決算公告データ倉庫

決算公告を自分用に保管している倉庫。あくまでも、自分用です。引用する決算公告を除いて、内容の正確性/真実性を保証できない点はご容赦ください。


#10811 決算分析 : 株式会社同潤舎 第3期決算 当期純損失 12百万円(赤字)


かつて、日本の近代建築史において「同潤会アパート」という名前は、先進的な住環境とコミュニティの象徴として輝きを放っていました。関東大震災後の復興支援として建設された鉄筋コンクリート造の集合住宅は、単なる建物以上の価値を社会に提供しました。時は流れ、現代の日本。少子高齢化、空き家問題、そして建物の老朽化という新たな課題が、都市の風景に影を落としています。
こうした現代の社会課題に対し、かつての「同潤会」へのオマージュを社名に込め、不動産と建築のプロフェッショナルとして立ち上がった企業があります。今回は、建物再生コンサルティングを通じて日本の不動産ストックの長寿命化に挑む「株式会社同潤舎」の第3期決算を読み解き、その志高いビジネスモデルと今後の戦略について深く掘り下げていきます。

同潤舎決算


【決算ハイライト(第3期)】

資産合計 36百万円 (約0.36億円)
負債合計 30百万円 (約0.30億円)
純資産合計 6百万円 (約0.06億円)
当期純損失 ▲12百万円 (約0.12億円)
自己資本比率 約15.4%


【ひとこと】
第3期決算は、設立間もないベンチャー企業特有の「産みの苦しみ」と「未来への投資」が色濃く反映された数字となりました。当期純損失として約12百万円を計上し、利益剰余金はマイナスとなっていますが、固定資産が資産の大半を占めていることから、事業基盤の構築に向けた先行投資が積極的に行われている様子が窺えます。


【企業概要】
企業名: 株式会社同潤舎
設立: 2022年12月28日
事業内容: 建物再生コンサルティング、不動産プロパティマネジメント、一級建築士事務所業務

www.dojunsya.com


【事業構造の徹底解剖】
株式会社同潤舎のビジネスは、単なる不動産管理や設計業務にとどまりません。その本質は、価値を失いつつある不動産に新たな息吹を吹き込み、社会資本としての寿命を延ばす「再生と循環のプロデュース」にあります。具体的には、以下の3つの柱で事業が構成されています。

✔建物再生コンサルティング事業
同社の核となる事業です。「売却したいが値段がつかない」「空室が続き収益を生まない」といった、いわゆる「負動産」化しかけている既存建物に対し、建築と金融の両面から再生プランを提案します。単なるリフォームではなく、収益性を加味したバリューアップ工事、法適合性の確認、そしてコンストラクションマネジメント(CM)までを一気通貫で行う点が特徴です。一級建築士事務所としての技術的知見と、不動産鑑定士証券アナリストの資格を持つ経営陣による金融的アプローチが融合しています。

✔不動産プロパティマネジメント(PM)事業
再生された建物、あるいは既存の収益物件の運営管理を代行する事業です。ここでは、テナントの誘致(リーシング)から日々の建物管理、修繕計画の策定までを行います。特筆すべきは、オーナーの利益最大化を目指す「経営代行」の視点を持っていることです。月次報告はもちろん、中長期的な修繕計画の適正化チェックや、PMレポートの作成代行など、アセットマネジメントに近い領域までサポートを提供しています。

✔建築コンサルタント事業
不動産オーナーや投資家の「悩み」に寄り添うアドバイザリーサービスです。「建物有効活用コンサルティング」「建物再生・バリューアップ」「セカンドオピニオン」という3つの明確なコースを設け、顧客のフェーズに合わせた相談を受け付けています。特にセカンドオピニオン業務は、専門知識がないオーナーにとって、建設会社からの見積もりが適正かどうかを判断する重要な「物差し」を提供しており、透明性の高い取引を支援しています。


【財務状況等から見る経営環境】
第3期(令和7年6月期)の決算数値を基に、同社の置かれている経営フェーズと環境を分析します。

✔外部環境
日本の不動産市場は、新築偏重からストック活用へと大きな転換期を迎えています。SDGsカーボンニュートラルの観点から、建物を壊して建て替えるのではなく、長く使い続けることへの社会的要請が高まっています。また、建設コストの高騰により、新築投資のハードルが上がっていることも、既存物件の再生需要を後押ししています。一方で、金利上昇の兆しは、不動産投資市場にとって逆風となる可能性があり、より精緻な収支計画が求められる環境です。

✔内部環境
貸借対照表を見ると、資産合計36百万円のうち、固定資産が31百万円と約87%を占めています。設立から間もないコンサルティング会社において固定資産が大きい理由は、自社での不動産保有、あるいはオフィスやシステムへの投資、もしくは再生事業における先行投資的な支出が含まれている可能性があります。負債面では、固定負債が29百万円計上されており、長期的な資金調達を行っていることがわかります。これは事業基盤を固めるための前向きな借入と捉えることができますが、利益剰余金がマイナス(▲44百万円)となっており、創業期の赤字を抱えながら成長を目指している段階です。


SWOT分析で見る事業環境】
同社についてここまで見てきた内容を、SWOT分析にまとめて整理します。
✔強み (Strengths)
最大の強みは「人材」と「専門性」です。代表取締役の吉田氏は三菱地所出身の一級建築士であり、取締役の大森氏は信託銀行出身の不動産鑑定士です。さらにアドバイザーには投資銀行出身者が名を連ねています。「建築×金融×不動産」という異なる領域のプロフェッショナルが経営チームを組成していることは、競合他社に対する圧倒的な差別化要因です。

✔弱み (Weaknesses)
設立から日が浅く、財務基盤がまだ盤石ではない点です。第3期時点で累積損失があり、自己資本比率も約15%と低水準です。事業が軌道に乗り、安定的なキャッシュフローを生み出すまでは、資金繰り管理が重要な経営課題となります。

✔機会 (Opportunities)
「空き家対策特別措置法」の改正や、東京都の環境規制強化など、既存建物の利活用を促す法整備が進んでいます。また、相続による資産承継のタイミングで不動産の処分や活用に悩むオーナーが増加しており、同社のような専門的なコンサルティングへの需要は今後ますます拡大すると予測されます。

✔脅威 (Threats)
建設業界の人手不足や資材価格の高騰は、リノベーション工事のコスト増に直結し、再生プロジェクトの収益性を圧迫する恐れがあります。また、大手不動産会社やテック系スタートアップがリノベーション市場に参入してきており、競争環境は厳しさを増しています。


【今後の戦略として想像すること】
SWOT分析を踏まえ、今後どのような方向に進んだら良いか、具体的な戦略を想像しメモとして記載します。

✔短期的戦略
まずは損益分岐点を超え、黒字化を達成することが最優先です。そのためには、フロー収益であるコンサルティング案件の獲得数を増やすとともに、ストック収益であるPM受託件数を積み上げ、経営の安定化を図る必要があります。Webサイトでの情報発信強化や、士業(税理士・弁護士)とのアライアンスによる相続案件の紹介ルート開拓などが有効でしょう。

✔中長期的戦略
「同潤舎」ブランドの確立です。かつての同潤会アパートがそうであったように、「同潤舎が手掛けた再生物件」自体がブランド価値を持つような実績作りを目指すべきです。また、蓄積した再生ノウハウを形式知化し、フランチャイズ展開やシステム外販を行うことで、労働集約型ビジネスからの脱却を図ることも視野に入ります。さらに、グリーンビルディング認証の取得支援など、環境価値を付加するサービスの強化も成長のカギとなるでしょう。


【まとめ】
株式会社同潤舎は、日本の不動産業界が抱える「ストックの老朽化」という課題に正面から向き合う、志あるプロフェッショナル集団です。第3期決算に見られる赤字は、理想の実現に向けた助走期間の証とも言えます。建築と金融の知見を融合させ、古い建物に新たな価値を見出すそのアプローチは、持続可能な都市づくりにおいて不可欠なものです。今後の同社の成長は、日本の街並みがどのように再生されていくかという未来図と重なっています。


【企業情報】
企業名: 株式会社同潤舎
所在地: 東京都千代田区神田小川町三丁目28-5 axle御茶ノ水
代表者: 代表取締役社長 吉田 由紀子
設立: 2022年12月28日
資本金: 3,000万円
事業内容: 建物再生コンサルティング事業、不動産プロパティマネジメント事業、建築コンサルタント事業

www.dojunsya.com

©Copyright 2018- Kyosei Kiban Inc. All rights reserved.