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#4160 決算分析 : 株式会社シーラソーラー 第13期決算 当期純利益 1百万円

脱炭素社会の実現に向け、その主役として期待される太陽光発電。工場の屋根や遊休地にソーラーパネルが広がる光景は、もはや珍しいものではなくなりました。しかし、その導入には、複雑な補助金申請、専門的な設計・施工、そして完成後の保守管理など、多くのハードルが存在します。これらの課題をワンストップで解決し、企業の再生可能エネルギー導入を加速させる専門家集団がいます。

今回は、上場企業である株式会社シーラテクノロジーズのグループ企業として、太陽光発電のトータルソリューションを提供する「株式会社シーラソーラー」の決算を分析します。成長市場のど真ん中で、積極的な事業展開を進める同社の、現在の財務状況と、未来に向けた壮大なエネルギー戦略に迫ります。

シーラソーラー決算

【決算ハイライト(第13期)】
資産合計: 1,648百万円 (約16.5億円)
負債合計: 1,214百万円 (約12.1億円)
純資産合計: 434百万円 (約4.3億円)

当期純利益: 1百万円 (約0.01億円)

自己資本比率: 約26.3%
利益剰余金: 204百万円 (約2.0億円)

【ひとこと】
総資産16億円を超える規模まで成長し、自己資本比率も約26.3%と、成長投資を続ける企業として健全な水準を維持しています。一方で、当期の純利益は1百万円と極めて低い水準です。これは、後述する自社発電所の開発など、将来の収益源となる資産への大規模な先行投資を行っている、典型的な「投資フェーズ」にあることを示唆しています。

【企業概要】
社名: 株式会社シーラソーラー
株主: 株式会社シーラテクノロジーズ グループ
事業内容: 太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー事業。請負工事(PPAモデル等)、発電所販売、自社での売電、電力小売、保守管理までをワンストップで提供。

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【事業構造の徹底解剖】
株式会社シーラソーラーの事業は、太陽光発電に関わるあらゆるニーズに応える、極めて多角的で包括的なポートフォリオで構成されています。

✔請負工事事業
同社の事業の大きな柱です。企業の脱炭素ニーズに応える、多様なサービスを展開しています。
・PPA(電力販売契約)モデル: 初期投資ゼロで太陽光発電を導入したい企業向けに、同社が企業の屋根などに設備を設置し、発電した電気を供給する「オンサイトPPA」や、遠隔地の発電所から電気を供給する「オフサイトPPA」を手掛けます。
省エネルギー事業: 太陽光発電だけでなく、工場の空調や照明などを高効率なものに更新する、総合的な省エネ化改修も請け負います。
補助金申請コンサル: 複雑で手間のかかる、国や自治体の補助金申請を、成功報酬型でサポートします。

発電所販売・売電事業
自社で太陽光発電所を開発し、投資家向けに販売する「発電所販売事業」と、開発した発電所を自社で保有・運営し、電力を電力会社に販売する「売電事業」も行っています。貸借対照表の固定資産が約9.6億円と大きいのは、これらの自社保有発電所資産を反映したものです。

✔小売電気事業・保守管理事業
自社ブランド「シーラ電気」として、一般の家庭や企業に電力を販売する「小売電気事業」も手掛けています。さらに、完成した発電所が長期にわたり安定して稼働するよう、点検やメンテナンスを行う「保守管理事業」も提供。まさに、太陽光発電の”入口から出口まで”全てをカバーする、ワンストップソリューション体制を構築しています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
カーボンニュートラルの実現は、今や日本全体の国家的目標です。企業にとっても、再生可能エネルギーの導入は、環境貢献だけでなく、電気代高騰のリスクヘッジや、企業価値向上に直結する重要な経営課題となっています。特に、初期投資が不要なPPAモデルへの需要は急速に高まっており、同社の事業には強力な追い風が吹いています。

✔内部環境
同社は、プロジェクトごとに収益が計上される「請負工事」や「発電所販売」といったフロー型事業と、長期にわたり安定した収益が見込める「PPA」「売電」「保守管理」といったストック型事業を、バランス良く組み合わせたビジネスモデルを構築しています。
当期の利益が1百万円と極めて低いのは、特に資産として計上される自社の売電用発電所の開発に、多額の資金を投じているためと推測されます。建設中のプロジェクトは、完成して売電を開始するまで、収益を生みません。現在の低利益は、将来の安定収益を生み出すための「先行投資」の表れと分析できます。

✔安全性分析
自己資本比率が約26.3%という数値は、発電所という多額の設備投資を必要とする事業を手掛ける企業として、健全な範囲内にあると言えます。約12億円の負債のうち、約7.7億円が固定負債であり、これは発電所開発のためのプロジェクトファイナンスなど、長期の借入金であると考えられます。
重要なのは、利益剰余金が2億円を超え、プラスである点です。これは、過去の事業で着実に利益を積み上げてきた実績があることを示しています。現在の低利益・高レバレッジの状態は、親会社である上場企業シーラテクノロジーズの強力な信用力と財務的バックアップを背景とした、計算された成長戦略の一環であると見るべきでしょう。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・PPAから電力小売まで、太陽光発電の全領域をカバーする「トータルソリューション」能力
・上場企業であるシーラテクノロジーズグループとしての、高い信用力と資金調達力
・自社で発電所保有することによる、安定したストック収益基盤

弱み (Weaknesses)
・先行投資フェーズにあり、当期の収益性が極めて低い点
発電所開発事業に伴う、高い有利子負債と財務レバレッジ

機会 (Opportunities)
・企業の脱炭素・ESG経営の加速に伴う、PPAモデルの需要の爆発的な増加
・FIT(固定価格買取制度)終了後の、新たな太陽光発電ビジネスモデルの創出
太陽光発電と蓄電池を組み合わせた、次世代エネルギーソリューションへの展開

脅威 (Threats)
太陽光発電事業者間の、熾烈な価格競争
・電力系統の容量不足による、新規発電所の接続制約
再生可能エネルギーに関する、国の政策(FIT価格など)の変更リスク


【今後の戦略として想像すること】
この先行投資フェーズにあるシーラソーラーの今後の戦略を考察します。

✔短期的戦略
現在建設中・開発中の自社発電所やPPAプロジェクトを、計画通りに完工・系統連系させ、収益化を急ぐことが最優先課題となります。これにより、安定したキャッシュフローを生み出し、財務体質を強化していく必要があります。また、補助金コンサルを入口に、新たな請負工事案件を獲得していくことも重要です。

✔中長期的戦略
「総合エネルギー企業」への進化が期待されます。太陽光発電を中核としながらも、今後は大型蓄電池を組み合わせた需給調整ビジネスや、EV(電気自動車)の充電インフラ事業など、より多角的なエネルギーサービスへと事業を拡大していくでしょう。親会社が不動産事業を手掛けているシナジーを活かし、新築のマンションや商業施設に、当初から同社のエネルギーソリューションを組み込んでいくことも、強力な戦略となり得ます。


【まとめ】
株式会社シーラソーラーは、単なる太陽光パネルの工事業者ではありません。それは、企業の脱炭素化という大きな課題に対し、PPA、省エネ、電力小売といったあらゆる角度から解決策を提示する、エネルギーのソリューションプロバイダーです。

今回の決算が示す低い利益水準は、同社が未来の安定収益源となる資産(発電所)の構築に、今まさに注力している「成長痛」の証です。上場企業であるシーラテクノロジーズグループの強力なバックアップのもと、同社はこれからも、日本のカーボンニュートラル実現に向けた重要な担い手として、その存在感を高めていくに違いありません。


【企業情報】
企業名: 株式会社シーラソーラー
代表者: 淵脇 健嗣
資本金: 6,400万円
事業内容: 太陽光発電を中心とした総合再生可能エネルギー事業。企業の屋根などに太陽光発電設備を設置・保有し、電気を供給するPPA(電力販売契約)事業、省エネルギー化改修工事、補助金コンサルティング発電所の開発・販売・自社運営(売電)、電力小売事業(シーラ電気)、保守管理事業などを手掛ける。株式会社シーラテクノロジーズのグループ会社。
株主: 株式会社シーラテクノロジーズ グループ

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