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#3939 決算分析 : 株式会社ウェイストボックス 第20期決算 当期純利益 174百万円

カーボンニュートラル、SBT、Scope3、CDP回答支援。数年前までは一部の専門家の間でしか聞かれなかったこれらの言葉が、今や企業の存続を左右する重要な経営課題となっています。脱炭素化という世界的な大きな潮流の中、多くの企業が自社のCO₂排出量をいかに算定し、削減し、そして社会に開示していくかという、未知の領域の課題に直面しています。今回は、そうした企業の「脱炭素経営」を専門的な知見でナビゲートするプロフェッショナル集団、株式会社ウェイストボックスの決算を読み解き、日本のサステナビリティを支えるビジネスの最前線と、その驚異的な財務健全性に迫ります。

ウェイストボックス決算

【決算ハイライト(20期)】
資産合計: 1,309百万円 (約13.1億円)
負債合計: 292百万円 (約2.9億円)
純資産合計: 1,017百万円 (約10.2億円)

当期純利益: 174百万円 (約1.7億円)

自己資本比率: 約77.7%
利益剰余金: 736百万円 (約7.4億円)

【ひとこと】
特筆すべきは、自己資本比率が約77.7%という極めて高い水準であることです。盤石な財務基盤のもと、総資産13.1億円に対して1.7億円もの純利益を計上しており、収益性も非常に高いです。脱炭素という成長市場で、圧倒的な専門性を武器に高収益を実現している姿がうかがえます。

【企業概要】
社名: 株式会社ウェイストボックス
設立: 2006年2月2日
株主: ENEOSイノベーションパートナーズ、三井住友信託銀行みずほキャピタルりそなホールディングスなど
事業内容: 気候変動を中心とした環境コンサルティングサービス。企業のCO₂排出量算定、SBT目標設定、CDP回答支援、カーボンクレジット創出支援など。

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【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、企業が脱炭素経営を推進するための一連のプロセス、「カーボンマネジメントサイクル」をトータルで支援する、高度な専門コンサルティングサービスで構成されています。

✔組織の排出量把握・情報開示支援事業
ビジネスの中核をなすサービスです。企業の事業活動に伴うCO₂排出量を、国際的な基準であるGHGプロトコルに沿って算定します。自社の排出(Scope1,2)だけでなく、サプライチェーン全体の排出(Scope3)までを「見える化」することが、全ての取り組みの第一歩となります。さらに、算定した情報をTCFD提言などに沿って開示するための支援や、国際的な環境情報開示プラットフォームである「CDP」への回答支援も行います。

✔SBT目標設定・気候移行計画策定支援
算定した排出量をもとに、科学的根拠に基づく削減目標(SBT)の認定取得を支援します。これは、企業の脱炭素への本気度を示す世界的な指標となっており、ウェイストボックスは日本で唯一の「CDP気候変動コンサルティング&SBT支援パートナー」として、他社にはない公式な知見を提供しています。

✔カーボンクレジット創出・活用支援
省エネ活動などによって生まれたCO₂削減量を「J-クレジット」として国に認証してもらい、クレジットとして売買可能にするための支援を行います。これにより、企業の環境活動を資産価値に変えることができます。また、削減努力をしても残ってしまう排出量をクレジット購入によって相殺(カーボン・オフセット)する支援も手掛けています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
「2050年カーボンニュートラル」という国の目標設定や、東京証券取引所の市場再編に伴うプライム市場上場企業へのTCFD提言に基づく開示義務化など、企業の脱炭素化を後押しする政策が強力な追い風となっています。投資家や金融機関も、企業の気候変動への取り組みを厳しく評価するようになっており、専門的なコンサルティングへの需要は爆発的に増加しています。

✔内部環境
最大の強みは、日本で唯一の「CDP気候変動コンサルティング&SBT支援パートナー」であるという公式な認定です。これは、同社の技術力と実績が国際的な機関から認められている証であり、他社に対する圧倒的な競争優位性の源泉となっています。また、ENEOSや大手金融機関が株主として名を連ねていることも、同社の信用力と事業展開における強力なバックアップとなっています。コンサルティングという知的労働集約型のビジネスであるため、大きな設備投資が不要で、高い利益率を実現できる事業構造です。

✔安全性分析
自己資本比率77.7%という数値は、企業の財務安全性を測る上で「鉄壁」とも言える水準です。総資産の8割近くが返済不要な自己資本で賄われており、実質的な無借金経営です。利益剰余金も7億円以上積み上がっており、長年にわたり安定して高収益を上げてきたことがわかります。財務的には全く懸念点がなく、将来の成長に向けた人材投資や事業投資を積極的に行える、極めて優良な財務体質です。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・CDPやSBTにおける国内唯一の公式認定パートナーという圧倒的な権威性と信頼性
自己資本比率77.7%を誇る、盤石で安定した財務基盤
・脱炭素分野における長年の実績と高度な専門知識を持つ人材
・大手金融・事業会社からなる強力な株主構成

弱み (Weaknesses)
・事業の成長が、高度な専門知識を持つコンサルタントの採用・育成ペースに依存する点
コンサルティングという労働集約的なビジネスモデル

機会 (Opportunities)
・TCFDやISSBなど、サステナビリティ情報開示の義務化・基準化の流れ
・大企業からそのサプライヤーへと、脱炭素の取り組み要求が広がっている(サプライヤーエンゲージメント)
・TNFD(自然関連財務情報開示)など、気候変動以外の環境分野へのコンサルティング領域の拡大

脅威 (Threats)
・大手総合コンサルティングファーム監査法人との競合激化
・専門人材の獲得競争の激化と人件費の高騰
・AIなどを活用した排出量算定ツールの進化による、コンサルティング単価の下落圧力


【今後の戦略として想像すること】
圧倒的な優位性と強固な財務基盤を活かし、さらなる事業拡大とサービスの進化を目指していくと考えられます。

✔短期的戦略
国内唯一の公式パートナーという強力なブランドを最大限に活用し、プライム市場の上場企業を中心にトップ層の顧客基盤をさらに固めていくでしょう。旺盛な需要に応えるため、専門コンサルタントの採用と育成に積極的に投資し、サービス提供体制を拡充することが最優先課題となります。

✔中長期的戦略
現在のコンサルティングという労働集約的なモデルに加え、より拡張性の高いビジネスモデルの構築を進めていくことが予想されます。NTTデータなどと共同で提供するクラウドサービス「MIeCO2」の展開はその一例であり、専門知識をテクノロジーと組み合わせることで、より多くの企業にサービスを届ける「スケール化」を目指すでしょう。将来的には、気候変動分野で培ったノウハウを、生物多様性(TNFD)や人権といった、より広いサステナビリティ領域へと展開していくことが期待されます。


【まとめ】
株式会社ウェイストボックスは、単なる環境コンサルティング会社ではありません。それは、企業の脱炭素化という複雑な航海の羅針盤となる、現代の日本経済に不可欠なインフラ企業です。国際機関からのお墨付きという絶対的な信頼性を武器に、急成長する市場で圧倒的な存在感を発揮し、自己資本比率77.7%という鉄壁の財務を築き上げています。企業の環境に対する責任がますます問われる未来において、同社が社会で果たす役割は、今後さらに重要になっていくことは間違いないでしょう。


【企業情報】
企業名: 株式会社ウェイストボックス
所在地: 愛知県名古屋市東区東桜1-13-3 NHK名古屋放送センタービル16階
代表者: 鈴木 修一郎
設立: 2006年2月2日
資本金: 1億円
事業内容: 気候変動を中心とした環境コンサルティングサービス(組織の排出量把握・情報開示支援事業、製品カーボンフットプリント算定事業、環境価値創出事業、アドバイザリーサービス等)
株主: 鈴木 修一郎(創業者)、ENEOSイノベーションパートナーズ合同会社三井住友信託銀行株式会社、株式会社りそなホールディングスなど

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