家を建てる。それは多くの人にとって一生に一度の大きな決断です。しかし、そのプロセスは、デザインや間取りを決める華やかな部分だけでなく、地盤調査や構造計算、省エネ基準への適合など、専門的で複雑な業務の連続です。特に、地域の中小工務店や設計事務所にとって、これらの専門業務は大きな負担となりがちです。そんな「家づくりのプロ」たちを、専門的な知見で支える「プロ」がいます。
今回は、社名に「在来工法住宅」への想いを込めた、住宅事業者向けのソリューションパートナー「在住ビジネス株式会社」の決算を分析します。「建サポ」ブランドのもと、家づくりの”縁の下の力持ち”として急成長を遂げる同社の、ユニークなビジネスモデルと健全な財務状況に迫ります。

【決算ハイライト(第13期)】
資産合計: 1,277百万円 (約12.8億円)
負債合計: 457百万円 (約4.6億円)
純資産合計: 819百万円 (約8.2億円)
当期純利益: 185百万円 (約1.9億円)
自己資本比率: 約64.2%
利益剰余金: 769百万円 (約7.7億円)
【ひとこと】
特筆すべきは、自己資本比率が約64.2%という、盤石の財務健全性です。売上高38億円を超える急成長を遂げながら、極めて安定した経営基盤を維持しています。当期純利益も1.8億円と非常に高水準であり、7億円を超える利益剰余金の蓄積は、同社のビジネスモデルがいかに高収益で、持続可能であるかを力強く証明しています。
【企業概要】
社名: 在住ビジネス株式会社
設立: 2012年6月1日
事業内容: 全国の住宅事業者(工務店、設計事務所など)を対象に、地盤関連事業、敷地調査事業、各種設計補助サービス(省エネ計算、構造計算など)を提供するBtoBソリューション事業
【事業構造の徹底解剖】
在住ビジネス株式会社の事業は、「建サポ」というサービスブランドのもと、家づくりの専門的で煩雑な業務を、住宅事業者に代わってワンストップで請け負うことに集約されます。まさに、「プロを支えるプロ」としての役割を担っています。
✔地盤関連業務
同社の事業の大きな柱です。住宅建設の基礎となる、地盤調査から、必要に応じた地盤補強工事、そして万一の不同沈下に備える地盤補償までをトータルで提供します。同社は自ら工事を行うのではなく、全国74社・約220拠点の協力会社ネットワークを活用し、地域に最適なサービスを差配するプラットフォーマーとしての役割を担っています。これにより、自社で重機や人員を抱えることなく、全国展開を可能にしています。
✔敷地調査・設計補助業務
家づくりの初期段階で不可欠な、現況測量や役所調査といった敷地調査を代行します。さらに、近年の法改正で専門性が増し、住宅事業者の大きな負担となっている「省エネ計算」や、耐震性を担保するための「構造計算」、地震による倒壊シミュレーション「wallstat」の入力代行など、設計業務を幅広くサポート。これにより、住宅事業者は本来注力すべき顧客対応やデザイン業務に集中することができます。
✔その他の事業
建物の解体・改修時に必須となる「石綿(アスベスト)事前調査」や、住宅設備機器の延長保証サービスなど、建築プロセスの川上から川下まで、住宅事業者が直面する様々な課題に対応するサービスを拡充しています。
【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
住宅・建設業界は、慢性的な人手不足、特に専門知識を持つ設計者や技術者の不足に悩まされています。加えて、2025年から施行される省エネ基準適合の義務化や、4号特例の縮小など、法規制は年々複雑化・厳格化しています。これらの課題は、地域の中小住宅事業者にとって大きな経営負担となりますが、裏を返せば、在住ビジネスのような専門的なアウトソーシングサービスへの需要を、強力に後押しする大きな追い風となっています。
✔内部環境
同社のビジネスモデルは、自社で多くの固定資産や人員を抱えるのではなく、全国に広がる協力会社ネットワークという「見えざる資産」を活用する、極めてアセットライトなプラットフォーム型事業です。これにより、高い利益率と、日本全国をカバーする広範なサービス提供能力を両立しています。顧客である住宅事業者の「業務過多」「人手不足」という明確な課題(ペイン)に対し、専門的な解決策(ソリューション)を提供することで、価格競争に陥りにくい、高付加価値なサービスを展開しています。
✔安全性分析
自己資本比率が約64.2%という数値は、企業の財務安全性を語る上で、傑出して優良な水準です。総資産約12.8億円のうち、負債はわずか4.6億円。事業活動の大部分を、返済不要の自己資本で賄っており、経営の安定性は盤石です。
短期的な支払い能力を示す流動比率(流動資産÷流動負債)も約2.6倍(1,200百万円 ÷ 457百万円)と非常に高く、資金繰りにも全く不安はありません。設立から10年余りで、7億円を超える利益剰余金を積み上げている事実は、同社のビジネスモデルがいかに高収益で、市場のニーズを的確に捉えているかの証明です。急成長しながらも、財務規律を厳格に保つ、極めて優れた経営が行われていると評価できます。
【SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・自己資本比率64.2%を誇る、鉄壁とも言える財務基盤
・住宅事業者の「人手不足」「法規制対応」という強いニーズに応える、時流に乗ったビジネスモデル
・全国を網羅する協力会社ネットワークを活用した、アセットライトで拡張性の高い事業構造
・地盤から設計、保証までを網羅する「ワンストップ」でのサービス提供能力
弱み (Weaknesses)
・事業の成否が、提携する協力会社の品質や対応力に左右される点
・国内の新築住宅着工数の動向に、事業が影響を受ける可能性
機会 (Opportunities)
・省エネ基準適合義務化など、法改正による設計サポート業務の需要の爆発的な増加
・リフォーム市場の拡大に伴う、既存住宅の調査(石綿、耐震など)や改修工事サポートへの展開
・蓄積した地盤データや設計データを活用した、新たなサービス開発の可能性
脅威 (Threats)
・同様の建築サポートサービスを提供する、競合他社の出現
・住宅着工数の長期的な減少トレンド
・協力会社の不足や、外注コストの高騰
【今後の戦略として想像すること】
この盤石な事業・財務基盤を持つ在住ビジネスの今後の戦略は、さらなるサービスの深化と拡大が中心となるでしょう。
✔短期的戦略
2025年の省エネ基準適合義務化は、同社にとって最大の商機です。全国の住宅事業者に対し、省エネ計算やBELS申請代行サービスを強力に推進し、この領域での圧倒的なシェアを獲得することに注力するでしょう。同時に、サービスの品質を支える協力会社ネットワークのさらなる拡充と、関係強化に努めると考えられます。
✔中長期的戦略
「家づくりのソリューションパートナー」として、提供価値の幅をさらに広げていくことが期待されます。例えば、新築住宅だけでなく、中古住宅流通やリフォーム市場に本格的に参入し、既存住宅のインスペクション(建物状況調査)や性能向上リフォームの設計支援などを新たな柱として育てることです。また、全国から集まる膨大な地盤・設計データを活用し、より精度の高い地盤リスク評価サービスの開発や、AIを活用した設計補助ツールの提供など、テクノロジー企業としての側面を強化していく可能性も秘めています。
【まとめ】
在住ビジネス株式会社は、「家づくりのプロを支える、もう一人のプロ」です。複雑化・高度化する建築業界において、専門的な業務をアウトソーシングしたいという住宅事業者のニーズを見事に捉え、設立からわずか10年余りで、売上38億円、自己資本比率64%超という、驚異的な成長と安定性を両立する優良企業へと飛躍を遂げました。
その強さの源泉は、全国の専門家と連携するプラットフォーム型のビジネスモデルと、時代の変化を的確に捉える先見性にあります。法規制の強化という、多くの事業者にとって「脅威」となる変化を、最大の「機会」へと転換する。在住ビジネスは、これからも、日本の安全・安心な住まいづくりを、縁の下から力強く支え続けていくことでしょう。
【企業情報】
企業名: 在住ビジネス株式会社
所在地: 東京都港区芝5-29-19 PMO田町Ⅳ3階
代表者: 馬込 恭多
設立: 2012年6月1日
資本金: 5,000万円
事業内容: 「建サポ」ブランドのもと、全国の住宅事業者向けに、地盤関連事業(調査・工事・補償)、敷地調査事業、住宅関連事業(省エネ計算、構造計算等の設計補助)、石綿事前調査などをワンストップで提供するソリューション事業。