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#3974 決算分析 : エバーグリーン・マーケティング株式会社 第10期決算 当期純利益 3,935百万円

2016年の電力小売全面自由化以降、私たちは電力会社を自由に選べるようになりました。市場には数多くの「新電力」が参入し、価格やサービスで熾烈な競争を繰り広げています。今回はその中でも、再生可能エネルギーのパイオニアイーレックス」と、電力最大手「東京電力エナジーパートナー」がタッグを組んで設立した、ユニークな新電力、エバーグリーン・マーケティング株式会社の決算を読み解きます。CO₂排出量実質ゼロのクリーンな電気を武器に、急成長を遂げる同社のビジネスモデルと、その驚異的な収益力に迫ります。

エバーグリーンマーケティング決算

【決算ハイライト(10期)】
資産合計: 16,402百万円 (約164.0億円)
負債合計: 9,981百万円 (約99.8億円)
純資産合計: 6,421百万円 (約64.2億円)

売上高: 52,737百万円 (約527.4億円)
営業利益: 1,668百万円 (約16.7億円)
当期純利益: 3,935百万円 (約39.4億円)

自己資本比率: 約39.2%
利益剰余金: 4,061百万円 (約40.6億円)

【ひとこと】
売上高500億円超、当期純利益約39億円という、極めて高い収益性を誇ります。自己資本比率も約39.2%と健全な水準を維持しており、設立からわずか数年で、新電力市場のトッププレイヤーの一角へと駆け上がったことがうかがえる、傑出した決算内容です。

【企業概要】
社名: エバーグリーン・マーケティング株式会社
設立: 2019年3月29日
株主: イーレックス株式会社 (66%)、東京電力エナジーパートナー株式会社 (34%)
事業内容: 法人(特別高圧・高圧)及び個人(低圧)を対象とした小売電気事業、省エネルギー関連事業など

www.egmkt.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、法人顧客と個人顧客、それぞれのニーズに応える電力小売サービスと、それを支える販売パートナー網で構成されています。

✔法人向け電力小売事業
決算公告の主体であるエバーグリーン・マーケティングが担う、工場や大規模商業施設、病院、大学といった、電力使用量の多い法人顧客向けのサービスです。電力コストの削減提案はもちろん、企業の環境経営に不可欠な再生可能エネルギーの導入をトータルでサポートします。市場価格に左右されない「完全固定料金プラン」などが、顧客から高い評価を得ています。

✔個人向け電力小売事業
100%子会社であるエバーグリーン・リテイリングが、一般家庭や小規模な店舗・事務所を対象に展開しています。同社の最大の特徴は、提供する全ての電気プランが、実質的にCO₂排出量ゼロである「CO₂フリープラン」であることです。環境に貢献しながら、電気料金も抑えられるという付加価値で、多くの顧客を獲得しています。

✔販売パートナーサポート
業界に先駆けて代理店制度を導入した親会社イーレックスのノウハウを活かし、全国の販売パートナーと協業しています。これにより、自社の営業リソースだけに頼らない、効率的で広範な顧客開拓を可能にしています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
電力小売市場は、燃料価格の変動や需給バランスによって、電力の卸売価格が大きく変動する、非常にボラティリティの高い市場です。一方で、企業のESG経営や、個人の環境意識の高まりを背景に、「再生可能エネルギー由来の電力を使いたい」というニーズは、今後も拡大が見込まれる強力なトレンドです。

✔内部環境
最大の強みは、株主であるイーレックス東京電力エナジーパートナーシナジーです。イーレックスは、バイオマス発電を中心とした再生可能エネルギーのリーディングカンパニーであり、クリーンな電力の安定的な調達を可能にしています。一方、東京電力エナジーパートナーは、日本最大の電力会社として培ってきた顧客基盤や小売ノウハウを持っています。この「再エネの雄」と「電力の巨人」の組み合わせが、他社にはない圧倒的な競争優位性を生み出しています。

✔安全性分析
自己資本比率が39.2%と、健全性の目安とされる水準を大きく上回っており、財務基盤は非常に安定的です。電力小売事業は、時に巨額の運転資金が必要となるビジネスですが、それを十分に支える体力を有しています。損益計算書で特筆すべきは、約17億円の営業利益に対し、経常利益が約44億円へと大幅に増加している点です。これは、電力の先物取引や燃料調達におけるヘッジ取引など、高度な金融的手法を駆使して、電力市場の価格変動リスクを巧みに利益へと転換している可能性を示唆しており、極めて高い事業運営能力がうかがえます。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
イーレックス東京電力EPという、強力かつシナジー効果の高い株主構成
・提供する全ての電力が「CO₂フリー」であるという、明確で強力なブランド価値
・約39億円の純利益が示す、極めて高い収益性と、電力市場でのリスク管理能力
・設立以来の利益蓄積による、40億円を超える潤沢な利益剰余金

弱み (Weaknesses)
・電力卸売市場の価格が、予測不能なレベルで高騰した場合の収益圧迫リスク
・事業が電力小売に集中している点

機会 (Opportunities)
・企業の脱炭素化ニーズのさらなる拡大
・EV(電気自動車)の普及に伴う、家庭や法人での充電サービスとの連携
・省エネコンサルティングや、自家発電設備の導入支援など、ソリューション事業への展開

脅威 (Threats)
・電力小売事業者間の、さらなる価格競争の激化
再生可能エネルギーに関する、国の政策変更のリスク
・大規模な災害による、電力供給網への影響


【今後の戦略として想像すること】
「クリーンな電力の小売」という現在のビジネスを深化させるとともに、総合的なグリーンエネルギー・ソリューション企業への進化を目指していくことが予想されます。

✔短期的戦略
引き続き、企業のESGニーズや、環境意識の高い個人顧客層をターゲットに、「CO₂フリー電力」の供給量を拡大していくことが基本戦略となります。また、電力市場の価格変動を予測し、リスクを管理しながら収益を最大化する、トレーディング機能のさらなる強化も進めていくでしょう。

✔中長期的戦略
単に電力を販売するだけでなく、顧客の脱炭素化をトータルで支援するパートナーへと進化していくことが期待されます。例えば、企業の工場や店舗に太陽光発電設備を設置するPPA(電力販売契約)モデルの提案や、EV充電インフラの整備、省エネ診断から設備更新までを請け負うESCO事業など、より付加価値の高いソリューション領域への展開が、持続的な成長の鍵となります。


【まとめ】
エバーグリーン・マーケティングは、電力自由化という大きな変革期に、「環境価値」という明確な旗印を掲げて市場に参入し、大成功を収めた新電力の優等生です。その背景には、イーレックスの再エネ調達力と、東京電力EPの販売力という、異色の組み合わせが生み出す強力なシナジーがありました。その結果として生み出された約39億円という巨額の利益は、同社の戦略の正しさを証明しています。これからも、日本のエネルギー転換を小売の最前線でリードする、重要なプレイヤーとして、その存在感を高めていくことでしょう。


【企業情報】
企業名: エバーグリーン・マーケティング株式会社
所在地: 東京都中央区京橋二丁目2番1号 京橋エドグラン14階
代表者: 田中 稔道
設立: 2019年3月29日
資本金: 5億円
事業内容: 法人(特別高圧・高圧)を対象とした小売電気事業、省エネルギー関連事業等
株主: イーレックス株式会社 (66%)、東京電力エナジーパートナー株式会社 (34%)

www.egmkt.co.jp

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