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#4062 決算分析 : 流浸工業株式会社 第59期決算 当期純利益 28百万円

金属の「強さ」と、プラスチックの「錆びにくさ」や「絶縁性」。もし、この二つの異なる素材の長所だけを組み合わせることができたら、私たちの暮らしや産業はもっと豊かで安全になるはずです。実は、それを実現する「流動浸漬」という特殊なコーティング技術があります。そして、半世紀以上も前に、日本で初めてこの技術を導入し、黙々と日本のものづくりを支え続けてきたパイオニア企業が大阪に存在します。

今回は、金属に新たな命を吹き込む樹脂コーティングの専門家集団、流浸(りゅうしん)工業株式会社の決算を読み解きます。その驚異的な財務基盤と、ニッチな市場でトップを走り続ける「オンリーワン」の技術力に迫ります。

流侵工業決算

【決算ハイライト(59期)】
資産合計: 2,012百万円 (約20.1億円)
負債合計: 322百万円 (約3.2億円)
純資産合計: 1,691百万円 (約16.9億円)

当期純利益: 28百万円 (約0.3億円)

自己資本比率: 約84.0%
利益剰余金: 1,611百万円 (約16.1億円)

【ひとこと】
自己資本比率約84.0%、利益剰余金は16億円超という、驚異的な財務基盤が際立っています。固定負債ゼロという実質的な無借金経営を実践しており、まさに「超」優良企業です。半世紀以上にわたり、ニッチな専門技術を武器に堅実な経営を続けてきたパイオニア企業の、揺るぎない底力がうかがえます。

【企業概要】
社名: 流浸工業株式会社
設立: 1966年
事業内容: 日本で最初に「流動浸漬法」の技術を導入したパイオニア企業。金属の表面にプラスチックの機能的な膜をコーティングする専門技術で、防錆、絶縁、耐薬品性といった様々な付加価値を、幅広い産業部材に提供している。

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【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、金属とプラスチックという異なる素材を高度に融合させ、それぞれの長所を最大限に引き出す「樹脂コーティング・ソリューション事業」に集約されます。特に、同社の社名の由来ともなった「流動浸漬法」をコア技術としています。

✔樹脂コーティング事業
同社の中核事業です。まず、コーティングしたい金属製品を高温に加熱します。次に、空気の力で砂のようにサラサラにしたプラスチックの微粉末(パウダー)が入った槽の中に、その熱い金属製品を浸します。すると、熱で溶けたプラスチックが金属の表面に均一で厚い膜となって付着します。これが「流動浸漬法」です。この技術により、金属製品に「錆びない」「電気を通さない」「薬品に強い」「衝撃に強い」「美しい装飾性」といった、金属だけでは得られない様々な機能を付与します。

✔オリジナル製品開発事業
長年培ったコーティング技術を応用し、自社ブランド製品の開発・販売も行っています。例えば、内外面に防錆性能の高い樹脂コーティングを施した軽量鋼管「リューコート®Light」は、建物の空調ダクトなどに使用され、優れた耐久性と施工性を両立させた製品として高い評価を得ています。

OEM製品開発・基材加工ネットワーク
顧客の要望に応じて、製品の設計段階から共同で開発を行うOEM事業も手掛けています。関連会社ではコーティング前の金属基材の加工も行っており、材料の加工から最終的なコーティングまでを一貫して手掛けられる体制が、顧客にとっての利便性と信頼に繋がっています。

✔独自の技術力(オリジナル樹脂開発)
同社の競争力を際立たせているのが、奈良工場での樹脂パウダーの自社製造能力です。コーティングの原料となるプラスチックパウダーを自社で開発・製造できるため、顧客の特殊な要望に応えることが可能です。近年では、抗ウイルス効果を持ったナイロン樹脂の開発に成功するなど、市販の材料では実現できない「他社には真似できないオンリーワン商品」を生み出す力の源泉となっています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
同社のコーティング技術が応用される産業は、建築設備、水道、電気設備、自動車、医療機器、さらには日用品まで、非常に多岐にわたります。近年では、インフラの老朽化対策としての防錆・耐食技術へのニーズや、製品の長寿命化、高機能化への要求が高まっており、同社の専門技術にとっては安定した事業機会が存在します。一方で、顧客となる製造業の景気動向や設備投資の波に、業績が影響を受ける側面もあります。

✔内部環境
16億円を超える莫大な利益剰余金が象徴するように、圧倒的な財務基盤が同社の最大の強みです。この潤沢な自己資金があるからこそ、景気の変動に左右されることなく、国内最大級の大型加工設備の維持・更新や、オリジナル樹脂開発といった長期的な視点での研究開発に、継続的な投資が可能となっています。当期純利益28百万円という数字は、その巨大な資産規模から見れば控えめに見えますが、これは安定した収益構造の中で、将来への投資や、経営理念に掲げる「働き甲斐のある職場づくり」のための従業員への還元を厚く行っている結果である可能性も考えられます。

✔安全性分析
財務の安全性は「鉄壁」であり、最高レベルです。自己資本比率が約84.0%と極めて高く、固定負債がゼロであることから、実質的な無借金経営を実践しています。短期的な支払い能力を示す流動比率も約386%と非常に高く、資金繰りにも全く懸念はありません。資本金8,000万円に対し、その20倍以上にもなる約16億円の利益剰余金は、設立以来半世紀以上にわたり、ニッチな専門技術を武器に着実な黒字経営を継続し、利益を堅実に内部留保してきた歴史の賜物です。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
自己資本比率84%、利益剰余金16億円超という、圧倒的に強固な財務基盤
・日本で最初に技術を導入した「流動浸漬のパイオニア」として、半世紀以上にわたり蓄積してきた技術的ノウハウとブランド力
・抗菌・抗ウイルス性など、特殊な機能を持つオリジナル樹脂を自社開発・製造できる、他社にはない独自の技術開発力
・大阪、奈良、関東の3拠点体制と、小物から国内最大級の大型部材まで対応できる幅広い生産設備

弱み (Weaknesses)
・「流動浸漬」というニッチな専門技術であり、市場規模の爆発的な拡大は見込みにくい
・顧客がBtoBの製造業中心であるため、日本の製造業全体の景気動向や生産量の変動に業績が左右されやすい

機会 (Opportunities)
・橋梁、水道管、建築資材といったインフラの長寿命化対策としての、高耐久な防錆・耐食コーティング需要の拡大
・EV(電気自動車)のバッテリーケースや関連部品など、高い電気絶縁性や耐食性が求められる新たな部材への応用
・医療機器や食品機械など、高い衛生性(抗菌・抗ウイルス性)が求められる分野への、オリジナル高機能樹脂コーティングの展開

脅威 (Threats)
・より安価な海外のコーティング技術や、代替となる新素材(CFRPなど、金属以外の材料)の出現
・主要顧客である製造業の生産拠点の海外移転による、国内での加工需要の減少
・原材料であるプラスチック樹脂の価格高騰による、コスト上昇圧力


【今後の戦略として想像すること】
イオニアとして培ってきた技術力と、盤石な財務基盤を活かし、さらなる付加価値の創造を目指すと考えられます。

✔短期的戦略
既存顧客との関係を深化させ、安定した収益基盤を維持するでしょう。特に、インフラ関連や建築設備関連の分野で、自社開発のオリジナル製品「リューコート®」シリーズの拡販に注力します。また、抗ウイルス効果を持つナイロン樹脂など、独自開発した高機能樹脂の優位性を、医療や食品といった新たな分野の顧客に積極的にアピールし、新規市場を開拓していくと考えられます。

✔中長期的戦略
「流動浸漬のパイオニア」としての知見を、次の成長分野へと展開していくでしょう。例えば、EVや再生可能エネルギー関連設備など、これから市場が本格的に拡大する分野で求められるであろう特殊なコーティング(高い絶縁性、耐熱性、軽量化など)の技術開発に、その潤沢な自己資金を先行投資することが考えられます。また、OEM製品開発のノウハウを活かし、単なる加工業者としてだけでなく、顧客の新製品開発に初期段階から参画する「開発パートナー」としての地位を確立し、より付加価値の高いビジネスモデルへと進化していくことも期待されます。


【まとめ】
流浸工業株式会社は、単なる塗装会社や金属加工会社ではありません。それは、日本で最初に「流動浸海外の技術を導入し、金属にプラスチックの機能性を与えることで、半世紀以上にわたり日本のものづくりを縁の下で支えてきた「素材の融合技術のパイオニア」です。決算書が示す16億円超の利益剰余金は、その揺るぎない技術力と誠実な経営の歴史を物語っています。腐食から社会インフラを守り、漏電から人を守り、時にはウイルスから私たちの暮らしを守る。同社のコーティング技術は、社会の様々な場面で、安全・安心な環境を支えています。これからも、その盤石な経営基盤とパイオニア精神を武器に、時代のニーズに合わせた新たな付加価値を創造し、次の50年も日本のものづくりに不可欠な存在として輝き続けることが期待されます。


【企業情報】
企業名: 流浸工業株式会社
所在地: 大阪府堺市美原区大保225番地
代表者: 代表取締役 大久保 秀俊
設立: 1966年4月
資本金: 80,000千円
事業内容: 流動浸漬法によるプラスチックコーティング加工、コーティング鋼管の製造・販売、OEM製品の開発など

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