票アプリ「KANNAレポート(特許取得)」を展開。国内70,000社超の導入実績を持ち、東南アジア(バンコク)にもオフィスを構えグローバル展開を推進。

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