建設現場で働く人の足元を守る「安全靴」や、機能的な「ワーキングウェア」。これらの製品で国内トップクラスのシェアを誇るミドリ安全グループ。その製品が私たちの手元に届くまでには、世界中に張り巡らされた複雑なサプライチェーンが存在します。原材料はどこから調達し、どこで製品となり、どのようにして日本へ運ばれてくるのでしょうか。今回は、その巨大なグローバル・サプライチェーンの心臓部として、貿易と調達を一手に担う専門家集団、ヴェルデトレイディング株式会社の決算を読み解き、大手メーカーを影で支える企業の強さと、その役割に迫ります。

【決算ハイライト(40期)】
資産合計: 22,546百万円 (約225億円)
負債合計: 12,526百万円 (約125億円)
純資産合計: 10,020百万円 (約100億円)
当期純利益: 729百万円 (約7.3億円)
自己資本比率: 約44.4%
利益剰余金: 9,980百万円 (約99.8億円)
【ひとこと】
総資産200億円を超える規模を誇り、7億円以上の純利益を上げる高い収益性が目を引きます。自己資本比率も約44.4%と極めて健全な水準であり、ミドリ安全グループのグローバル戦略を支える中核企業として、盤石な経営基盤を築いていることがうかがえます。
【企業概要】
社名: ヴェルデトレイディング株式会社
設立: 1986年3月3日
株主: ミドリ安全株式会社 (100%)
事業内容: ミドリ安全グループ取扱商品の調達代行及び輸出入業務を行う専門商社
【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、親会社であるミドリ安全グループ全体のグローバルな生産・販売活動を、貿易のプロフェッショナルとして支えることに特化しています。いわば、グループの国際的な動脈・静脈の役割を担う専門商社です。
✔自動車部品の調達
グループ会社である日本トップクラスのカーシート用革メーカー「ミドリオートレザー」の生産活動を支えています。北米、南米、欧州、アジアなど、世界各地から原皮や製革用薬品、関連資材を調達し、グローバルに展開する生産拠点へ供給する重要な役割を担っています。
✔安全衛生保護具の調達
ミドリ安全の代名詞である安全靴やユニフォーム、保護具などのサプライチェーンを管理しています。ベトナムやラオスの自社工場、中国やASEAN各国の協力工場での生産活動を円滑に進めるため、原材料の供給から完成品の輸入まで、複雑な貿易形態を駆使してサポートします。特にユニフォーム事業では、日本から生地を送り、海外で縫製して輸入するといった「委託加工貿易」も手掛けています。
✔グループのサプライチェーン中核機能
同社の本質は、単なる輸出入業務に留まりません。貿易書類の作成、輸送スケジュールの調整、各国の法令や経済協定のチェックといった専門業務を一手に引き受けることで、グループ内の各事業会社が本業である「ものづくり」や「販売」に専念できる環境を創出しています。
【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
グローバルサプライチェーンは、常に地政学リスク、為替レートの変動、輸送コストの高騰、そして新たな貿易協定の発効といった、複雑で予測困難な外部環境の変化に晒されています。同社のような貿易専門会社には、これらの変化に迅速かつ的確に対応し、グループ全体のリスクを最小化し、コストを最適化する高度な専門知識と実行力が求められます。
✔内部環境
ミドリ安全株式会社の100%子会社であることが、最大の強みであり事業の根幹です。これにより、グループ全体から安定的かつ大規模な業務を受託できる、極めて強固な事業基盤が構築されています。同社の業績は、ミドリ安全グループ全体の成長と直結しており、グループのグローバル化が進めば進むほど、その役割と重要性は増していきます。
✔安全性分析
自己資本比率が約44.4%と、非常に高い水準にあることから、財務基盤は極めて安定的であると評価できます。純資産は100億円を超え、その大半が利益剰余金(約99.8億円)で構成されています。これは、長年にわたり着実に利益を蓄積してきた証であり、不測の事態に対する高い抵抗力を有していることを示します。商社ビジネス特有の大きな運転資金(売掛金や在庫)を、安定した財務基盤でしっかりと支えている優良なバランスシートです。
【SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・ミドリ安全グループという巨大で安定した事業基盤
・長年の実績で培った国際貿易・物流に関する高度な専門知識
・自己資本比率44.4%を誇る、盤石な財務基盤と高い収益力
・世界中に広がるサプライヤーとのネットワーク
弱み (Weaknesses)
・ミドリ安全グループの業績に自社の業績が大きく依存する事業構造
・グループ外への事業展開が限定的である可能性
機会 (Opportunities)
・ミドリ安全グループのさらなる海外展開(新工場の設立、新市場への進出)
・TPPやRCEPといった新たな経済連携協定の活用による、調達コストの最適化
・グループ全体のサステナビリティ調達を主導することによる、企業価値向上への貢献
脅威 (Threats)
・世界的なパンデミックや地域紛争による、グローバルサプライチェーンの寸断リスク
・急激な為替レートの変動による、調達コストや採算の悪化
・世界的なインフレに伴う、原材料費や海上・航空輸送費の高騰
・各国における保護主義的な貿易政策の台頭
【今後の戦略として想像すること】
グループ内における「縁の下の力持ち」から、グループの成長を能動的に牽引する「戦略的パートナー」へと、その役割をさらに進化させていくことが期待されます。
✔短期的戦略
まずは、昨今の不安定な国際情勢を踏まえたサプライチェーンの強靭化(レジリエンス向上)が最優先課題となるでしょう。特定の国や地域に依存しない、調達先の多角化や、在庫管理の最適化、最新のデジタル貿易プラットフォームの導入による業務効率化などを推進していくと考えられます。
✔中長期的戦略
グループ全体のESG経営をサプライチェーンの観点から主導する役割を担っていくことが期待されます。環境負荷の少ない原材料の探索や、人権に配慮したサプライヤーの選定などを積極的に行うことで、ミドリ安全グループの企業価値そのものを高めることに貢献します。また、蓄積した貿易ノウハウを活かし、グループ外の企業に対してサプライチェーン・コンサルティングのような新たなサービスを展開する可能性も秘めています。
【まとめ】
ヴェルデトレイディング株式会社は、私たちが普段目にすることの多い「ミドリ安全」ブランドの製品を、その源流から支える極めて重要な企業です。世界中から最適な材料を調達し、最適な場所で生産し、日本そして世界の顧客へ届ける。このグローバルなモノの流れを司ることで、ミドリ安全グループ全体の競争力を生み出しています。7億円を超える純利益と、44.4%という高い自己資本比率に裏付けられたその実力は、まさに「縁の下の力持ち」と呼ぶにふさわしいものです。これからも、世界の動きを読み解き、ミドリ安全グループの成長を牽引し続けることでしょう。
【企業情報】
企業名: ヴェルデトレイディング株式会社
所在地: 東京都渋谷区広尾5-4-3 ミドリ安全本社ビル 2階
代表者: 松村 不二夫
設立: 1986年3月3日
資本金: 4,000万円
事業内容: ミドリ安全グループ取扱商品(産業用安全衛生保護具、産業用特殊服、健康医療機器、環境改善機器、電気計測機器、皮革材料、製革用薬品、工場設備機器等)の調達代行輸出入
株主: ミドリ安全株式会社 (100%)