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#3977 決算分析 : 株式会社グリーン電力ホールディングス 第3期決算 当期純利益 ▲1,211百万円

脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーへの期待はかつてないほど高まっています。その中でも、日本の豊かな自然を活かした「小水力発電」や「地熱発電」は、安定したクリーンエネルギー源として注目されています。今回は、FX事業などで知られるISホールディングスグループの中で、この再生可能エネルギー事業を統括する司令塔、株式会社グリーン電力ホールディングスの決算を読み解きます。その決算書が示すのは「債務超過」という極めて厳しい財務状況。その背景にある、壮大なビジョンとビジネスモデルに迫ります。

グリーン電力ホールディングス決算

【決算ハイライト(3期)】
資産合計: 566百万円 (約5.7億円)
負債合計: 1,633百万円 (約16.3億円)
純資産合計: ▲1,066百万円 (約▲10.7億円)

当期純損失: 1,211百万円 (約12.1億円)

利益剰余金: ▲1,221百万円 (約▲12.2億円)

【ひとこと】
純資産が約▲10.7億円と、巨額の債務超過(資産を負債が超過している状態)に陥っており、財務状況は極めて深刻です。当期の損失額も純資産のマイナス幅を上回っており、親会社であるISホールディングスによる大規模な資金支援を前提とした先行投資フェーズであることが明確にうかがえます。

【企業概要】
社名: 株式会社グリーン電力ホールディングス
設立: 2022年7月1日
株主: 株式会社 IS ホールディングス (99%)
事業内容: 再生可能エネルギーによる発電事業及び発電設備事業を手掛けるグループ会社(グリーン電力エンジニアリング、朝日機工)の支配・管理を行う持株会社

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【事業構造の徹底解剖】
同社は、自らが直接発電事業を行うのではなく、傘下の専門事業会社を統括する「純粋持株会社ホールディングカンパニー)」です。その戦略は、グループ内での強力なシナジー創出にあります。

✔発電事業会社(株式会社グリーン電力エンジニアリング)
グループの事業の中核を担うのが、子会社であるグリーン電力エンジニアリングです。この会社は、小水力発電所などの再生可能エネルギー発電所の開発、設計、建設、そして完成後の運営までを一貫して手掛けています。

✔発電設備製造会社(朝日機工株式会社)
同社グループの最大の強みであり特徴が、水力発電に不可欠な水車などの発電設備を製造するメーカー「朝日機工」を傘下に置いている点です。これにより、発電所の開発から、心臓部である設備の製造までをグループ内で完結させる「垂直統合モデル」を構築。コスト競争力、技術的な連携、そして事業展開のスピードにおいて、他社にはない優位性を確保しています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、国を挙げて再生可能エネルギーの導入が推進されており、事業環境には極めて強力な追い風が吹いています。固定価格買取制度(FIT/FIP)により、発電事業の長期的な収益安定性も確保されています。

✔内部環境
ISホールディングスグループの一員であることが、経営の根幹を支えています。再生可能エネルギー事業は、発電所が完成し、売電収入が得られるようになるまで、莫大な先行投資が必要となります。今回の決算書が示す巨額の損失と債務超過は、まさにこの先行投資フェーズにあることの証左です。親会社であるISホールディングスの強力な資金力がなければ、このビジネスモデルは成り立ちません。

✔安全性分析
純資産がマイナスとなる「債務超過」の状態は、企業単体で見れば、事業の継続が困難なことを示す極めて深刻なシグナルです。しかし、同社はISホールディングスグループの再生可能エネルギー事業を担うための中間持株会社という特殊な位置づけです。その負債の多くは、親会社からの借入金など、グループ内の資金移動であると推測されます。つまり、この決算書は、親会社であるISホールディングスが、将来の大きなリターンを見据え、このグリーン電力事業へいかに巨額の投資を行っているかを物語っているのです。安全性は、親会社の経営体力によって完全に担保されていると考えるのが適切です。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
発電所の開発から設備の製造までを内製化する、ユニークな「垂直統合モデル」
・親会社であるISホールディングスの、強力な資金力と信用力
再生可能エネルギーという、社会貢献性の高い成長市場に事業領域を定めている点

弱み (Weaknesses)
債務超過という、極めて脆弱な財務基盤
・事業の存続が、親会社の経営方針と資金支援に完全に依存している点
発電所の開発には長い年月を要し、投資回収までの期間が長い

機会 (Opportunities)
・国のカーボンニュートラル政策に伴う、再生可能エネルギー市場のさらなる拡大
・小水力や地熱など、未開発のエネルギー資源が国内に豊富に存在すること
・グループ内で培った技術を、外部企業へのエンジニアリングサービスとして提供する可能性

脅威 (Threats)
・FIT/FIP制度の将来的な見直しや、買取価格の低下
発電所の建設に適した土地の確保を巡る、競争の激化
・親会社の経営方針の変更による、事業への支援見直しのリスク


【今後の戦略として想像すること】
ISホールディングスグループの重要戦略の一環として、日本のエネルギー転換を担う存在を目指します。

✔短期的戦略
まずは、傘下のグリーン電力エンジニアリングが手掛ける発電所プロジェクトを、計画通りに完成・稼働させることが最優先です。一つでも多くの発電所が売電を開始し、安定した収益を生み出すことで、現在の赤字構造からの脱却を図ります。

✔中長期的戦略
垂直統合モデル」の強みを最大限に活かし、再生可能エネルギーの総合エンジニアリング企業としての地位を確立することが目標となります。小水力発電で実績を積み上げた後、より大規模な地熱発電バイオマス発電へと事業領域を拡大していくでしょう。最終的には、ISホールディングスグループの新たな収益の柱として、金融事業に並ぶほどの規模へと成長させることが期待されます。


【まとめ】
株式会社グリーン電力ホールディングスは、ISホールディングスグループが未来へ向けて放つ、壮大な挑戦を象徴する企業です。その決算書は、債務超過という厳しい財務状況を示していますが、これは失敗の結果ではなく、未来のクリーンエネルギー社会を創るための、大規模な先行投資の証です。発電所の開発と設備の製造をグループ内で一貫して行うという、他社にはない強力なビジネスモデルを武器に、日本のエネルギー転換の一翼を担う。その挑戦は、まさに始まったばかりです。


【企業情報】
企業名: 株式会社グリーン電力ホールディングス
所在地: 東京都千代田区丸の内 1-11-1 パシフィックセンチュリープレイス丸の内 24 階
代表者: 遠藤 昭二
設立: 2022年7月1日
資本金: 7,600万円
事業内容: 電力発電事業やその関連事業、及び当該事業会社の支配・管理
株主: 株式会社 IS ホールディングス (99%)

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