決算公告データ倉庫

決算公告を自分用に収集・コメントし保管する倉庫。あくまで自分用であり、引用する決算公告を除き内容の正確性/真実性を保証できない点はご容赦ください。

#4078 決算分析 : 株式会社かぶらやグループ 第1期決算 当期純利益 73百万円

名古屋めしの代表格として、全国にその名を轟かせる、ひつまぶし。中でも、連日行列の絶えない超人気店として知られるのが「炭焼うな富士」です。この強力なブランドを擁し、うなぎ業態だけでなく、居酒屋、焼肉、鮨と、多彩な飲食店を次々と展開する、名古屋発の気鋭の飲食企業グループがあります。2024年にホールディングス体制へと移行し、次なる成長ステージへと舵を切った彼らは、今どのような経営状況にあるのでしょうか。

今回は、名古屋の食文化を牽引する、株式会社かぶらやグループ及びその中核事業会社である株式会社かぶらやの決算を読み解きます。その華やかな店舗展開の裏側にある財務戦略と、業界が直面する課題、そして未来への展望に迫ります。

かぶらやグループ決算かぶらや決算

【決算ハイライト(株式会社かぶらやグループ・第1期)】
資産合計: 3,201百万円 (約32.0億円)
負債合計: 766百万円 (約7.7億円)
純資産合計: 2,434百万円 (約24.3億円)

当期純利益: 73百万円 (約0.7億円)

自己資本比率: 約76.0%
利益剰余金: 73百万円 (約0.7億円)

【ひとこと】
2024年に設立された持株会社の第1期決算は、自己資本比率76%という圧倒的な財務安定性を示しています。これは、今後のM&Aや新規出店を加速させるための強固な経営基盤が構築されたことを意味します。一方で、中核事業会社は先行投資により当期赤字を計上しており、グループ全体が次なる成長に向けた変革期にあることがうかがえます。

【企業概要】
社名: 株式会社かぶらやグループ
設立: 2024年(創業は1992年)
事業内容: 名古屋を拠点とする飲食店グループの持株会社。中核事業会社である株式会社かぶらやを通じて、行列の絶えない人気うなぎ店「炭焼うな富士」を筆頭に、居酒屋、焼肉、鮨など、多様な業態の飲食店を名古屋・東京・京都・大阪で展開する。

kaburaya-group.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、強力なブランドを核とした多業態展開と、M&Aによる成長を両輪とする「食のブランドポートフォリオ戦略」によって成り立っています。2024年の持株会社化は、この戦略をさらに加速させるための重要な一手です。

✔うなぎ事業(炭焼うな富士)
現在のグループの成長を牽引する最大の柱です。2018年に名古屋の名店「炭焼うな富士」を事業継承して以来、その伝統と味を守りながら、積極的な多店舗展開を推進。名古屋市内だけでなく、東京(有楽町、八重洲)、京都、大阪(梅田)と、国内の主要都市の一等地へ次々と出店を果たし、ナショナルブランドとしての地位を確立しています。

✔レストラン・居酒屋事業
1992年の洋食店としての創業から続く、同社の事業の原点であり、多様性の源泉です。「名古屋大酒場 かぶらや総本家」「鮨あしべ」「熟成焼肉 八億円」など、様々なジャンルと価格帯の店舗を運営。これにより、特定の食材の市況変動や、一部の市場の景気動向に左右されにくい、リスク分散の効いた事業ポートフォリオを構築しています。

✔ホールディングス体制による成長戦略
2024年10月に、純粋持株会社である「かぶらやグループ」を設立し、その傘下に事業を運営する「かぶらや」を置く体制へと移行しました。これは、グループ全体の経営戦略の策定や資金調達を持株会社が担い、事業会社は店舗運営とサービス向上に集中することを可能にします。これにより、意思決定のスピードを上げ、今後のさらなる新規出店やM&Aを機動的に進めるための経営基盤を強化したと言えます。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
外食産業は、コロナ禍からの人流回復やインバウンド需要の本格化を追い風に、市場全体としては回復基調にあります。特に、「うなぎ」のような日本の食文化を代表する高価格帯の業態は、訪日外国人観光客からの強い人気を集めています。しかしその一方で、深刻な人手不足、人件費の上昇、そして原材料費や光熱費の高騰は、飲食店の利益を圧迫する大きな課題となっています。

✔内部環境
2つの決算公告を比較すると、グループの戦略が浮かび上がります。持株会社(かぶらやグループ)は、自己資本比率76%と極めて盤石な財務を誇ります。これは、今後の成長投資(M&Aや大型出店)を支えるための強力な体力があることを示しています。一方、事業会社(かぶらや)は、当期86百万円の純損失を計上し、利益剰余金もマイナスです。これは、大阪梅田店の出店など、成長のための積極的な先行投資が、原材料費高騰などのコスト増と重なり、短期的に収益を圧迫した結果と推測されます。グループ全体としては、「うな富士」という強力な収益ブランドで稼ぎつつ、その利益をさらなる店舗展開や新規業態開発に再投資するという、成長サイクルを回している段階にあると言えるでしょう。

✔安全性分析
グループ全体の財務的な安全性は、持株会社である「かぶらやグループ」の潤沢な純資産(約24億円)が担保しています。中核事業会社である「かぶらや」単体では赤字を計上していますが、これは成長過程における計画的な投資の結果であり、グループ全体で見れば、この先行投資を吸収できる体力は十分にあると判断できます。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・「炭焼うな富士」という、国内外に通用する圧倒的なブランド力と集客力
・うなぎ、居酒屋、焼肉、鮨など、多様な業態を展開することによるリスク分散能力
持株会社体制への移行による、強固な財務基盤と機動的な経営体制
M&Aによるブランド獲得と成長の実績

弱み (Weaknesses)
・中核事業会社が赤字であり、コスト管理や収益性の改善が喫緊の課題
・複数のブランド・業態を高いレベルで維持・管理していくための、複雑で高度な経営能力の必要性

機会 (Opportunities)
・インバウンド需要の本格的な回復と、円安を背景とした訪日外国人による飲食消費の拡大
・国内外における、「うなぎ」をはじめとする日本の高品質な食文化への関心の高まり
・後継者不足に悩む、地域で愛される優良飲食店のM&A(事業承継)の機会

脅威 (Threats)
・うなぎの基幹食材である稚魚(シラスウナギ)の不漁や、それに伴う価格の急騰リスク
・人件費、食材費、水道光熱費といった、あらゆる運営コストの継続的な上昇圧力
・景気後退局面における、外食、特に高価格帯の消費の手控え
・同業他社との、都心部一等地への出店競争および人材獲得競争の激化


【今後の戦略として想像すること】
「炭焼うな富士」ブランドのさらなる飛躍と、第二、第三の柱の育成が戦略の中心となると考えられます。

✔短期的戦略
まずは、中核事業会社である「かぶらや」の黒字化が最優先課題となるでしょう。既存店舗の生産性向上や、全社的なコスト管理を徹底します。同時に、インバウンド需要を確実に取り込むため、「炭焼うな富士」ブランドの海外向けプロモーションや、予約システムの多言語対応などを強化していくと考えられます。

✔中長期的戦略
「炭焼うな富士」を、国内の主要都市を網羅するナショナルブランド、さらには海外展開も視野に入れたグローバルブランドへと育成していくことが最大の目標となるでしょう。また、持株会社の強固な財務基盤を活かし、第二、第三の「うな富士」となりうる、独自の魅力とブランド力を持つ地方の優良飲食店のM&Aを積極的に進めていくことが予想されます。これにより、単なる飲食店チェーンから、多様な食のブランドを育成・展開する「フード・ブランド・プラットフォーマー」へと進化していくのではないでしょうか。


【まとめ】
株式会社かぶらやグループは、単なる多業態の飲食店チェーンではありません。それは、M&Aによるブランド育成力と、多業態展開で培った店舗運営ノウハウを武器に、食の世界で成長を目指す「フード・ブランド・プラットフォーマー」です。事業会社の赤字は、全国、そして世界へと飛躍するための先行投資であり、それを支える持株会社の強固な財務基盤が、グループの未来への本気度を物語っています。名古屋発の「うな富士」が、世界中の人々を魅了するグローバルブランドへと成長していく、その挑戦から目が離せません。


【企業情報】
企業名: 株式会社かぶらやグループ(持株会社
所在地: 愛知県名古屋市中区古渡町19番9号
代表者: 代表取締役社長 榎本 渉
設立: 2024年10月1日(創業:1992年5月2日)
資本金: 50,000千円
事業内容: 子会社の経営管理及びこれに付随する業務

企業名: 株式会社かぶらや(事業会社)
所在地: 愛知県名古屋市中区古渡町19番9号
代表者: 代表取締役社長 榎本 渉
設立: 2023年11月28日
資本金: 50,000千円
事業内容: 飲食店経営、食材の加工・販売、店舗コンサルティングなど
株主: 株式会社かぶらやグループ(100%)

kaburaya-group.co.jp

©Copyright 2018- Kyosei Kiban Inc. All rights reserved.