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#3970 決算分析 : 株式会社アイアンドエーエス 第25期決算 当期純利益 57百万円

スマートフォンアプリで瞬時に行われる外国為替(FX)取引。その快適な操作性と安定したシステムの裏側には、金融取引というミッションクリティカルな要求に応える、高度な技術力が結集されています。今回は、「外為オンライン」などを傘下に持つISホールディングスグループの中で、その心臓部であるITシステムの開発・運用を専門に担う、株式会社アイアンドエーエスの決算を読み解きます。グループのIT戦略を支える技術者集団のビジネスモデルと、その驚異的な財務健全性に迫ります。

アイアンドエーエス決算

【決算ハイライト(25期)】
資産合計: 3,068百万円 (約30.7億円)
負債合計: 220百万円 (約2.2億円)
純資産合計: 2,848百万円 (約28.5億円)

当期純利益: 57百万円 (約0.6億円)

自己資本比率: 約92.8%
利益剰余金: 2,788百万円 (約27.9億円)

【ひとこと】
自己資本比率が約92.8%という、驚異的な数値を誇ります。実質的に無借金であり、財務基盤は鉄壁です。約28億円という巨額の利益剰余金は、長年にわたる高い収益性の証左であり、IT業界の中でも傑出した優良企業であることがうかがえます。

【企業概要】
社名: 株式会社アイアンドエーエス
設立: 2000年5月26日
株主: ISホールディングスグループ
事業内容: FX・証券取引オンラインシステムのASP/SaaS事業を中核とした、アプリケーションサービスプロバイダー事業及びアウトソーシング事業

www.i-asp.ne.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社は、ISホールディングスグループの「ITサービス基幹企業」として、グループ全体のデジタル戦略を支える、専門性の高い事業を展開しています。

✔金融システムASP/SaaS事業
事業の中核をなすのが、自社で開発・運用する外国為替取引オンラインシステム「FX-ASP」の提供です。これは、ISホールディングスグループの中核企業である「外為オンライン」などのFX取引サービスを、アプリケーション・サービス・プロバイダーASP)として、システムの安定稼働から顧客管理、取引処理までを一貫して支えるものです。PCだけでなく、スマートフォンアプリ(Android/iPhone)も自社で開発しており、グループの競争力の源泉となっています。

✔データセンター・インフラ事業
金融取引に求められる最高の信頼性と安全性を確保するため、堅牢なデータセンターを利用したシステムの運用管理も行っています。24時間365日、止まることの許されない金融システムの安定稼働を支える、まさに縁の下の力持ちとしての役割を担っています。

✔新規ソリューション開発事業
グループの金融システムで培った高度な技術力を、異分野にも展開しています。スキー場での滑走を自動で録画・編集する「モーションレコーダー®」や、自治体のDXを推進する「電子クーポンクラウドサービス」など、ユニークで先進的なソリューションを自社開発・提供しており、高い技術開発力を示しています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
オンライン金融取引市場は、技術の進化が早く、顧客はより速く、より安定し、より使いやすい取引環境を常に求めています。そのため、システム開発会社には、継続的な技術革新と、サイバー攻撃などに対する高度なセキュリティ対策が不可欠です。

✔内部環境
最大の強みは、ISホールディングスグループという、安定した巨大な「社内市場」を持っていることです。グループの中核である金融事業のITシステムを一手に担うことで、外部の顧客を獲得するための営業コストをかけることなく、安定的かつ高収益な事業運営が可能となっています。グループの成長戦略と自社の技術開発が直結しており、非常に効率的な経営が実現できています。

✔安全性分析
自己資本比率が92.8%というのは、企業の財務安全性を測る上で、これ以上ないほどに安全な水準です。総資産の9割以上が返済不要な自己資本で構成されており、実質的な無借金経営です。資本金6,000万円に対し、利益剰余金が約28億円と、その46倍以上にも達している点は、同社が設立以来、極めて高い収益を上げ続け、それを着実に内部に蓄積してきたことを示しています。財務的には全く懸念がなく、盤石な経営基盤を誇ります。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
ISホールディングスグループの中核IT企業という、極めて安定した事業基盤
・FXオンライン取引システムに関する、高度な専門技術と長年の運用実績
自己資本比率92.8%を誇る、鉄壁の財務基盤と潤沢な内部留保
・金融以外の分野にも展開する、高い技術開発力とイノベーション能力

弱み (Weaknesses)
・事業の大部分が、親会社グループの業績や戦略に大きく依存する構造
・事業の成長が、高度なスキルを持つITエンジニアの採用・育成に左右される点

機会 (Opportunities)
・FX以外の金融商品(CFD、暗号資産など)への取引システム展開
・「モーションレコーダー®」や「電子クーポン」など、外部向けソリューション事業の本格的な拡大
・親会社グループが手掛ける、地方創生事業などへのDX支援

脅威 (Threats)
・金融システムを標的とした、サイバー攻撃の高度化・巧妙化
・金融業界における、システム障害に対する社会的な要求水準の高まり
・IT業界全体における、優秀なエンジニアの獲得競争の激化


【今後の戦略として想像すること】
盤石な経営基盤を活かし、グループの成長を支える「守りのIT」と、新たな価値を創造する「攻めのIT」の両輪で事業を展開していくことが予想されます。

✔短期的戦略
まずは、中核であるFX取引システムの安定稼働と機能強化を継続していくことが最優先です。スマートフォンの進化に合わせたアプリのアップデートや、AIを活用した新たな取引サポート機能の開発など、グループの金融事業の競争力を維持・向上させるための技術投資を続けていくでしょう。

✔中長期的戦略
グループの「技術開発エンジン」としての役割をさらに強化していくことが期待されます。金融事業で得た莫大な利益と潤沢な自己資金を元手に、スキー場の自動録画システムのような、全く新しい分野のソリューションを次々と生み出していく可能性があります。ISホールディングスが近年力を入れている福島の地方創生事業などに対し、同社が持つ技術力でDXを推進していくなど、グループ内でのシナジーをさらに高めていくでしょう。


【まとめ】
株式会社アイアンドエーエスは、ISホールディングスグループの技術的な心臓部として、その成長を力強く牽引する、まさに「隠れた優良企業」です。グループ内の金融システム開発・運用という安定した収益基盤の上で、自己資本比C率92.8%という鉄壁の財務を築き上げ、その力を源泉に、新たな分野への技術開発にも挑戦しています。その姿は、安定と革新を両立させた、理想的な事業会社の形と言えるかもしれません。これからも、グループの、そして社会のデジタル化を支える重要な存在として、その価値を高め続けていくことでしょう。


【企業情報】
企業名: 株式会社アイアンドエーエス
所在地: 東京都千代田区丸の内1-11-1 パシフィックセンチュリープレイス丸の内24F
代表者: 遠藤 昭二
設立: 2000年5月26日
資本金: 6,000万円
事業内容: アプリケーションサービスプロバイダー事業(SaaS事業)
株主: ISホールディングスグループ

www.i-asp.ne.jp

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