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#4353 決算分析 : アライドコーヒーロースターズ株式会社 第55期決算 当期純利益 452百万円

缶コーヒー、コンビニのカウンターコーヒー、ファミリーレストランの一杯。私たちの日常は、様々なコーヒーで彩られています。しかし、それらのコーヒーが、一体どこで焙煎されているのかを意識する機会は少ないかもしれません。多くの場合、その背後には、様々なブランドの「味」を創り出し、安定供給する、巨大な専門焙煎企業(ロースター)が存在します。

今回は、日本のコーヒー業界を裏側から支えるBtoB専門の巨大ロースター、アライドコーヒーロースターズ株式会社の決算を読み解きます。2024年10月に東西のグループ会社が統合し、新たなスタートを切った同社。コーヒー生豆の専門商社である石光商事グループの中核企業として、年間約15億杯分ものコーヒーを焙煎する同社の、ビジネスモデルと強固な財務内容に迫ります。

アライドコーヒーロースターズ決算

【決算ハイライト(第55期)】
資産合計: 15,057百万円 (約150.6億円)
負債合計: 8,743百万円 (約87.4億円)
純資産合計: 6,314百万円 (約63.1億円)

当期純利益: 452百万円 (約4.5億円)

自己資本比率: 約41.9%
利益剰余金: 6,511百万円 (約65.1億円)

【ひとこと】
総資産150億円超という、BtoB専業ロースターとしては国内最大級の事業規模が目を引きます。自己資本比率も約41.9%と非常に高く、極めて健全な財務基盤を誇ります。その上で4.5億円もの当期純利益を確保しており、規模、安定性、収益性を兼ね備えた優良企業と言えるでしょう。

【企業概要】
社名: アライドコーヒーロースターズ株式会社
設立: 1972年9月
株主: 石光商事株式会社
事業内容: 工業用・業務用・家庭用のレギュラーコーヒー専門メーカー(OEM/ODM)

www.allied-coffee.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社は、自社の消費者向けブランドを持たず、顧客企業のブランド製品を開発・製造することに特化した、BtoBのビジネスモデルを展開しています。その供給先は、日本のコーヒー市場のあらゆる場面に及んでいます。

✔工業用レギュラーコーヒー
缶コーヒーやチルドカップコーヒーといったRTD(Ready To Drink)飲料や、コーヒーエキス、香料の「原料」となるコーヒーを製造します。数トン単位の巨大なロットで、飲料メーカーの厳しい品質基準に応える、大規模な生産能力と品質管理体制が求められます。

✔業務用レギュラーコーヒー
ファミリーレストランやファストフード、ホテルの朝食、オフィスコーヒーなどで提供されるコーヒーを供給します。各顧客のブランドイメージやコンセプトに合わせた、独自のブレンド開発力が強みです。

✔家庭用レギュラーコーヒー
スーパーなどで販売されている、他社ブランドの一杯抽出型ドリップコーヒーなどを製造(OEM/ODM)します。焙煎・粉砕だけでなく、個包装の充填までを一貫して行える、高度なパッケージング技術が必要です。

✔技術開発力
同社の競争力の源泉は、その高い技術開発力にあります。国内最多級の種類を誇る焙煎機を駆使し、顧客の求める多種多様な風味を創り出すことができます。また、味覚や嗅覚を数値化するセンサー分析や成分分析といった科学的なアプローチで、消費者の嗜好に合った新商品を開発する能力を有しています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
日本のコーヒー市場は成熟していますが、消費者の嗜好は多様化・高度化しており、高品質なスペシャルティコーヒーへの関心が高まっています。一方で、コーヒー生豆の国際相場や為替レートの変動は、原材料の調達コストに直接影響を与え、経営上の大きなリスク要因となります。また、企業の社会的責任として、サステナビリティへの取り組みも重要視されています。

✔内部環境
同社のビジネスモデルは、大手飲料メーカーや外食チェーンといった大口顧客との、長期的かつ安定的な取引が基本です。年間15億杯分という圧倒的な生産規模は、コーヒー生豆の調達においてスケールメリット(大量購入による価格交渉力)を生み出します。さらに、コーヒー生豆の専門商社である石光商事のグループ企業であることは、原料の安定確保と市況情報の入手の両面で、計り知れない強みとなっています。2024年10月の東西会社統合は、このスケールメリットと経営効率をさらに追求するための戦略的な一手です。

✔安全性分析
財務の安全性は非常に高い水準にあります。自己資本比率は41.9%と、多額の設備投資が必要な製造業として極めて健全です。総資産150億円に対し、純資産は63億円と厚く、安定した経営基盤がうかがえます。特筆すべきは、利益剰余金が65億円以上も積み上がっている点です。これは、50年以上の長きにわたり、安定して黒字経営を続け、堅実に利益を内部に蓄積してきた歴史の証明であり、盤石な企業体力を示しています。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・国内最大級の焙煎能力がもたらす、スケールメリットとコスト競争力。
・多様な顧客ニーズに応える、高い研究開発力と商品提案力。
・親会社である石光商事との連携による、原料調達の安定性。
自己資本比率41.9%という、極めて健全で盤石な財務基盤。

弱み (Weaknesses)
・自社の消費者向けブランドを持たないため、事業が完全にBtoB顧客に依存している。
・コーヒー生豆という国際商品市況の価格変動リスクに、収益が大きく左右される。

機会 (Opportunities)
コンビニエンスストアやスーパーマーケットのプライベートブランド(PB)コーヒー市場の拡大。
サステナビリティへの関心の高まりを背景とした、コーヒー抽出かすを再利用したバイオ燃料での焙煎など、環境配慮型製造の付加価値化。
・研究開発力を活かした、コーヒー由来の新素材や新商品の開発(例:薫香オイル)。

脅威 (Threats)
・大手顧客による、自社焙煎工場への投資(内製化)のリスク。
・BtoB市場における、同業他社との価格競争。
・天候不順などによる、コーヒー生豆の供給不安や価格の急騰。


【今後の戦略として想像すること】
✔短期的戦略
まずは、統合した東西両社の生産体制や組織文化を円滑に融合させ、経営効率を最大化することが最優先課題となります。スケールメリットを活かして、さらなるコスト削減や品質向上を進め、顧客への提供価値を高めていくでしょう。

✔中長期的戦略
「コーヒーの総合ソリューション企業」への進化がテーマとなります。単に言われたものを作るだけでなく、自社の研究開発力を武器に、市場のトレンドを先取りした新商品を積極的に顧客へ提案していくスタイルを強化するでしょう。また、コーヒー抽出かすを燃料化する「バイオコークス焙煎」のようなサステナビリティへの取り組みは、環境意識の高い大手顧客にとって大きな魅力となり、新たな競争優位性の源泉となり得ます。


【まとめ】
アライドコーヒーロースターズは、日本のコーヒー業界において、決して表舞台には立たない「影の巨人」です。その名は消費者に知られていなくとも、私たちが日々口にするコーヒーの多くが、同社の工場で生み出されています。50年以上の歴史で培った卓越した焙煎技術と、科学的なアプローチに基づく研究開発力。そして、石光商事グループとしての原料調達力と、自己資本比率41.9%という盤石の財務基盤。これらを武器に、これからも日本のコーヒー文化の多様性と品質を、その根底から支え続けていくことが期待されます。


【企業情報】
企業名: アライドコーヒーロースターズ株式会社
所在地: 東京都大田区仲池上二丁目23番21号
代表者: 代表取締役社長 小野 智昭
設立: 1972年9月
資本金: 3億1,440万円
事業内容: レギュラーコーヒー等のコーヒー豆の焙煎、加工、販売、食品類の加工、販売
株主: 石光商事株式会社

www.allied-coffee.co.jp

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