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#4365 決算分析 : 株式会社ワイジーオー 第74期決算 当期純利益 136百万円

私たちが毎日を過ごす「家」や、働く「オフィスビル」。その快適性や安全性、そしてデザイン性を決定づける窓やドア、壁といった建材は、どのような企業によって私たちの暮らしに届けられているのでしょうか。今回は、1923年(大正12年)に創業し、2023年に100周年を迎えた神奈川県平塚市の老舗企業「株式会社ワイジーオー」の決算を分析します。関東大震災や平塚大空襲といった幾多の困難を乗り越え、地域の復興と共に歩んできた歴史を持つ同社。その強靭な経営基盤と、時代の変化に対応しながら未来を見据える新たな挑戦に迫ります。

ワイジーオー決算

【決算ハイライト(第74期)】
資産合計: 1,907百万円 (約19.1億円)
負債合計: 1,438百万円 (約14.4億円)
純資産合計: 470百万円 (約4.7億円)

当期純利益: 136百万円 (約1.4億円)

自己資本比率: 約24.6%
利益剰余金: 425百万円 (約4.3億円)

【ひとこと】
創業100年を超える歴史の重みを感じさせる、非常に安定した経営状況です。売上高28.5億円に対し、1.36億円の当期純利益を確保しており、堅実な収益力を誇ります。自己資本比率も約24.6%と健全な水準を維持しており、長年の信頼と実績に裏打ちされた強固な経営基盤がうかがえます。

【企業概要】
社名: 株式会社ワイジーオー
創業: 1923年5月
事業内容: 住宅・ビル用建材(サッシ、ガラス、外壁材等)及び設備機器(太陽光発電システム、キッチン等)の販売・施工、並びに高齢者住替え支援事業

www.ygo.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
株式会社ワイジーオーの事業は、単なる建材の卸売に留まりません。「建てる」から「暮らす」まで、建物を軸とした人々のライフステージを総合的にサポートする3つの柱で構成されています。

✔住宅建材事業
同社の中核をなす、最も歴史のある事業です。地域の工務店ハウスメーカーを主な顧客とし、木造住宅の新築やリフォームに必要なあらゆる建材・設備機器を提供しています。創業事業であるガラスや、サッシ・ドアといった開口部材に強みを持つのはもちろんのこと、外壁材、木質建材、エクステリア商品から、システムキッチン、バスルームといった水回り設備、さらには太陽光発電システムや蓄電池といったエネルギー関連機器まで、その取扱商材は多岐にわたります。商品を販売するだけでなく、自社の施工管理体制と協力業者のネットワークを駆使し、工事まで一貫して請け負える「販売・施工一体」の体制が大きな強みです。

✔ビル建材事業
オフィスビル、マンション、商業施設、公共施設といった非木造建築に特化した専門事業です。金属製のサッシやドア、シャッター、自動ドアといった建具工事、窓や内装に使われるガラス工事、手すりや笠木などの金属工事を、設計段階から施工までワンストップで提供します。個別の住宅とは異なる高度な専門知識や技術、そして大規模な工事を管理するノウハウが求められるこの分野で、長年の実績を積み重ね、顧客からの信頼を勝ち得ています。

✔高齢者住替え支援事業(Escort)
2017年に参入した、最も新しい事業領域です。日本が直面する超高齢化社会という大きな課題に対応し、シニア世代の新たな住まい探しをサポートします。具体的には、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅といった施設への入居相談、紹介・斡旋を行います。単なる物件紹介に留まらず、介護、成年後見、葬祭、相続手続きといった、住み替えに伴って発生する様々な悩み事に対するコンサルティングまで手掛けているのが特徴です。100年にわたり地域で培ってきた信頼とネットワークが、このデリケートな事業領域においても大きな力となっています。


【財務状況等から見る経営戦略】
100年続く企業の財務には、どのような秘密が隠されているのでしょうか。

✔外部環境
同社が事業を展開する建設・住宅業界は、大きな変革期にあります。ウッドショックに端を発する資材価格の高騰や、深刻化する職人不足が経営を圧迫しています。新設住宅着工戸数は長期的に減少トレンドにある一方で、既存住宅を長く大切に使う「ストック型社会」への移行に伴い、リフォーム・リノベーション市場は拡大を続けています。特に、政府の補助金制度にも後押しされ、省エネ・断熱性能を向上させるリフォームへの関心は非常に高まっています。また、急速な高齢化は、バリアフリー改修や高齢者向け住宅市場の拡大という形で、新たな需要を生み出しています。

✔内部環境
同社の最大の強みは、100年の歴史を通じて築き上げた地域社会からの「信頼」という無形資産です。また、LIXILYKK APAGCといった複数の大手メーカーの製品を取り扱うことで、特定メーカーの都合に左右されず、顧客にとって真に最適な商品を提案できる「マルチベンダー」としての立場を確立しています。さらに、販売だけでなく自社で施工管理機能を持つことで、品質の担保と柔軟な工程管理を実現し、単なる価格競争に陥らない付加価値の高いサービスを提供しています。

✔安全性分析
貸借対照表を見ると、資産合計約19.1億円に対し、純資産が約4.7億円。自己資本比率は約24.6%と、建設関連業界としては安定した水準を確保しています。特筆すべきは、純資産の中核をなす利益剰余金が約4.3億円も積み上がっている点です。これは、創業以来、幾多の経済危機を乗り越えながらも、着実に利益を上げ、それを内部に蓄積してきた歴史の証左です。売上高28.5億円に対して1.36億円の当期純利益を確保しており、売上高当期純利益率は約4.8%と高い収益性を誇ります。これは、単にモノを安く売るのではなく、技術力や提案力といった付加価値を価格に転嫁できていることを示唆しています。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・100年を超える業歴がもたらす地域での絶大な信頼とブランド力
・複数メーカーの製品を扱うことによる中立的で最適な提案力
・販売から設計、施工管理までをワンストップで提供できる体制
・安定した収益力と、着実に内部留保を積み上げてきた健全な財務基盤

弱み (Weaknesses)
・建設業界全体の構造的な課題である、職人不足と後継者育成
・事業エリアが神奈川県を中心としており、地理的に事業範囲が限定されている

機会 (Opportunities)
・省エネ住宅への関心の高まりと、それに伴う断熱リフォーム需要の増加
・既存住宅を長く使うストック型社会への移行によるリノベーション市場の拡大
・超高齢化社会の進展に伴う、高齢者向け住宅市場および住替え支援サービスの需要増

脅威 (Threats)
・ウッドショック以降続く、建設資材価格の不安定化と高騰
・新設住宅着工戸数の長期的な減少トレンド
・職人の高齢化と人手不足のさらなる深刻化
・インターネット経由での建材販売など、異業種からの参入による競争激化


【今後の戦略として想像すること】
100年という節目を越え、次の時代を見据えた同社の戦略は、既存事業の深化と新規事業とのシナジー創出が鍵となりそうです。

✔短期的戦略
まずは、追い風が吹いている省エネ・断熱リフォーム市場を積極的に攻略していくでしょう。国や自治体の補助金制度を顧客に分かりやすく案内し、それを活用した窓や外壁の高断熱化リフォームの提案を強化することが考えられます。また、太陽光発電システムと蓄電池、さらにはV2H(Vehicle to Home)などを組み合わせた、家庭のエネルギー自給自足を目指す「ゼロエネルギーハウス(ZEH)」関連のソリューション提案にも一層注力していくと予想されます。

✔中長期的戦略
長期的には、「高齢者住替え支援事業(Escort)」と既存の建材事業とのシナジーを本格的に追求していくでしょう。例えば、高齢者が自宅を売却・賃貸して高齢者住宅へ移る際に、その自宅を価値向上させるためのリフォームやリノベーション工事をワンストップで受注するビジネスモデルの確立です。また、社会問題化している「空き家」に対し、建材事業で培ったノウハウを活かして再生・活用する事業への参入も視野に入ってきます。100年企業の信頼を最大の武器に、建物の「建設」から、高齢期の「住み替え」、そしてその後の「資産活用」まで、人の一生と住まいに寄り添う総合ライフサポート企業への進化を目指していくのではないでしょうか。


【まとめ】
株式会社ワイジーオーは、大正12年に一軒のガラス店として産声を上げ、関東大震災や戦争という時代の荒波を乗り越え、地域社会の復興と発展を支え続けてきた100年企業です。その歴史は、ガラスからサッシへ、そして住宅設備やエネルギー、さらには高齢者支援へと、常に時代のニーズを先取りして事業を革新してきた挑戦の歴史でもあります。売上高28.5億円、当期純利益1.36億円という安定した業績と健全な財務基盤は、その長い年月の間に築き上げられた顧客と社会からの信頼の証と言えるでしょう。これから同社は、リフォーム市場の拡大や超高齢化社会の進展という大きな潮流を捉え、単なる「建材商社」から、人々の「住まいと暮らしの未来」を創造する企業へと、さらなる進化を遂げていくことが期待されます。


【企業情報】
企業名: 株式会社ワイジーオー
所在地: 神奈川県平塚市平塚1-22-25 YGビル
代表者: 代表取締役 内藤 浩一
創業: 1923年5月
設立: 1953年7月
資本金: 4,500万円
事業内容: 住宅建材(サッシ・ガラス・外壁材・木質建材・エクステリア建材など)と設備機器(太陽光発電システム・蓄電池・システムキッチン・バスルームなど)の販売及び工事、ビル建材事業(金属製建具工事、ガラス工事、金属工事)の設計・施工、高齢者住替え支援事業(有料老人ホーム等の紹介・斡旋及びコンサルティング

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