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#7694 決算分析 : 大分ケーブルテレコム株式会社 第36期決算 当期純利益 1,090百万円


地域密着型のメディアとして、私たちの生活に欠かせない存在となっているケーブルテレビ。単なるテレビ放送だけでなく、高速インターネットや固定電話、さらには電力やモバイル通信まで、生活インフラを丸ごと支えるサービスへと進化を遂げています。
今回は、大分市由布市津久見市などを中心に、約30万世帯の暮らしを支える「大分ケーブルテレコム株式会社」の第36期決算(2025年3月31日現在)を読み解き、地域最大の通信事業者としての圧倒的な存在感と、安定した収益基盤についてみていきます。

大分ケーブルテレコム決算

【決算ハイライト(第36期)】
資産合計: 10,940百万円 (約109.4億円)
負債合計: 3,296百万円 (約33.0億円)
純資産合計: 7,643百万円 (約76.4億円)

売上高: 10,095百万円 (約101.0億円)
当期純利益: 1,090百万円 (約10.9億円)
自己資本比率: 約69.9%
利益剰余金: 6,923百万円 (約69.2億円)

【ひとこと】
売上高が100億円の大台を超え、当期純利益も約11億円を計上するなど、極めて順調な業績です。営業利益率は約14.9%と高く、インフラビジネス特有の高い収益性を維持しています。自己資本比率も約70%と盤石であり、利益剰余金は約69億円に達しています。地域独占的な事業基盤と、J:COMグループのスケールメリットが見事に融合した、理想的な経営状態と言えます。

【企業概要】
企業名: 大分ケーブルテレコム株式会社
設立: 1989年6月13日
株主: JCOM株式会社、大分市由布市
事業内容: 有線テレビジョン放送、電気通信事業(インターネット、電話等)

wwwjcom.oct-net.ne.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は「地域の総合生活インフラサービス」です。ケーブルテレビ局としてスタートしましたが、現在は通信と放送を融合させたマルチメディア企業へと変貌しています。具体的には、以下の3つの柱で構成されています。

✔放送・通信サービス(TV・NET・PHONE)
大分市由布市津久見市などを主要エリアとして、多チャンネル放送、高速インターネット、固定電話を提供しています。特にインターネットは、リモートワークや動画配信サービスの普及により需要が拡大しており、収益の柱となっています。また、「J:COM MOBILE」や「J:COM 電力」など、セット割が効く周辺サービスも拡充し、顧客単価の向上を図っています。

✔地域BtoB・自治体連携ソリューション
自治体(大分市由布市など)が出資する第3セクターという側面も持ち、行政放送や防災情報の配信、学校ネットワークの構築など、公共性の高い事業も手掛けています。また、地元企業向けの広告配信や、通信回線の提供など、法人向けビジネスも展開しています。

✔地域情報発信(コミュニティチャンネル)
J:COMチャンネル大分」を通じて、地域のお祭りやイベント、行政情報などをきめ細かく発信しています。全国ネットの放送局では取り上げられない、身近な情報を届けることで、地域住民との強いエンゲージメントを築いています。


【財務状況等から見る経営戦略】
ここでは、第36期決算公告の数値を基に、同社の強固な経営基盤を分析します。

✔外部環境
人口減少や若者のテレビ離れは逆風ですが、ネット動画視聴のための高速回線ニーズはむしろ高まっています。また、地域情報へのニーズや、高齢者の見守りサービスなど、ケーブルテレビ局ならではの役割に対する期待は根強いものがあります。

✔内部環境
損益計算書を見ると、売上原価率は約53.7%と低く抑えられています。これは、一度敷設した伝送路(インフラ)を活用して複数のサービス(TV、ネット、電話、電力)を提供する「バンドル販売」が成功しているため、限界利益率が高い構造になっているからです。販管費を差し引いても、営業利益1,503百万円(利益率約14.9%)という高収益を実現しています。

✔安全性分析
貸借対照表では、固定資産が7,512百万円と資産の約7割を占めていますが、これは放送センターや伝送路などの設備資産です。これら巨額の設備投資を、自己資本(7,643百万円)でほぼ賄えている点が素晴らしいです。有利子負債への依存度が低く、キャッシュフローも潤沢であるため、次世代通信規格(10Gコースなど)への設備更新投資もスムーズに行える体力があります。


SWOT分析で見る事業環境】
同社についてここまで見てきた内容を、SWOT分析にまとめて整理をします。
✔強み (Strengths)
最大の強みは、地域に張り巡らされた「自社インフラ」と、自治体も出資する「公共性・信頼性」です。また、J:COMグループの一員として、最新のSTB(セットトップボックス)や動画配信サービス(Netflix等)との連携など、全国レベルのサービスをいち早く導入できる点も大きな競争優位性です。

✔弱み (Weaknesses)
事業エリアが物理的な伝送路の敷設エリアに限定されるため、エリア外への急激な商圏拡大は難しい点です。また、ネット動画配信サービス(OTT)の台頭により、多チャンネル放送サービスの解約リスクが潜在的に存在します。

✔機会 (Opportunities)
「地域DX」の推進役としての期待です。自治体と連携した遠隔医療やオンライン教育、独居高齢者の見守りサービスなど、通信インフラを活用した新しい地域課題解決ビジネスには大きな可能性があります。

✔脅威 (Threats)
携帯キャリア各社による5G/6Gサービスの普及や、NTT等の光回線事業者との価格競争激化です。特に、若年層のモバイルシフトが進む中で、固定回線の価値をどう維持・向上させるかが課題となります。


【今後の戦略として想像すること】
SWOT分析を踏まえ、大分ケーブルテレコムが今後どのような方向に進むべきか、戦略コンサルタントの視点で推測します。

✔短期的戦略
短期的には、「ネット回線の高速化とバンドル率の向上」です。10Gコースなどの超高速プランを拡充し、他社光回線への流出を防ぎます。同時に、スマホJ:COM MOBILE)や電力、Netflixパックなどを組み合わせたセット提案を強化し、解約率を下げつつARPU(1契約あたり平均単価)を高める戦略を徹底するでしょう。

✔中長期的戦略
中長期的には、「地域プラットフォームへの深化」です。単なる通信事業者から、地域の生活・行政・防災情報を統合するプラットフォーマーへと進化します。例えば、テレビ画面を通じた買い物支援や、行政手続きの代行など、デジタルデバイド情報格差)を解消するラストワンマイルの担い手としての地位を確立すると考えられます。


【まとめ】
大分ケーブルテレコム株式会社は、盤石な財務基盤と高い収益性を誇る、地域インフラ企業の優良モデルです。J:COMの先進性と、第3セクターとしての公共性を兼ね備え、大分の暮らしを支えるデジタルライフ・パートナーとして、今後も安定的な成長を続けることが確実視されます。


【企業情報】
企業名: 大分ケーブルテレコム株式会社
所在地: 大分県大分市松が丘三丁目1番12号
代表者: 代表取締役社長 小森 智幸
設立: 1989年6月13日
資本金: 720百万円
事業内容: 有線テレビジョン放送、電気通信事業
株主: JCOM株式会社、大分市由布市

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