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#5517 決算分析 : 株式会社okke 第5期決算 当期純利益 ▲59百万円

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「なぜ勉強するのか、やりたいことが見つからない」「勉強はしたいけれど、ついスマートフォンで別の動画を見てしまう」 多くの高校生が抱えるこうした悩みは、個人の意思の強さだけの問題ではありません。情報が溢れすぎた現代において、学びへの「誘惑」はあまりにも多く、一方で、住む地域や環境によって得られる教育の質に差が生まれてしまう「制約」も依然として存在します。

もし、SNSやゲームのような誘惑が一切なく、自分のレベルや目標に合わせて、日本中の優れた授業動画や参考書の情報だけが集まる「学習専用の空間」があったとしたら。

今回は、まさにその「誰もが能動的に学ぶ世の中を作る」というミッションを掲げ、EdTech(教育テクノロジー)の力で高校生の学習課題に挑むスタートアップ、株式会社okkeの第5期決算を読み解きます。その財務諸表は、壮大なビジョン実現のために、あえて「赤字」を選択するスタートアップ特有の経営戦略と、その厳しさを鮮明に映し出していました。

okke決算

【決算ハイライト(第5期)】
資産合計: 13百万円 (約0.1億円) 
負債合計: 6百万円 (約0.1億円) 
純資産合計: 7百万円 (約0.1億円)

当期純損失: 59百万円 (約0.6億円) 
自己資本比率: 約54.5% 
利益剰余金: ▲155百万円 (約▲1.6億円)

【ひとこと】
第5期(2025年3月期)の決算は、当期純損失が59百万円、そして創業来の累計損失である利益剰余金が▲155百万円となりました。これは、典型的な「先行投資型」スタートアップの財務数値です。 資本金(81百万円)と資本剰余金(81百万円)を合わせた約1.6億円の資金を外部から調達し、それをプロダクト開発やユーザー獲得のための費用(=損失)として投下しているフェーズであることが明確にわかります。 しかし、その結果、純資産は7百万円(純資産=資本金+資本剰余金+利益剰余金)まで減少しており、事業継続のための「次の一手」が急務である、非常に緊迫した財務状況が読み取れます。

【企業概要】
企業名: 株式会社okke 
設立: 2020年5月12日 
事業内容: 高校生向け学習サポートアプリ「okke」および教育機関向けテストツール「Dr.okke」の開発・運営。

www.okke.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
株式会社okkeは、「誰もが能動的に学ぶ世の中を作る」というミッション、そして「日本中の高校生の目を輝かせる」というビジョンを掲げるEdTech企業です。その中核を担うのは、BtoCとBtoB、二つのサービスです。

✔okke (高校生の学びのサポートアプリ) 
BtoC(個人向け)の主力サービスが、社名を冠した無料の学習サポートアプリ「okke」です。このアプリの最大の特徴は、「誘惑がない」ことにあります。

YouTubeなどで勉強動画を探そうとすると、つい関連動画やエンタメ動画に流されてしまうのが高校生の悩みです。okkeは、その「ノイズ」を徹底的に排除。約10万本に及ぶ授業動画(超基礎から超発展レベルまで)や、用語・公式だけを、単元やレベル別にピンポイントで検索できる環境を提供します。 さらに、勉強法や大学受験の体験記といった、学習効率とモチベーションを上げるための「お宝情報」も記事コンテンツとして充実させており、まさに「自分だけの学びのサポーター」として機能します。

✔Dr.okke (教育機関向けのテストツール) 
BtoB(法人向け)のサービスが「Dr.okke」です。こちらは学校や塾の「先生」向けのSaaS型テストツールです。 先生が「教材や授業の内容が、生徒にどれだけ定着しているか」「アウトプットの機会が足りているか」といった課題を解決するために開発されました。使いやすいインターフェースと詳細な解説機能が、先生と生徒の間のコミュニケーションを円滑にし、生徒の学力とモチベーションの向上をサポートします。

✔卓越したチーム
これらのサービスを支えるのが、代表の久保山 皓平氏を中心とした少数精鋭のチームです。久保山氏は東京大学工学部を卒業後、財務省官僚を経て、UCLA経営学修士(MBA)を取得。まさに「人の内側から社会を良くすべく」起業したという、熱い情熱と高度な知性を併せ持つ人物です。 脇を固めるメンバーも、東大大学院卒のエンジニア(元ソニー含む)、N高卒で大学在学中から参画するマーケター、工業高校卒のデザイナーなど、多様なバックグラウンドを持つプロフェッショナルが集結しています。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境 (EdTech市場の光と影) 
GIGAスクール構想やコロナ禍を背景に、日本のEdTech市場は急速に拡大しました。しかし、それは同時に「超競争市場」となったことを意味します。 特に高校生向け市場では、リクルートの「スタディサプリ」という巨人が圧倒的なシェアを持ち、YouTube上には無数の「教育系YouTuber」が高品質な無料動画を配信しています。 okkeの「誘惑がない」という強みは、YouTubeの利便性やエンタメ性に勝てるのか。また、「okke」アプリが現在無料である一方、どう収益を上げていくのかが大きな課題となります。

✔内部環境 (Jカーブの谷底) 
第5期決算は、スタートアップが成長過程で経験する「Jカーブ(一時的に赤字が拡大し、その後急成長する曲線)」の、まさに谷底の状態を示しています。 当期純損失59百万円は、そのほとんどが優秀なエンジニアチームを維持するための「人件費」や、プロダクト開発費、そして「okke」アプリのユーザー獲得コスト(広告宣伝費)であると推測されます。これは未来の成長のための「投資」です。 しかし、その投資の原資であったはずの資本(資本金+資本剰余金=約162百万円)は、創業来の累計損失(利益剰余金=▲155百万円)によって、ほぼ底をつきかけています。

✔安全性分析 (瀬戸際の財務) 
今回の決算で最も注目すべきは、安全性です。 自己資本比率約54.5%という数字だけ見ると健全に見えますが、これは銀行借入(負債)が少ないエクイティファイナンス中心のスタートアップ特有の現象です。

重要なのは「純資産」の絶対額です。2025年3月31日時点で、純資産はわずか7百万円(7,148千円)しか残っていません。 一方で、年間の赤字(当期純損失)は59百万円です。もしこのペースの赤字が続けば、計算上、純資産は数ヶ月でマイナス(=債務超過)に転落してしまいます。 つまり、この決算公告(2025年6月発行)が出された時点では、すでに会社が存続の危機にあることを示しており、追加の資金調達が「待ったなし」の最重要課題であったことが強く推測されます。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths) 
・元財務省MBAの代表と、東大大学院卒を中心とする少数精鋭の技術・ビジネスチーム。 
・「誘惑がない」「能動的に学べる」という、学習の本質を突いた明確なプロダクトコンセプト。 
・BtoC(okke)とBtoB(Dr.okke)の両輪で事業を展開できるポテンシャル。

弱み (Weaknesses) 
・純資産7百万円という、極めて脆弱な財務基盤(2025年3月末時点)。 
・59百万円という赤字(キャッシュバーン)体質。 
・BtoCアプリ「okke」のマネタイズモデルが未確立(無料)。

機会 (Opportunities) 
・EdTech市場の継続的な拡大と、GIGAスクール構想による学校インフラの整備。 
・BtoBサービス「Dr.okke」のSaaSモデルによる、安定収益源構築の可能性。

脅威 (Threats) 
スタディサプリやYouTubeなど、競合との圧倒的な体力・知名度の差。 
・BtoCユーザーの「無料慣れ」と、有料化への強い抵抗。 
・事業継続の前提となる、追加の資金調達(増資)が失敗するリスク。

 

【今後の戦略として想像すること】
この財務状況(純資産7百万円)は、まさに「スタートアップの死の谷」のど真ん中です。代表の久保山氏の経営手腕が今、最も問われています。

✔短期的戦略 (生き残りのための最優先課題) 
唯一にして絶対の戦略は、「追加の資金調達(シリーズAまたはブリッジファイナンス)」を早急に成功させることです。数億円規模の増資がなければ、事業継続は不可能です。 そのためには、投資家(ベンチャーキャピタル)に対し、赤字を正当化できるだけの「成長の証拠」を提示しなくてはなりません。その証拠とは、BtoCアプリ「okke」のユーザー数やアクティブ率の急成長か、あるいはBtoBサービス「Dr.okke」の導入学校数やMRR(月次経常収益)の確実な増加です。 コストセンターとなりがちなBtoCの広告宣伝費は一旦抑制し、収益化が見込めるBtoBの「Dr.okke」の導入実績作りに全リソースを集中させることが、調達成功への最短距離と考えられます。

✔中長期的戦略 (資金調達成功後の反攻) 
無事に資金調達が完了した後は、まず「Dr.okke」をマネタイズの柱として確立させることが急務です。全国の高校・塾へのSaaS導入を加速させ、安定した収益基盤を構築します。 その上で、BtoCの「okke」は、Dr.okke導入校の生徒に利用を促す「BtoBtoCモデル」で、広告費をかけずにユーザーベースを拡大します。 最終的には、okkeアプリ内で大学受験関連の広告、高付加価値な有料機能(例:AIによる学習レコメンド)、参考書販売などでマネタイズし、BtoCとBtoBの両輪を回すことで、ビジョンの実現を目指します。

 

【まとめ】
株式会社okkeは、「誰もが能動的に学ぶ」という崇高なミッションを掲げ、元財務省官僚でMBAホルダーの代表のもと、優れたプロダクトを開発する注目のEdTechスタートアップです。

しかし、第5期の決算は、そのビジョン実現のための投資が資本をほぼ使い果たし、純資産7百万円という「死の谷」の瀬戸際に立たされている厳しい現実を浮き彫りにしました。年間59百万円の赤字は、事業を成長させるための「投資」ですが、その投資を継続するための「燃料(=追加資本)」が、今まさに尽きかけようとしています。

「日本中の高校生の目を輝かせる」というビジョンが、厳しい財務状況を乗り越えて実現されるのか。それは、BtoBサービス「Dr.okke」の収益性と、代表・久保山氏の卓越した資金調達能力にかかっています。

 

【企業情報】
企業名: 株式会社okke 
所在地: 東京都中央区銀座1-22-11 銀座大竹ビジデンス2階 
代表者: 代表取締役 久保山 皓平 
設立: 2020年5月12日 
資本金: 81,492千円 (約81百万円) 
事業内容: 高校生向け学習サポートアプリ「okke」および教育機関向けテストツール「Dr.okke」の開発・運営。

www.okke.co.jp

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