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#5432 決算分析 : 大分液化ガス共同備蓄株式会社 第41期決算 当期純利益 19百万円

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私たちが家庭や業務で使用するプロパンガス(LPG)。特に都市ガスの導管が整備されていない地域において、LPGは日本のエネルギー供給を支える重要なライフラインです。しかし、その原料のほとんどを輸入に頼る日本にとって、LPGを「備蓄」することは国のエネルギー安全保障(国策)そのものです。

今回は、まさにこの国策を体現する、国内第1号のLPガス共同備蓄会社として設立された「大分液化ガス共同備蓄株式会社」の決算を読み解きます。

大分市日吉原の臨海工業地帯に、21万トンを超える巨大な低温タンク群を構え、九州・沖縄地域のLPG需要の約30%(約250万世帯分)を賄う「エネルギーの要塞」。その運営は、国の機関であるJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)と、LPG元売大手のジクシス、岩谷産業によって支えられています。この半官半民の国家プロジェクトとも言える企業の、極めて堅牢な財務とビジネスモデルに迫ります。

大分液化ガス共同備蓄決算

【決算ハイライト(41期)】
資産合計: 10,143百万円 (約101.4億円) 
負債合計: 3,800百万円 (約38.0億円) 
純資産合計: 6,343百万円 (約63.4億円) 

売上高: 1,772百万円 (約17.7億円) 
当期純利益: 19百万円 (約0.2億円) 
自己資本比率: 約62.5% 
利益剰余金: 243百万円 (約2.4億円)

【ひとこと】
まず注目すべきは、総資産約101.4億円のうち、純資産が約63.4億円と過半を占める、自己資本比率約62.5%という鉄壁の財務基盤です。売上高約17.7億円に対し、当期純利益は19百万円とスリムですが、これは利益追求型というよりも「安定供給」という国策を使命とするインフラ企業の特性を強く示しています。

【企業概要】
社名: 大分液化ガス共同備蓄株式会社 
設立: 昭和59年(1984年)11月 
株主: 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構 (50%), ジクシス株式会社 (35%), 岩谷産業株式会社 (15%) 
事業内容: LPガス貯蔵施設の貸与、LPガス貯蔵および受払

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【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、大分市日吉原の約10.7万平方メートルの敷地に広がる「LPG共同備蓄基地」の運営に集約されます。

✔「国策」としての備蓄事業 
同社は、LPG安定供給を使命とする国策のもと、国内第1号のLPガス共同備蓄会社として1984年に設立されました。その株主構成は、国のエネルギー政策を実行する「JOGMEC独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)」が50%の株式を保有し、民間のLPG元売大手である「ジクシス」と「岩谷産業」が残りの50%を保有するという、まさに「官民一体」のプロジェクトです。

✔事業の二本柱: 「施設の貸与」と「受払」 
同社の事業内容は、非常にシンプルかつ強固です。

LPガス貯蔵施設の貸与: 民間出資会社であるジクシスと岩谷産業に対し、「石油の備蓄の確保等に関する法律」で義務付けられた民間備蓄義務量を達成するための貯蔵施設(タンク)を貸し出します。

LPガス貯蔵および受払: 最大7万トン級の外航船で輸入されたLPGを、合計21万6,440トンの貯蔵能力を持つ5基の低温タンクに受け入れ(蔵置)。そこから、内航船(3基の桟橋)やタンクローリー(7レーン)で、九州・沖縄全域へLPGを出荷します。

この基地は、九州・沖縄地域のLPG需要の約30%、約250万世帯分の供給を担う「ハブ基地」であり、日本のエネルギー安全保障の西日本の「要」と言えます。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境 
LPGは、都市ガスが届かない地域の主要なエネルギー源であり、災害時にも迅速に復旧できる「分散型エネルギー」として、その価値が再評価されています。LPGの安定供給という同社の使命は、今後も揺らぐことはありません。 一方で、経営上の最大のリスクは、LPGの国際価格や為替レートの変動です。また、これほどの巨大施設を維持管理するためのコスト(修繕費)や、安全対策への継続的な投資が求められます。

✔内部環境(収益性分析) 
損益計算書(P/L)を見ると、売上高1,772百万円は、主にジクシスや岩谷産業といった株主(兼顧客)からの「タンク利用料(施設貸与)」や「受払手数料」で構成されていると推測されます。

これに対し、売上原価は1,534百万円(原価率 約86.6%)。これは、基地を24時間365日稼働させるためのオペレーションコスト、減価償却費、光熱費、修繕費などが中心です。 そこから販管費(1.72億円)を引いた営業利益は65百万円、経常利益は51百万円と、本業で堅実に利益を確保しています。

最終的な当期純利益は19百万円と、売上規模に比べると非常にスリムです。これは、同社が民間企業のような「利益最大化」を目的としておらず、国策インフラとして、「安定操業に必要なコストを過不足なく賄い、事業を継続する」ことに最適化されているためと分析できます。

✔安全性分析(財務分析) 
同社のB/S(貸借対照表)は、「国策インフラ企業」の模範とも言える鉄壁の財務を示しています。 総資産101.4億円のうち、実に92.3億円(約91%)が「固定資産」です。これは、敷地内にそびえ立つ5基の巨大な低温タンク群と、桟橋、ローリー充填設備といった、巨大なプラント設備そのものです。

この約92億円の巨額設備投資を支えているのが、純資産(63.4億円)です。自己資本比率は62.5%と極めて高く、資本金61億円(うちJOGMECが30.5億円出資)という強固な資本基盤が、この国家プロジェクトの安定性を担保しています。 利益剰余金は2.4億円と、資本金の規模に比べると小さいですが、これは前述の通り、過大な利益を蓄積するのではなく、必要なコストを賄う形で事業が運営されていることを示しています。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths) 
JOGMEC(50%)、ジクシス(35%)、岩谷産業(15%)という官民一体の強力な株主構成 
・国内第1号の共同備蓄基地であり、九州・沖縄の需要3割を担う独占的・戦略的な地位 
自己資本比率62.5%と、61億円の巨額資本金に支えられた鉄壁の財務基盤 
・35年以上にわたる無事故・安定操業の実績とノウハウ

弱み (Weaknesses) 
・売上がジクシス、岩谷産業という特定の株主(顧客)に依存している 
売上高営業利益率が約3.7%と低く、収益性が(構造的に)低い 
・設備の老朽化に伴う、将来的な大規模修繕・更新コストの発生

機会 (Opportunities) 
・災害に強い「分散型エネルギー」としてのLPGの価値の再評価 
・九州・沖縄地域の経済成長や産業発展に伴う、LPG需要の底堅い伸び 
・基地のノウハウを活かした、安全教育やコンサルティング事業への展開(もしあれば)

脅威 (Threats) 
・世界的な地政学リスクによる、LPGの輸入価格や海上輸送コストの高騰 
・大規模自然災害(地震津波)による、沿岸部にある基地設備への物理的リスク 
・(超長期的視点)オール電化や水素エネルギーへの移行による、LPG需要の減退

 

【今後の戦略として想像すること】
同社のような国策インフラ企業にとって、戦略は「成長」ではなく、「使命の完遂」と「持続」です。

✔短期的戦略 
最大のミッションは、1987年の操業開始以来35年以上にわたり続けてきた「安全・安定操業」の継続です。高圧ガス保安経済産業大臣表彰(2014年)など、数々の受賞歴が示す高い安全レベルを維持し続けることが最優先課題です。 タンクローリー陸上出荷100万台突破(2025年4月)という実績に甘んじることなく、日々のオペレーションを完璧にこなし、九州・沖縄の約250万世帯へのLPG供給を絶対に止めないことが求められます。

✔中長期的戦略 
中長期的な最大のテーマは、稼働から40年近くが経過する「プラント設備の維持・更新」です。 5基の低温タンクや桟橋といった巨大インフラは、いずれ大規模な修繕や更新(リプレース)の時期を迎えます。同社の61億円という巨額の資本金と、62.5%という高い自己資本比率は、こうした将来の巨額投資に備えるためのものであり、国のエネルギー安全保障を財務面から支える「防波堤」そのものです。今後も堅実に利益を確保し、この財務基盤を維持し続けることが戦略の中心となります。

 

【まとめ】
大分液化ガス共同備蓄株式会社は、単なるLPGの貯蔵会社ではありません。それは、「LPGの安定供給」という国策を、JOGMEC、ジクシス、岩谷産業と共に最前線で担う、日本のエネルギー安全保障の「西日本の要」です。

売上高約17.7億円、純利益19百万円という決算数値は、利益追求ではなく「使命の完遂」を最優先する同社の姿を反映しています。その真の強さは、自己資本比率62.5%、純資産63.4億円という鉄壁の財務基盤にあります。

九州・沖縄の約250万世帯の暮らしを支えるという重責を胸に、今日も大分の地で、巨大なタンク群は静かに、しかし確実に稼働し続けています。

 

【企業情報】
企業名: 大分液化ガス共同備蓄株式会社 
所在地: 東京都千代田区神田神保町一丁目13番(東京オフィス) 
代表者: 代表取締役社長 安藤 徹 
設立: 昭和59年(1984年)11月6日 
資本金: 61億円 
事業内容: LPガス貯蔵施設の貸与、LPガス貯蔵および受払、並びに付帯する一切の業務 
株主: 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構 (50%), ジクシス株式会社 (35%), 岩谷産業株式会社 (15%)

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