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#9912 決算分析 : 徳島ヴォルティス株式会社 第21期決算 当期純利益 102百万円


地域に根ざしたプロスポーツクラブの経営は、決して容易なものではありません。勝利という不確実な成果を追い求めながら、同時に企業としての収益性を確保しなければならないからです。多くのクラブが赤字や債務超過に苦しむ中、堅実な経営基盤を維持し、地域と共に歩み続けるクラブが存在します。
今回は、Jリーグに所属し、徳島県全域をホームタウンとする「徳島ヴォルティス株式会社」の第21期決算公告を読み解き、その驚異的な財務安定性と、地方クラブのロールモデルとも言えるビジネス戦略について深掘りしていきます。

徳島ヴォルティス決算

【決算ハイライト(第21期)】
資産合計: 1,907百万円 (約19.1億円)
負債合計: 445百万円 (約4.5億円)
純資産合計: 1,462百万円 (約14.6億円)

当期純利益: 102百万円 (約1.0億円)
自己資本比率: 約76.7%
利益剰余金: 1,053百万円 (約10.5億円)

【ひとこと】
Jリーグクラブの決算としては、極めて優秀な財務内容です。自己資本比率約76.7%は、一般的な企業としても高水準ですが、浮き沈みの激しいスポーツビジネスにおいては驚異的と言えます。さらに、利益剰余金が10億円を超えて積み上がっており、過去の利益をしっかりと内部留保し、将来の投資やリスクに備える盤石な体制が整っています。

【企業概要】
企業名: 徳島ヴォルティス株式会社
設立: 2004年(平成16年)9月10日
株主: 大塚製薬株式会社、徳島県、各自治体、地元企業など
事業内容: プロサッカークラブ「徳島ヴォルティス」の運営

www.vortis.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社のビジネスは、典型的なプロスポーツクラブの収益構造を持ちつつ、強力なバックボーンによる安定性が特徴です。主な収益の柱は以下の通りです。

✔スポンサー収入(広告料収入)
クラブ収入の大きな割合を占めるのが、ユニフォームやスタジアム看板などのスポンサー収入です。メインスポンサーである大塚製薬POCARI SWEAT)をはじめ、アース製薬阿波銀行など、徳島にゆかりのある大手企業が名を連ねています。特に大塚グループの支援はクラブの経営基盤を支える大きな要因となっています。

✔チケット・入場料収入
ホームスタジアム「鳴門・大塚スポーツパーク ポカリスエットスタジアム」での試合興行による収入です。チームの成績や天候に左右されやすい変動費的な側面を持ちますが、地域密着のファンベースを拡大することで安定化を図っています。

✔グッズ販売・ファンクラブ収入
「CLUB VORTIS」の会費や、ユニフォーム、タオルマフラーなどのグッズ販売収入です。これらはサポーターのエンゲージメント(熱量)を収益化する重要なチャネルであり、ブランド価値の指標ともなります。

✔アカデミー・スクール事業
将来の選手育成と地域の子どもたちの健全育成を目的としたスクール事業です。収益源であると同時に、将来のファンや選手を生み出す「投資」としての側面も強く持っています。


【財務状況等から見る経営環境】
決算数値から、同社の極めて健全な経営状態が見て取れます。

✔外部環境
Jリーグ全体として、DAZNマネーによる配分金の変化や、新型コロナウイルス禍からの観客動員回復など、環境は激変しています。地方クラブにとっては、人口減少による市場縮小が長期的な課題です。一方で、Jリーグの「秋春制」移行議論や、海外クラブとの提携など、新たなビジネスチャンスも模索されています。

✔内部環境
貸借対照表を見ると、流動資産が約13.3億円と資産の大半を占めています。これは、現預金を豊富に保有していることを示唆しており、不測の事態(成績不振による降格や減収など)にも耐えうる体力があります。負債は流動負債が中心ですが、その額は約3.7億円にとどまり、純資産の厚みが際立っています。当期純利益1億円超という結果は、コストコトロールが機能している証左でしょう。

✔安全性分析
自己資本比率76.7%は、倒産リスクが極めて低い状態を示しています。多くのJクラブが債務超過や資金繰りに苦しむ中、徳島ヴォルティスは「無借金経営」に近い、あるいは実質無借金である可能性が高いです。利益剰余金10.5億円は、スタジアム改修やクラブハウスの拡充、あるいは大型補強といった「次の一手」を打つための強力な軍資金となります。


SWOT分析で見る事業環境】
同社についてここまで見てきた内容を、SWOT分析にまとめて整理をします。
✔強み (Strengths)
最大の強みは、大塚グループという強力な親会社・スポンサーの存在と、長年の黒字経営による財務体質です。また、スペイン人監督の招聘など、独自の強化方針でJ2優勝・J1昇格を経験した「成功体験」と、選手を育てて売る(移籍金収入を得る)育成ノウハウも強みです。

✔弱み (Weaknesses)
ホームタウンである徳島県の人口規模や経済規模が、大都市圏のクラブと比較して小さいことです。これにより、入場料収入や小口スポンサー収入の天井が低くなる傾向にあります。また、J1定着には至っておらず、カテゴリーの昇降格が経営数値のボラティリティ(変動)要因となります。

✔機会 (Opportunities)
「地方創生」の文脈におけるスポーツクラブの重要性は増しています。行政との連携強化によるスタジアム周辺開発や、インバウンド観光とのセット販売など、サッカー以外の領域での収益化チャンスがあります。また、育成型クラブとして、海外市場への選手移籍による外貨獲得も大きな機会です。

✔脅威 (Threats)
少子高齢化による競技人口および観戦者層の減少は深刻な脅威です。また、他のエンターテインメントとの時間の奪い合いや、ネット配信の普及による「スタジアム離れ」のリスクも考慮する必要があります。


【今後の戦略として想像すること】
豊富な内部留保をどのように活用し、クラブの「格」を上げていくかが問われます。

✔短期的戦略
まずはJ1復帰と定着が最優先課題です。豊富な資金力を背景に、的確な戦力補強を行うと同時に、データ分析やコンディション管理などの「科学的」なチーム強化への投資を加速させるでしょう。また、スタジアム体験の価値向上(スタグルやイベントの充実)により、観客動員数をコロナ前、あるいはそれ以上の水準に戻す施策が必要です。

✔中長期的戦略
「育成型クラブ」としてのブランドを確立し、移籍金ビジネスを収益の柱として定着させることです。欧州クラブのような、若手を発掘・育成し、高値で売却して得た資金でまた投資するというエコシステムを回すことが、地方クラブが生き残る最適解の一つです。また、アジア戦略として、提携国からの選手獲得やアカデミー交流を通じ、徳島ブランドを海外へ輸出する動きも予想されます。


【まとめ】
徳島ヴォルティス株式会社は、プロスポーツクラブ経営のお手本のような財務内容を誇っています。この安定感は、単なる資金力だけでなく、地域やスポンサーとの強固な信頼関係の賜物です。今後は、この盤石な基盤をテコに、ピッチ上での結果(J1定着・タイトル獲得)という果実を地域にもたらし、真の「地域の誇り」となることが期待されます。


【企業情報】
企業名: 徳島ヴォルティス株式会社
所在地: 徳島県板野郡板野町犬伏字瓢谷2-22
代表者: 代表取締役社長 岸田 一宏
設立: 2004年(平成16年)9月10日
資本金: 409百万円
事業内容: プロサッカークラブの運営、サッカースクールの運営等
株主: 大塚製薬徳島県、他

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