後継者不足に悩む経営者の「事業承継」は、日本経済が抱える喫緊の課題です。親族に継がせるのか、従業員に託すのか、あるいは第三者へのM&Aを選ぶのか。経営者にとって人生最大の決断であるにもかかわらず、それぞれの選択肢を中立的な立場で比較し、最適な道筋を示してくれる専門家は決して多くありません。
今回は、この難題に挑むべく、M&A仲介の最大手「日本M&Aセンター」と、財産コンサルティングの雄「青山財産ネットワークス」がタッグを組んで設立した、株式会社ネクストナビの決算を読み解きます。業界のトップ企業2社のDNAを受け継ぐ、事業承継の「羅針盤」とも言うべき同社の経営実態と、そのユニークな戦略に迫ります。

【決算ハイライト(9期)】
資産合計: 78百万円 (約0.8億円)
負債合計: 4百万円 (約0.0億円)
純資産合計: 74百万円 (約0.7億円)
当期純利益: 3百万円 (約0.0億円)
自己資本比率: 約95.3%
利益剰余金: 34百万円 (約0.3億円)
【ひとこと】
まず驚くべきは、自己資本比率が95.3%という鉄壁の財務基盤です。実質的に無借金経営であり、極めて高い安全性を誇ります。当期純利益は3百万円と控えめですが、これは親会社の顧客への付加価値提供を主眼としたビジネスモデルの現れとも考えられ、利益剰余金も着実に積み上がっており、堅実な経営がうかがえます。
【企業概要】
社名: 株式会社ネクストナビ
設立: 2016年
株主: 株式会社日本М&Aセンターホールディングス、株式会社青山財産ネットワークス(50%ずつ出資)
事業内容: M&Aや親族承継など、あらゆる選択肢を中立的に検討する事業承継コンサルティングと、事業譲渡後の経営者の資産を守り育てる財産承継コンサルティング。
【事業構造の徹底解剖】
株式会社ネクストナビの強みは、M&Aと財産コンサルという、事業承継の前後に不可欠な2つの専門領域を、一つの会社で、しかも中立的に提供できる点にあります。
✔中立的立場での事業承継コンサルティング
同社は、親族承継、従業員承継、第三者承継(M&A)といったあらゆる選択肢をフラットに比較検討し、経営者とその家族、そして会社の未来にとって「全体最適」となるプランを策定・実行します。M&A仲介会社はM&Aを、税理士は親族承継を勧めがちですが、同社は両親会社のノウハウを背景に、特定の出口に偏らないアドバイスを提供できる、稀有な存在です。
✔M&A後の人生に寄り添う財産承継コンサルティング
特にM&Aで会社を譲渡したオーナー経営者にとって、手にした創業者利潤(譲渡対価)をいかに守り、次の世代へ承継していくかは大きな課題です。同社は、青山財産ネットワークスの知見を活かし、不動産や資産管理会社の設立・運営支援など、個別の金融商品を売るのではなく、一族全体の資産を最適化するためのオーダーメイドのコンサルティングを提供します。
✔会員組織「ネクストクラブ」の運営
日本M&Aセンターで会社を譲渡したオーナー経営者で組織する、会員数2,000名を超えるクラブを運営しています。会報誌の発行やセミナー、交流イベントを通じて、M&A後の経営者たちの人生をより豊かにするためのサポートを行っており、強力なコミュニティを形成しています。
【財務状況等から見る経営戦略】
自己資本比率95.3%という驚異的な財務基盤は、どのような経営戦略の賜物なのでしょうか。
✔外部環境
中小企業経営者の高齢化が進み、「大事業承継時代」が到来する中、専門的かつ信頼できるアドバイザーへの需要はますます高まっています。一方で、M&A仲介業者の急増に伴うトラブルも問題視されており、信頼できるブランドを持つ企業へのニーズはより強固になっています。
✔内部環境
同社のビジネスモデルは、日本M&Aセンターと青山財産ネットワークスという、両親会社の圧倒的なブランド力と顧客基盤の上に成り立っています。これにより、広告宣伝費をかけずとも、質の高い相談案件が安定的に供給されるという、極めて有利なポジションを築いています。また、コンサルティングという知的労働が中心のため、多額の設備投資を必要としない、高収益・高効率な経営が可能です。
✔安全性分析
貸借対照表は、同社の安定性を完璧に示しています。総資産約0.8億円に対し、負債はわずか4百万円。残りの約0.7億円はすべて純資産です。自己資本比率95.3%という数字は、財務リスクが皆無に近いことを意味します。設立から9期で、資本金4,000万円に対し、利益剰余金が3,400万円積み上がっていることからも、継続して黒字経営を続けてきたことがわかります。
【SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・M&Aと財産コンサルのトップ企業2社による、比類なきブランド力と顧客紹介チャネル
・あらゆる承継方法を比較検討できる「中立性」と「全体最適」という独自の提供価値
・自己資本比率95%を超える、盤石な財務基盤
・M&A後の経営者コミュニティ「ネクストクラブ」という強力なエコシステム
弱み (Weaknesses)
・事業の成長が、親会社の案件創出力に大きく依存する
・少数精鋭のコンサルティングモデルであり、急激なスケールが難しい
機会 (Opportunities)
・事業承継ニーズの爆発的な増加
・M&A後の富裕層向けウェルスマネジメント市場の拡大
・「ネクストクラブ」をプラットフォームとした、新たな会員向けサービスの開発
脅威 (Threats)
・金融機関や他のコンサルティングファームとの競争激化
・景気後退によるM&A市場の冷え込み
・事業承継に関する法制度や税制の変更
【今後の戦略として想像すること】
両親会社の強みを最大限に活かし、事業承継コンサルティングの新たなスタンダードを築いていくでしょう。
✔短期的戦略
引き続き、日本M&Aセンターが手掛けるM&A案件のオーナーに対し、譲渡対価の最適な活用法を提案する財産コンサルティングを強化し、親会社のサービス価値向上に貢献します。「ネクストクラブ」の活動をさらに活発化させ、会員満足度を高めることで、グループ全体の顧客基盤を強固なものにしていくと考えられます。
✔中長期的戦略
「事業承継といえばネクストナビ」というブランドを確立し、M&Aだけでなく、親族・従業員承継を考える経営者へのアプローチを強化していく可能性があります。セミナーやオンラインコンテンツを通じて、事業承継の初期段階から経営者に寄り添い、両親会社へと繋ぐ重要な入り口としての役割を担っていくことが期待されます。
【まとめ】
株式会社ネクストナビは、M&Aの「入口」から、その後の資産承継という「出口」まで、経営者の人生に一気通貫で寄り添う、まさに事業承継の「総合案内人」です。業界を代表する2社がそれぞれの得意分野を持ち寄って設立したこのユニークな企業は、その成り立ちからして成功が約束されていたと言えるかもしれません。
自己資本比率95.3%という決算数値は、そのビジネスモデルの正しさと、経営の健全性を明確に示しています。後継者問題に悩むすべての経営者にとって、同社のような中立的で信頼できるナビゲーターの存在は、ますます大きな意味を持つことになるでしょう。
【企業情報】
企業名: 株式会社ネクストナビ
所在地: 東京都千代田区丸の内一丁目8番2号 鉃鋼ビルディング24階
代表者: 雨森 良治
設立: 2016年8月4日
資本金: 4,000万円
事業内容: 事業承継、財産活用に関する総合コンサルティング
株主: 株式会社日本М&Aセンターホールディングス, 株式会社青山財産ネットワークス