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#3982 決算分析 : 一般財団法人セガサミー文化芸術財団

ゲームやエンターテインメントで世界を席巻するセガサミーグループ。その創造性の源泉はどこにあるのでしょうか。同グループは、自社の事業が「創造産業」であり、その基盤となる先端的な文化芸術を社会全体で支えることが企業の責務である、という明確な哲学を持っています。今回は、その哲学を実践するため、特に現代舞踊(コンテンポラリーダンス)の振興に情熱を注ぐ、一般財団法人セガサミー文化芸術財団の決算を読み解きます。非営利の財団法人の財務状況から、その活動の安定性と未来への展望に迫ります。

一般社団法人セガサミー文化芸術財団決算

【決算ハイライト(7期)】
資産合計: 31百万円 (約0.3億円)
負債合計: 2百万円 (約0.02億円)
純資産合計(正味財産合計): 29百万円 (約0.3億円)

自己資本比率(正味財産比率): 約92.9%

【ひとこと】
資産の約93%が返済不要な自己資本(正味財産)で構成されており、財務基盤は極めて健全かつ盤石です。これは、財団が設立母体であるセガサミーグループからの支援を元に、安定的かつ長期的な視点で文化芸術支援活動を行うための、理想的な財務状態と言えます。

【企業概要】
社名: 一般財団法人セガサミー文化芸術財団
設立: 2019年3月1日
株主: 設立母体はセガサミーグループ
事業内容: 音楽振興、舞踊の振興・普及、国際交流の促進を目的とした文化芸術支援。特に、横浜のダンスハウス「Dance Base Yokohama」の運営が中心。

www.segasammy.or.jp


【事業構造の徹底解剖】
同財団の事業は、利益を追求するものではなく、設立趣旨に基づいた公益性の高い文化芸術支援活動そのものです。

✔Dance Base Yokohama (DaBY) の運営
財団の活動の中核をなすのが、横浜・北仲通に拠点を置く、プロフェッショナルのためのダンスハウス「Dance Base Yokohama(DaBY)」の運営です。ここでは、単に練習場所を貸し出すだけでなく、国内外の著名な振付家を招いた新作の企画・制作、若手ダンサーの育成、創作活動の支援などを通じて、日本のコンテンポラリーダンス界全体のレベルアップを目指しています。

✔芸術イベントへの助成・協賛
ダンス分野に留まらず、より広い文化芸術活動への支援も行っています。例えば、日本を代表するジャズの祭典「TOKYO JAZZ」への協賛などを通じて、夢と感動溢れる芸術文化の振興に貢献しています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
舞台芸術をはじめとする文化芸術分野は、その創造性の高さにもかかわらず、慢性的な資金不足という課題を常に抱えています。特に、コンテンポラリーダンスのような先端的な芸術は、市場の評価が定まりにくく、公的な助成や民間からの支援がその存続と発展に不可欠です。

✔内部環境
最大の強みは、設立母体であるセガサミーグループからの強力なバックアップです。「創造産業を支える基盤」として文化芸術の重要性を深く理解している親会社からの安定した資金提供が、財団の活動の根幹を支えています。財団のビジネスモデルは、利益を最大化することではなく、託された資金を、いかに効果的かつ持続可能な形で、文化芸術の振興というミッション達成のために活用するか、という点にあります。

✔安全性分析
自己資本比率(正味財産比率)が92.9%というのは、財務の安全性が極めて高いことを示しています。負債がほとんどなく、活動資金をほぼ全て自己資本(正味財産)で賄っているため、外部環境の変化に左右されない、安定的で長期的な活動が可能です。決算書に記載のある「基本財産充当額」3百万円は、財団の存立の基礎として維持することが義務付けられた、いわば活動の元手です。これを含む約29百万円の正味財産は、財団がその使命を今後も着実に果たしていくための、十分な体力を有していることの証左です。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
セガサミーグループという、強力な設立母体からの安定した支援
・「Dance Base Yokohama」という、国内有数の物理的な活動拠点の保有
・92.9%という、極めて健全で盤石な財務基盤
・明確な社会的使命と、文化芸術界における高い信用

弱み (Weaknesses)
・活動資金が、設立母体であるセガサミーグループの業績や経営方針に依存する点
・事業の成果が、金銭的な利益ではなく、文化的な価値という尺度で測られるため、定量的な評価が難しい

機会 (Opportunities)
・横浜という国際的な港町を拠点とした、海外のアーティストや団体との国際交流の活発化
・企業のメセナ活動(芸術文化支援)への関心の高まり
・オンライン配信などを活用した、新たな観客層の開拓

脅威 (Threats)
・設立母体であるセガサミーグループの業績悪化による、支援縮小のリスク
・社会全体の景気後退による、文化芸術への関心の低下


【今後の戦略として想像すること】
設立から5年が経過し、日本のコンテンポラリーダンス界における確固たる地位を築いた今、その影響力をさらに高めていくフェーズに入ると考えられます。

✔短期的戦略
まずは、「Dance Base Yokohama」を中核とした活動を継続し、質の高い公演の企画・制作や、若手アーティストの支援をさらに充実させていくでしょう。これにより、「DaBYに行けば、日本のダンスの最先端に触れられる」というブランドイメージを、国内外で盤石なものにしていきます。

✔中長期的戦略
設立趣旨に立ち返り、日本の「創造産業」全体を豊かにするための、より広範な役割を担っていくことが期待されます。例えば、DaBYで育ったダンサーや振付家が、セガサミーのゲームコンテンツにおけるモーションキャプチャーや演出に参加するなど、グループ内での具体的なシナジーを創出していく可能性があります。最終的には、日本の文化芸術と産業を繋ぐ、ユニークなハブとしての役割を確立していくことが、長期的な目標となるでしょう。


【まとめ】
一般財団法人セガサミー文化芸術財団は、自社の事業の根源である「創造性」を社会全体で育むという、企業の社会的責任に対する、一つの理想的な答えを示しています。その決算書は、93%近い自己資本(正味財産)比率という、揺るぎない安定性を映し出しており、それは、同財団の文化芸術への貢献が、一過性のものではなく、長期的で真摯なものであることの力強い証明です。「Dance Base Yokohama」という拠点を中心に、日本の、そして世界のアーティストたちが共鳴し合う。その活動は、私たちの心を豊かにするだけでなく、巡り巡って、日本の創造産業全体の未来を明るく照らす、貴重な光となるに違いありません。


【企業情報】
企業名: 一般財団法人セガサミー文化芸術財団
所在地: 神奈川県横浜市中区北仲通5-57-2 KITANAKA BRICK&WHITE BRICK North 3階
代表者: 代表理事 里見 治紀
設立: 2019年3月1日
事業内容: 音楽振興、舞踊の振興・普及及び国内外のアーティスト・組織団体との国際交流の促進など
株主: 設立母体はセガサミーグループ

www.segasammy.or.jp

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